1年前の自分に「週1でサウナ行ってる」言うても絶対信じないだろうな
サウナイキタイ アドベントカレンダー 14日目の記事です。
2022年11月。
私は連日、サウナ施設を調べていた。
自分が行くためではない。
この時の私はまだサウナに興味が無い。
2020年某日。
旦那に勧められて初めてサ道を読んだ私が、一番共感したフレーズは、「私サウナ苦手~あれ、苦行でしょ~?」(@1巻130P)だった。熱いのも汗をかくのも耐えるのも、まとめてノーサンキューであった。
しかし、トリップ感あふれる作風自体は好きだったし、ドラマ版のエンディングの異様なエモさにもグッと来た。
それは異世界漫画を楽しむ気持ちに似ていたかもしれない。自分にモンスター(=サウナ)を制する力は無い。けれどその力を持ち世界を旅する彼らを見ている分には楽しい。
そういう距離感だった。
対して、「ととのう」という感覚に魅了され始めた旦那は、週1でサウナに通い出し、私への布教も加速していくが、「所詮は異世界の遊び」と線を引いていた私は、なびかなかった。
とはいえ、それが年単位にもなってくると、さすがに、好きな男が熱心に勧めてくれているもんである。無下にし続けるのも、心が傷む。
そう感じていた私は、ある日、岩盤浴目当てで通っていた近所のスーパー銭湯で、突発的にサウナ室に入った。タオルも巻かず、マットも持たない、ただ、産まれたままの姿で。
生まれて初めての1セット、なるか!
………
あっついな…。
え、あっついな…。
いや、あっついな…!!
これ、砂漠の、砂嵐の、砂が無いバージョンやん。
先端が熱い、末端も熱い、鼻から抜けていく息も熱い。もたれかかった壁の木の板も熱くて、「ひぃ!」 と小さくうめいた。こいつ全然支えにならねえ。
ただでさえ水分量に乏しい妙齢の顔面が、熱にガンガン晒されていく様にも、不安がつのる。おい、大丈夫か。主にほうれい線と目元、大丈夫か。「返事がないただの屍のようだ」が大丈夫か。
熱さで汗を流す前に、この環境にこのまま身を置いていいのか、という冷や汗の方が先に流れてきた。未知への恐怖で心臓がバクバクする。
無理だ。
1分もたずに、出た。
出たすぐ横に、水風呂があった。
この滞在時間で水風呂だなんて荷が重いことはもちろん分かっている。しかし、暑さから寒さへのギャップが気持ち良いのは経験則で知っている。夏場のコンビニのぎゃんぎゃん効いたクーラーなんて快楽でしかないもんな。
それに、温冷…浴…?を繰り返すことで、なんか体のどこかが優位になって…トランス状態…?っぽくなる…とかいうし…??(おぼろげな知識)
理屈をフル稼働させた。
その勢いでちょろっと肩にかけた。
…
ここはできればこの時の顔写真を言葉の代わりに掲載したかった。
声にはならなかったが表情がすべてを物語っていたと思う。苦虫を噛み潰して噛み潰して跡形もなく煮詰めたような顔をしていただろう。
つめたっ…。
いや、待って待って、つめたっ…。
これ、プールの水より冷たいやん…。え、そんなことある…??
わからん…。
ごめん、正直、訳わからん…。
こんな、極端から、極端に、行く必要、ある…?そんな、しんどいを経由して、しんどいにたどり着いて、そうまでして得る「ととのい」て、ほんまにwin-winなん…?
それ、一定以上の精神力と体力を持った人でしかたどり着けないエルドラドとかではなくて…?
