小劇場型アウフグースの楽しみ
サウナイキタイアドベントカレンダー 17日目の記事です。
私には、サ室が小劇場に見えてしまう。
「サウナ室でミュージカルでもするの?なんだよそれ」と思う人もいるかもしれない。だって、サウナは自分の内側全部との対話なのだから。
そもそも、小劇場とは何だろうか。それは、観客と俳優の距離が近い芝居小屋のこと。制作費が限定されるので、アイデア・工夫・表現する力が重きを占める。つまり予算がわずかだから、マンパワー全開でやっと成り立つ芝居なのだ。
私にとっては、スタジアムサウナの段が観客席で、一番下の通路が舞台だ。違いと言えば、舞台袖が無くて、観客も演者も同じ出入り口を使うことくらいかな。

まだまだサウナ2年生である私。いろんなアウフグースを受けたけれども、その中でもハマっているのが、小劇場型でアウフグースをするイベントだ。
有名なアウフグース大会の映像を観たことがあるが、なんと確かな技術!観客をひきつける表現力!飽きさせないストーリー運び!その場で観覧できたら、もうメロメロなんだろうな。
それに対し、私がハマっているサウナイベントは、サ室で繰り広げられる茶番劇だ。映画「翔んで埼玉」の茶番劇クオリティにまでは及ばないが、ひと言で言うと「大人の学芸会」だ。
「一体何を見せられているんだ?」
だが、それが楽しい。
熱くなり過ぎたら出ても良いはずなのに、まだ続きを見たくなる。スマホなしの時間。大のオトナ演者たちが、全力ではじける。観客席が笑いで揺れる。そんな大衆浴場が、福岡県久留米市にはある。県下屈指の熱波師たちを揃えて。
イベント当日、演者であるふつうの施設スタッフさんたちが、ウキウキしながら通常業務をやっている。出勤シフトのもっと早くから出勤して、衣装の準備をしたり、風船を膨らませて小道具を作ったりしてる人もいる。
支配人自ら「この熱波を私はやります(キリッ)」と宣言して、あまりにぶっ飛んだ「問題作」すぎて、多数の反対の声があがることもあるそうだ。
こんな施設、他に見たことがない。唯一無二。良くも悪くも、AIには生み出せない演目。「自己実現」なんて単語でくくりたくない。もっと生身の人間が演じる、活気の発生装置。
2025年11月頭には「劇団ゆうしん」の公演が開催された。これは、2〜3ヶ月に一度開かれる公演であり、今回のテーマは「西遊記」。こんなの、テーマを見ただけでニヤニヤしてしまうじゃないか。そうか、ご一行が天竺へ行くんだな。うひひひひ。

この施設のイベントは、予約できない。整理券がない。当日に、その始まる時間枠を目指すしかないのだ。
当然ながら、サ室の座面を確保する駆け引きが勃発する。これは、決して不親切なのではない。観客の見たいという情熱が、もっと燃え上がる仕掛けなのだ。立ち見は危ないので、場内整理が行われて、結構ギリギリまでお客さんに詰めてもらう。
男湯のほうでは、客席をみっちみちに詰めて、それでももう入れなくて、後からのお客さんにお断りをする状態のときもあるそうだ。
そういや昔、私が小劇場演劇を見に行ったとき、開始直前に狭い観客席にもうひとり座らせるため、スタッフさんが「愛の、愛の3センチをお願いしまーす。詰めてくださーい」なんてことがあったな、と思い出したよ。
さて、観客のワクワクが高まったところで、劇団ゆうしん女子部公演が始まった。
よし、全員が西遊記の仮装をしてきたぞ。ん?ひとり、オバケみたいな魔物も入ってきたな。なるほど、こいつはご一行に見えていない設定か。なになに?ありがたーいお経をもらいに、遥か天竺まで行くけれども、天竺に向かう道中は非常に長い。カロリー補給が大事だと。ふむふむ。

…セリフのやり取りは、3回くらいできたかな(笑)。ほらもう、セリフも段取りも吹っ飛んでるぜ。どういうわけか、一行のひとりが、自身のカロリー補給用のマシュマロを客席に配り始めた。え?サ室でマシュマロ?観客ビックリ!
