地方女性サウナ室あれこれ
サウナイキタイ アドベントカレンダー 16日目の記事です。
はじめまして！サウナにハマって約１年、まだまだ初心者マークの私ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
しかし毎日寒い！私の暮らす新潟県でも、昼夜問わず冷え込みが厳しくなり、朝なんかベッドから必死こいて起き上がる毎日を送っています。そんな寒冷地域で暮らす私たちの心身をじっとり温めてくれるのが、やはりサウナ。
というわけで、今までのサ活で体験した「地方女性サウナ室あれこれ」をご紹介したいと思います。なお、今回は生活密着型サウナ（インドア、比較的安価で、客層さまざま）に限定してお送りいたします。
アドベントカレンダーの他の素敵な記事に比べると、なんだか香ばしい内容かもしれませんが、地方で暮らす女性達の生きざまが垣間見える（大袈裟）、サウナ施設での空気感を、感じ取っていただければ幸いです。
※ご迷惑になるといけないので、個人が特定されないように、うすらぼんやりと描写した(つもり)です。サ室で出会うすべての地元レディー達に心からのリスペクトを。
暗闇に消えゆく
先日、いつも通りサ室で過ごしていたところ、とあるマダムと出会った。マダムというか、その方は…「大マダム」と表現したほうが良いかもしれない。なぜならば、真っ白な髪の毛を一つに束ね、膝に手をつきながら歩いていたからだ。そんな歩行状態にも関わらず、２～３分単位という凄まじいスピード感で、サウナと水風呂を行き来していた。
また、その短いサウナの間におもむろに私の横にやって来て、「一人暮らしなら、今の時期に最寄りのホームセンターで一人用のホットカーペットを買うべきだ、それを夏の間も敷いたままにして、１年単位で買い替えるのが最もコスパが良い」という、なんともニッチな生活の知恵を私に伝授してくれた。
そのムーブは留まるところを知らず、サ室にいる他の女性たちにも、それを伝授して周っていた。
さて暗くなってきたし、そろそろ帰ろうかと、私はサウナを後にした。車に乗り込もうと駐車場に出たところで、あるものを目撃。遠ーーくに、先ほどの大マダムが押し車を押して歩いている姿が見えるのだが、見渡したところ、周囲に民家などなさそうなのだ。
そのサウナは海にほど近いところにあり、車がなければ、こんなところまでとても来れないはず。しかしどこからどう見ても暗闇に向かってまっしぐら、といった様子だ。「まさか…⁉」と思い車に乗り込み、大マダムがいた方向に行ってみたが、もうすでに姿はなかった。
それから数日、私は大マダムが無事に帰宅できたのか、少し気がかりだった。彼女の姿を最後に見たのが、私だったらどうしよう。胸に引っかかるものを感じながら、先日大マダムと出会ったサウナ施設に向かった。
体を洗い、湯通しし、サ室に…行こうとしたところで、
水風呂から得も言われぬ速さでサ室に移動しようとしている大マダムを見つけた。
「あきゃ、またおめさんらかね（あら、またあなたに会ったわね）」
この時のぬるっとした安堵感を、私は忘れていない。
ちいさき人とそうじゃない人々
長らく少子化が叫ばれている日本、特に地方はえげつないくらい少子高齢化が進行している。こんな昨今、サ活中に子どもの姿が視界に入ってくるなんていうのは、はっきり言ってご褒美イベントだ。
水風呂や外気浴中、保護者に手を引かれ、おしりぷりぷりしながらやっとこさ歩行が成立しているちいさき人々を見ると、ささくれた心が少しずつ柔らかくなっていく。（大マダムもなんとか歩行が成立しているという点では一緒なのだが、まあそれは、ほら）
サウナ前、湯通ししようと風呂に浸かっていたところ、１歳前後くらいのちいさき人を抱っこして、若いお母さんが入ってきた。むちむちおててに、むちむちあんよ、一生懸命お母さんにしがみついて、ああなんて可愛いの…と、思わず横目でチラチラ見てしまう。