あと、今これ入ったら、多分、死ねる。
手桶を戻す数秒でそんな考えが一気に脳内を巡った。
駄目だ。もう気持ち的に、負けてる。
ふらついた体でジェットバスに向かい、そのまま二度とサウナ室には戻らなかった。
時は流れ、2022年11月。
私は連日、サウナ施設を調べていた。
自分のためではない。そりゃあな。
くだんの旦那の誕生日を翌年1月にひかえていた私は、貸切サウナのサプライズを画策していた。普段からサウナに入らない私が、よもやそのサウナをプレゼントするとは思うまい。体を張ったサプライズに泣け。
調べを進める中、冬の日本海を水風呂にするという何ともクレイジーな施設も見つけた。通常のモンスターにすら太刀打ちできないことを思い知らされていた私は、更なるエリートモンスターの脅威に、ただただ震えるしかなかった。
そんな中、私が選んだのは、和歌山県湯浅にある二の丸温泉だった。
ここは滝壺が水風呂になるという。1月だ。大丈夫だろうか。
日本海があまりに衝撃的でちょっと引きずられてしまった。
いざ、エルドラドを目指して
二の丸温泉は、薪ストーブタイプのサウナ小屋が貸し切りできて、その温度は120度まで上がる。森林の中にある小屋の前には川が流れ、小さい滝壺があり、水風呂代わりにそこにばしゃんと行く訳である。水着着用のため、男女混合で楽しむことができる。
今聞けば最高でしかないが、当時の私は震えていた。
120度。冬の滝壺。ガチの苦行じゃん。僧じゃん。
なんでこんなハイエンドなとこ選んじゃったんだろ。
しかし自分から提示した以上、貴男一人で行ってらっしゃーい、てな訳にもいかない。
二の丸温泉のサウナ小屋は大変スタイリッシュな外観/内観である。加えて山の深いところにあり、俗世からは隔離され、そんな素敵なシチュエーションに、好きな男と2人きりである。ふーう!しかもバースデーと来た。ふーううっ!最高じゃん。数分程度熱いくらい、なんだよ。
奮い立たせた。覚悟は決めた。出陣だ。
生まれて初めてまともに1セット@サ室
………
あっついな…。
うん、あっついな…。
まあ、あっついけど…
…なんやろ、前回よりはイケるな…。
これが愛の力かー、と思いかけた矢先、壁の木の板にもたれかかっても、ひぃ!とならねえことで、気が付いた。
水着だ…。
あと、旦那のサウナハットを真似して、頭に掛けたタオルだ。こいつらが防具となって、熱感の直接攻撃を和らげているのか。
それなら前回の私は、村人がぬののふくすら装備せず、突っ込んでいったようなもんだ。
多少、合点がいった私は、本格的に座りを深くした。
旦那にも、イケそうやで、とアイコンタクトをとる。
そして前回の脱落ポイント1分を超え、3分が経過した頃、次の気付きが来た。
…いや、汗の量、エグイな…。
私、こんなにも汗、出せるんや…。
まともな運動なんて、昔、差し出されたレモンのはちみつ漬けを何の気なしに食べたら「はい、これ、陸上部のおやつだから、食べたってことは、お前も部員ー!」とかいう、当たり屋みたいな手法で入らされた部活で、長距離走をしてた以来だから、忘れてたよ。
屍と化していないか心配だったほうれい線と目元にも、汗の膜が生成されて、肌をスクルトしてくれる。これならいのちだいじにとか言わずにガンガンいけるかもしれないなドラクエやりたい。
生まれて初めてまともに1セット@水風呂
7分ほどして、外に出た。
うわあ、涼しくって、気持ちいいいーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
となるかと思いきや、意外と体はすぐ冷えた。1月の外気、舐めてた。
小屋の外には、滝壺以外に五右衛門水風呂もある。ちょろっと水をかける。ひいいいいいいいいいいいいい。苦虫3匹くらいつぶした。
しかしここまで来た以上、もう後には引けない。旦那、むっちゃ見てくる。
行こう。
言うて、間違いなく、冬の日本海よりは、あったかい。
ざぶん…。
ざ、ざぶ、ざざぶぶっん…あ、あかんあかん、脳内で擬音がバグる...!つ、つめたいつめたいつめたい、馬鹿なの…!?!?!?!?
でも、冬の日本海よりは、日本海よりは、日本海よりは…!!!!!