あ、高カロリーな黄金肉まんを、魔物が盗んで隠した!それって三蔵法師さまのぶんよね?ご一行内に、しょーもない争いが勃発。「お前がとったんだろ!」「いや饅頭とってない!」
あれれれ?なんで、饅頭の取り合いから、観客が熱波を浴びる流れになったんだっけ?笑いすぎて忘れた!舞台上はぐちゃぐちゃに演者が入り乱れ、観客はみんな笑い続けたよ。
そう、これは、イベント内容を映像に残してはいけないシロモノなのだ(笑)。この限られた空間と短い上演時間を共有した人々にとって、記憶に残るか残らないかくらいがちょうど良いのだ。
こんなに何でも記録が残る時代に、アーカイブが残らないから一期一会。そして、演者さんも反省しない(笑)
ここは、こんな茶番劇を上演できる唯一無二の施設だ。尖っている。それができるのは、集うお客さんたちが笑って許してくれる「場」の土壌が出来上がっているからであり、それは長年この施設が積み重ねてきた財産だ。
ラスト、演者紹介までなんとか辿り着き、大拍手で終えた。観客たちがサ室をゾロゾロと出ていく。演者も観客も、晴れ晴れとした顔だ。
もし、このイベントの感想を、観客に尋ねてみたらどうなるか。それはね、「あー楽しかったー!」だけなのよ。ホクホク、ウキウキしている気持ちはあるが、水風呂入ったら内容忘れる(笑)。それに、この茶番劇を言語化できる人はいないのだ!もちろん、演者だって!
あの有名な歌の歌詞がピッタリだ。
「ラーラーラー ララーラ 言葉にぃ 出来なぁーいー」
年齢・立場を問わず、演者だろうが笑い倒す。みんなそれぞれ、なんやかんやあるよ。それでもさ、この時間を一緒に笑って過ごしたんだぜ。いい話じゃないか。
ここのスタッフさんたちは、気さくに話してくれる。「公演が終わった後、塗りまくったメイクがなかなか落ちなくて4回も洗顔したよ」とか、「この前用意したけど使わなかった道具を、今回ねじ込んで使ったよ」とかね。
いかにも落としづらそうな特殊メイク
「しまった!」という直前のドタバタを、ケラケラ笑ってんだよ。やりきった直後だから、表情が清々しい。
ここのイベントは、演者みんなでノリノリで話し合って内容を作る。「次、私コレやりたい」とぶっこむ。最初のほうにも書いたけど、支配人が自ら、その名も「問題作」なんていうものをぶっ込み、あまりにもぶっ飛んだ内容に、スタッフが反対する場面もあったくらい自由な土壌ができてる(笑)。
サ室の改装をするときだって、レイアウト案をみんなで話し合って決めたんだって。人がたくさんいる組織でさ、こんなにみんなで話し合うって、なかなかできることじゃないよ。
改装後のサ室。真ん中が区切られ、左右で段の高さを変えたことで、座る場所によって印象が変わる。好みの場所を探すのも楽しい。
游心の湯は、ぱっと見、ただの日帰り温泉なんだ。でも私はまた来ちゃいましたよ。そう、11月末の「感謝祭フィナーレ」イベントのために。
ここの男性スタッフさんたちだって知ることが不可能な、女湯の秘密の園だ。ウヒヒ。今回は、どんなものを見せてくれるだろうか。ウズウズするね。
前もって、サウナで十分に蒸して、徹底的にクールダウンしたよ。イベントよりも早めにサ室に入るから、イベント時間中のカラダと気力を持たせたいもんね。
いざ、気合いを入れるぞ。座席を確保する駆け引きに、挑むからね。イベントを待つ時間が、ワクワクを盛り上げる。肌がチリチリする瞬間だ。
サ室のドアを開ける。さあ、今回の華麗なる舞台の開演だ。
記事を書いた人
好きなサウナ:
プロフィール: サウナ室のドアを開ける時のワクワクを、よく夢で見ます。修羅の国、北九州オバチャン。心は小5男子。岩井志麻子さんのように、ヒョウ柄をまとう勇気ナシ。コナン君のような頭脳もナシ。 ホームは未だ決まらず。実家的サウナは、シーサイドスパの塩サウナ。大好きな親戚の家的サウナは、游心の湯。 「個人の感想です」な文句と妄想を、サ活意見のように書いていることがよくあります。不快だったら、ごめんなさいね。
遊心の湯行ってみたくなりました!