そんなハッピーボーナスタイム中の私の視界に、おもむろにカットインしてくる人々。そう、「少子高齢化」の、どちらかというと、「高齢」に該当するレディー達。赤子とその母に話しかけたいがため、わらわらと集まりだし、キャッキャウフフと言っている。
最終的にはベビー１に対し、高齢レディー４が集結する事態となっていた。地方の人口分布の縮図に限りなく等しい状況が、今私の目の前で起こっている。さらに言えば私もまた、どちらかといえば「少子」の方ではないということを、じんわりと感じてやるせない気持ちにもなった。
ちなみにベビーは、４人のレディー達と遠くから視線を送る不審者モードの私に包囲され、笑うでも、泣くでもなく、スン…とした表情で、我々の方など見向きもせず、抱かれている母の肩の向こうを見つめていた。
周囲からやたら関心をむけられる割に、ノーリアクションのベビーを抱え、あの時最も困ったのは間違いなくベビーの母であろう。ゆっくりしたくて来たんだろうに…。少子「じゃない方」を代表し、この場を借りて何となく謝罪させていただく。
エンドレストレード
サ室で周囲の会話に耳を傾けていると、やはり地方と言うべきか、農作物を育てている家庭が多いようだ。
この間、サ室内で「んまさっきもいできたやつ持ってきたすけ、あんたにくれるてー（つい先程取ってきたものを持参したので、あなたに差し上げます）」とか言うやり取りをしていた２人のマダム達が、その後脱衣所で、ポリ袋にパンッパンに詰められた食用菊「かきのもと」と、これまたポリ袋に無造作に入れられた「ぶどう・梨・桃の３点セット」を交換しているところを見かけた。
※調べたところ、「かきのもと」は新潟名産品のようですね。我が家では普通に食卓に出てきてました。花びらの部分を茹でてポン酢等でいただくことが多いです。
私にはよくわからないが、この交換されたものたちは、マダム達の間では同等の価値があるものなのだろう。令和のこの世で、農作物による物々交換の場面をまざまざと見せつけられることになるとは。
ちなみに後日、休憩室にて、「もらってくんねかねー（もらってくださらない）？」と、片方のマダムがそれはそれはばかでかいかぼちゃを手に、もう片方のマダムに話しかけているのを見た。
「今日なんも持ってこねかったてー（今日何も持参しませんでしたよ）」「いいてー、いらねえてー（いいえ、結構よ）」「返さんきゃねえこってねー、次持ってくるこってー（お返ししないわけにはいきません、次お会いする時には持参します）」というラリーを背中で受けつつ、私は心の中でつぶやく。
―――これ、終わらないやつだな。
この２人のマダムは、サウナや風呂に入るというより、何かしらの物々交換をしにきているのかもしれない。サウナ施設におけるマダムたちの「交換の儀」が、出来るだけ長く存続するのを、ひいては彼女たちの末長い健康を、祈るばかりである。
見渡す限りの木！森！山！
まあ本当に田舎なので、外気浴スペースから見える景色がこれらで構成されている率の高いこと。
都会から新潟のサウナに来られた方々はこの景色にいたく感動されるけれど、まずもってわれわれ地元民はサウナどころか普段の生活から全方位緑色で攻め入れられているわけで…。そのため私は、シティーサウナー達の感動のお声を耳にした際、ニヘラァと笑って誤魔化してしまいがちだ。
その日も私は山すぎるぐらいの山を見つめて、外気浴に興じていた。隣から「あれが〇〇山、隣が△△山」と、知らないマダムが独り言のように、でも限りなくはっきりと、私に語り掛けてきた。