…
…イケるな…。
体内に残っていた熱がじみじみと障壁を張りだしていた。伊達に120度に7分も蒸されていねえ。
40秒は浸かっただろうか。旦那が、やるやん!という目を向けてくる。せやろ。入水直後は三途、見えたけどな。
途中から君が入れてくれた「おう、行くねえ!行くねえ!」っていう合いの手も良かったで。「行けてねえ!行けてねえ!」とはなったけど、支えになったで。サムズアップ。
生まれて初めてまともに1セット@休憩
身体を拭いて、インフィニティチェアに横になった。
暑い ⇒ 涼しいことが気持ち良いんだと思っていたけど、ちょっと違った。暑い、の後は、普通に、寒い。なんなら、サウナ室の熱が恋しい。
ただ、集中しないと散ってまいそうなほど、ぼんやりしているけれど、身体の奥に、妙な気持ち良さがあった。脱力と爽快とリラックスをリミックスしたような感じ。
それ、本来、あんまり、共存せえへん。ダラーん、としてるのに、シャキーン!は無いよなあ…。
今まで生きてきた中でも、よう知らん感覚を、私の体が得ようとしているのは確かだった。この年になっても、まだそんなことがあるんや、という事実は、私を熱くさせた。
でも、それが「ととのい」なのかどうかは、よく分からなかった。サ道みたいに曼荼羅も飛ばない。
「体の冷えに邪魔されてんのかな。」「じゃあ、サウナを長めに入ればいいのかな。」「それならサウナハットとか装備を整えた方が良いのかな。」さまざまな考えがグルグルと頭を巡った。この感覚を、もっと、ちゃんと、掴んでみたくなった。
旦那にもこの気持ちを伝えたかったが、いささかスピリチュアルな趣になりそうだったので、ただ「思ったよりイケたわ。」とだけ伝えた。
そして今日もエルドラドへ
時は流れ、2023年12月である。
震えながらサウナ施設を探していた1年前の私は到底信じないだろうが、今の気分は「もしかしてわたし、ととのっちゃってるのかな?(@2巻87P)」である。
そう、信じないだろうが、その後お前は「ととのう」という感覚の模索に魅力され、新たなサウナ施設を求めて、県外に遠征するようになったり、
推し活と称して、好みの施設のタオルやハットを買い漁ったり、
隙あらばサウナ付きカプセルホテルに泊まるための用事を探すようになったり、
しまいには「思ったよりイケたわ。」とだけ伝えてきた女の急速な傾倒ぶりに慄いた旦那から「サウナモンスター」なんて言われるようになるんだ。引き気味で。
(モンスターって制するものじゃなくて、自分がなるもんだったんだね。業が深いよ。)
外気浴で蟻に尻を嚙まれたり、初ととのいで人気もはばからず破顔してしまったり、まあ、色々とアクシデントもあるけどもさ。
入り方のコツさえつかめば、すんげえ気持ち良くて、すんげえ楽しいんだから、何も心配することなんかない。え、滝壺? ええやんええやん、飛び込んでこいよ。
そう言ってあげたい。押し気味で。
苦虫12匹くらい潰した顔で、それ、苦行でしょ〜?って言われるんだとしても。
~今回登場した施設~
岩盤浴目当てで行きつけていた近所のスーパー銭湯
右も左もわからん状態だったので、えらいレポになっていますが、実際には、サウナも水風呂も入りやすい温度で、初心者にも優しいセッティングです。今ではなくてはならない大好きなホームサウナです。食事処のご飯も美味しいよ。
日本海が水風呂
今となってはむっちゃくちゃ行ってみたいよね…。
産湯
1月は滝壺が冷たすぎて、足をちゃぷん…で限界だったため、後日リベンジし、水風呂代わりにばしゃん、を実現しました。最高過ぎた。内湯もめっちゃ良いよ。
記事を書いた人
好きなサウナ: ホームサウナ以外だと、大東洋レディスと、なにわ健康ランド湯〜トピアが特にラヴ!ですが、基本、みんなちがってみんないい。
プロフィール: サウナチャンスがいつ来ても良いように健康体を心がけたい。
サウナーとして初めて産湯に浸かった記憶が呼び起こされる記事でございました🙇♂️ 私の妻にもこの記事を見せて、今度こそ妻をモンスターに変貌させようと思います。
読み進めていると「懐かしいなぁ」と思いつつ、私も県内外のSAUNAを求める「サウナモンスター」になっていることに気づき恐怖を感じております🤣初心を思い出させてくれる内容でした。有難う御座いました🙏
愛の力❤️は偉大ですね。ドラクエ笑えました😁有難うございました👏
はじめまして。すっごく面白くて一気に拝読いたしましたー! 特にドラクエ絡みはツボです♪ 最近ようやくサウナーさんになりましたが、私の妻も最初のころは熱い、寒いのがなんがエエねんなー!?と言われ続けましたが、たまたま寄った施設が低温サウナで水風呂が温水プールだったのが運の尽きで、今ではハットとマスクがあれば高温サウナでも平気になりました(笑 アドベント投稿、ありがとうございました!
サウナが苦手だった頃の自分を思い出します。仕事中にPCで読んでいて、おもわず声を出して笑ってしまいました💦
サウナが苦手だったあの頃の感覚を思い出すなぁ... 背中を押してくれる存在はホントありがたいし、筆者のユーモアと探究心のある素敵な人柄が伝わる良記事でした☺︎
ご主人への垣間見える愛、そして「体を張ったサプライズに泣け。」が大好き😂ワタシも同じく1年前にはこんなにサウナに通うことになっていようとは思いもよらなかったので、勝手にサウナ同期のように親近感感じちゃってます(週1は行けてないけど)
👌
熱されて冷や水に浸けられて拷問じゃん!って思っていた時期があったな〜と微笑ましく読ませていただきました!初心に返れて面白かったです!
面白かったです★(*^^*)