プーチンさま、ナイスサ活👍
全(久留)米が泣いた🙌
演者さん達がみんな大いに楽しんで"小芝居"されてる感が伝わって来ますネ❣️🥳私も普段から劇団の公演よく観に行くんですが"西游記"是非一度拝見したいと思いました😎
スタッフのみなさん、青春ぽくていいですね🌲
プーチンさんらしい文章! 楽しく読ませていただきました😊
めっちゃ面白かったです😂 またゆーしん行きたくなりました❣️❣️ そして次はドタバタ劇場も、ぜひ観てみたいです❗️
劇場の楽しさが伝わってきました😂 遊心愛に溢れた記事 楽しかったです💕
ただただ笑える場ってこの時代とても貴重なので、これからも続けてほしいですね…!施設の皆さんもACJ日本選手権に出るほどの結果を残しつつ、茶番劇も楽しんでいそうなところが、とても素敵です。
前に游心さんでアウフグーズを受けた時に、スタッフの体感がしっかりしていて、練習で結構タオルを振ってるんだろうなと思いました。 タオルを振る技術もあり、全力でふざけ倒す、最高ですね。
宝塚が好きなので記事トップの写真(ベルサイユのばら?)に目を奪われ、わくわくしながら読みました。演者で創り上げる姿は想像だけでも楽しそうです。
いつもサ活を読ませていただいていましたが、お写真(貴重・・!)を拝見して、劇団の皆さんのご様子が想像以上でした☺️✨そしてじーんとしました。。ありがとうございました☺️✨
はやく、ここのサウナに行きたくなりました!
めちゃくちゃ面白そう🤣ACJ出場されるほどしっかりしたアウフグースもあれば、この様な茶番劇もあり、お客さんを全力で楽しませてくれる施設ですね。施設の方が元気だとこちらまで元気になりますよね👍
だから久留米まで行くっちゃね!
笑いに包まれる素敵な劇場ですね。言語化できない楽しさは、逆に、世界でも通用するのるのではないかと思い、ハレの舞台を妄想してしまいました。楽しい記事をありがとうございました!!
ええ!?あのプーちんさんですか?🤯まさかのアドベント投稿!底抜けに驚きです!ゆうしんさん。やべーオーラがぷんぷんするじゃないですか🤣閣下の熱いサウナへの想い伝わりました👍いつかイキタイと思いました!福岡三大うどんを食べに|ω☆)キュピーン
「イベント内容を映像に残してはいけないシロモノ」「記憶に残るか残らないかくらいがちょうど良い」がパンチラインすぎて爆笑しました😂すごく幸せなイベントですね!茶番劇を見る人も全員裸なのがシュールすぎます笑
「これぞ游心!」がバシバシ伝わってきました!!! 読みながら「そうそうそう!!」と、思わず何度も笑ってしまいました! お客さんもスタッフさんたちもあったかい。 演目は一期一会、だけどもご縁はずっと繋がっていく場所。これからも大好きな施設ですね🫶💕
とっても楽しい空間だからこそプーチンさんも演者さんたちへサプライズを用意するんですね🤭 游心のアウフグース受けたことないので、すごく行きたくなりました!楽しいわくわくする記事をありがとうございます🔥
劇団ゆうしん…本当に楽しい時間をもらえますよね。
楽しく読まさせていただきました🎵 サ活投稿もニヤりながら読んでます😊
ずっと気になっていて、まだ行けてないイベントなのです。この文章を読んでますます行きたくなりました!
すごい!これこそ僕のやりたい理想像です!