私は１つの山を見ているとばかり思っていたが、マダム曰く、複数の山が連なっているとのこと。しかし私には到底１つ１つの山の見分けがつかず、「この人よくわかるなあ、地方で育まれた熟練の技とでも言うべきか」と、感心しきっていた。感心ついでに、「どうやって山の違いを見分けているんですか？」と尋ねたところ、急にキリっとした目つきになり、
「形と…角度…」
と口にした。
マダムの横顔と、背景を彩る緑のコントラストが、よくわからないがかっこよく見え、謎の説得力を感じさせた。ただ、教えてもらったところで、あの日以降、私が山を見分けられたことは、ただの一度もない。
おわりに
夏は暑すぎるくらい暑いし、冬は雪がひどくて通勤に２時間かかるなんてのもザラ。「もうっ、都会に引っ越したい！」とか言いつつ、結局何だかんだ新潟にしがみついて暮らしている私。
日々のサ活においても、その日偶然ご一緒した女性達との付かず離れずな関係の中で、ひそかに楽しませていただいています。皆様もお時間がある際、ぜひ地方のサウナに足を運んでみては？個性豊かな地元民との出会いが、あなたを待っているかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました！
今日、風強いし雨降りそうだし🚲で40分掛かるから、サウナ行くのやめようかなー と思ってました。 しかし、みじかわさんの記事見て気が変わった。 サウナに行こう！
共感多々あり（どちら側？w） オモロかったです❣ありがと～💞
中々のクセつよエピソードですね🤣男性側は挨拶程度しか会話が無いのですが、黙々と筋トレ・ストレッチしてる爺ちゃんがいたりしますよ。今後ともサウナと共に常連さん達を愛でていきましょう👍
✨👏✨👏✨👏✨👏✨👏✨
新書でも読んでるかのような錯覚に陥りました。面白かったです✨有難うございました👏
地方の風とほのぼのとした物々交換の儀等、サウナ以外にもその周辺で執り行われるホッコリした空気が存分に伝わり、心があったまりました。ありがとうございます😊
書籍化希望✨ もちろんうちで売ります👍
記事作成お疲れ様でした。 私も新潟なので、同郷ならではのあるあるを楽しませてもらいました。 面白いテーマですね。続編を期待しています。
新潟はサいこうです🌿
地方女性サウナーに幸あれ。って事！？
同じ新潟民として新潟弁が心地いい〜
ステキな記事、ありがとうございました！ 新潟人なので方言も伝わり、楽しく読ませて頂きました！
女湯のじわじわくるあれやこれや、ニヤニヤして拝読しました😆わかりみが深い！女湯は特にクセツヨ系の方が多いと思うんですが、逆に男湯バージョンの色々も知りたいですよね🤣♨️
NHKのドキュメント番組を観たような衝撃を受けました❗️心がほっこり沁み渡り古き良き昭和を感じました。ありがとうございました😊
興味深かったです…
光る文才！楽しいうえに心地よいリズムです、ありがとうございました。
臨場感がありました🎉
新潟弁の翻訳ありがとうございます！
記事良かったです
おもしろかったー🥺続編も楽しみにしてます😍
長野県民ですが共感しかないです🤣
高速移動大マダム、物々交換マダムたちなど、お会いしたことのない方々の様子がまるで目に浮かぶようで本当に楽しく読ませていただきました。いつか私も緑に囲まれた外気浴を体験してみたいな。素敵な記事をありがとうございました。
こういった素敵なレディー達の仲間に加わる日が来ると思うと、年を重ねていくのも悪くないな、と思えました！素敵な文章、ありがとうございます！
面白かったです😁やはりサウナ(風呂)も地方性が出て面白いですね〜！
関西出身の私には、マダムの外国語が沁みました。女湯のヌルッとした感じ、すごく共感できました。
ヤマガタショウナイ他方サウナ―です。まさに田舎サウナ施設あるあるで楽しく読めました。新潟のサウナ施設にはたまにじょんのびまで足を延ばしてじょんのびします。これからもよきサウナライフを！