失われたサウナ屋を求めて
サウナイキタイ アドベントカレンダー 17日目の記事です。
せめて、書き残したい
今年もまた、サウナ屋の閉店が相次いだ……とは毎年言っている気もするのだが、特に今年は新型コロナウイルスの影響で、嫌な加速がついてしまった印象は否めない。
営業中の店舗でも、目の前の「我慢の年末」をどう辛抱しようか思案中のところが大半ではないか。
アドベントカレンダーとは、楽しみなクリスマスに向けて一日一日カウントダウンしていく、前向きな性質のものであることは承知している。
が、ここはひとつ仏教式に、手を合わせる感覚で、今年閉店したサウナ屋たちを振り返ってみたい。
過去があってこその未来、新たな知見やライフハックはなくとも、ひとつくらいこんなアドベントカレンダーがあってもいいではないか。
いや、許してほしい。どうしても書き残したかったので。
1月に閉店した札幌のスパ・サフロから…といきたいところだが、なにせこんな情勢なので、振り返りも近場に限られてしまう事も、またお許しいただきたい。
とにかく、窮屈な一年間だった。
営業中のサウナ屋も、閉まってしまったサウナ屋も、頑張ったことに変わりはない。
稲城浴場(最終営業日:2020年3月30日)
扉の奥はサウナ利用客専用のカランと水風呂、さらに屋根裏風の休憩室。
小遣い生活者でも、サウナコースの720円でちょっとした贅沢感に浸れた銭湯だった。
男性側がコンフォートサウナ、女性側がロッキーサウナで、入れ替えは最後までなかったから、私にとってロッキーサウナは永遠の謎のままで終わってしまった。
稲城長沼駅から近いが、商店街とは離れているため駅前の商業地図にも名前は残っておらず、閉店から8ヶ月でもう稲城浴場の痕跡は見当たらない。
もともと住宅地にあった銭湯の跡地に住宅が建つのだから、自然な話ではある。役目を終えた文明が自然に還っていく、そんな風景を見た気持ちになった。
これで稲城市の、銭湯と呼ばれる全ての施設が姿を消してしまったが(他に温浴施設はある)、記憶が正しければ「ラス2」はおそらく、慢性的な渋滞で名高かった(今でも解消されたとはいいがたいけれど)矢野口交差点の脇にあった、玉城湯ではなかったか。
サウナがあり、何度か入った覚えはあるが、渋滞の元凶であった南武線が高架化されて、いつのまにか玉城湯もなくなってしまった。
生活が便利になると、銭湯は失われてしまうのだろうか。
その理論を逆説で適用すると、今後は銭湯が復権する可能性も…と思わなくもないが、この先に控えているのは、別種の難しさを孕んだ時代であるように思われる。
湘南ひらつか太古の湯グリーンサウナ(最終営業日:2020年4月28日)
跡地はきれいに更地になっていて、集合住宅としての開発が始まるのは年明け以降なのだろう。
浴室は広く、サウナも広く、テントサウナまで設置した外気浴スペースもまた広く……と記憶の中のグリーンサウナは実に広々としているが、その跡を見ると案外にこじんまりとしていて、限られた面積にいろいろと詰め込まれていたサウナ屋だったのだと今さら気づく。
当初はゴールデンウィーク終了まで営業するとリリースされていたが、おそらくは新型コロナウイルスをめぐる状況の悪化と、閉店を惜しむファンによる混雑を勘案したのだろう、前倒しでの閉店となった。
サウナ室で食べた「かちわり氷」(実際は氷の大きいメロンソーダ)の思い出。
かつてのアウフグースの名手には、今はスカイスパで会えるとの噂もある。
でもここは跡地を眺めるより、平塚駅近くの商店街にある「キッチンみどり蒸し」に行ったほうがいい。
サウナのないグリーンサウナが、食事を中心として動態保存されている。
その光景を見る限り、閉店にあたっての「私のサウナへの関心と情熱は、とどまるどころか、ますます大きくなっており」との社長コメントは、本物だと思われる。
カプセル&サウナ サウナトーホー(最終営業日:2020年9月11日)
新型コロナウイルスによる営業不振を理由としての閉店。
サウナ室はカラカラ派まで納得させてしまう湿度バランス、20分ごとの「リョウリュウ」もあって、幅広い層から支持されるサウナ屋だった。
入浴後は強制的に食堂へ誘導されるレイアウトも懐かしい。
上の階が集合住宅なので、本格的な解体がされるとしてもまだまだ先には違いないが、閉鎖されてなおかつての姿をとどめたままでいるのも、見ていて逆につらいものがある。
前述した平塚のグリーンサウナ、こちらのサウナトーホー、さらに年明けには座間の相模健康センターに、相模原のJNファミリーまでもが閉店してしまうという。
神奈川の、そして郊外のサウナ屋にとっては本当に受難の年だったといえそうだ。
それぞれに事情はあったにしても、どうにかならなかったものかと思ってしまう。
ある程度のハコを持つサウナ屋が人を集めて賑やかに営業する、もうそんな時代ではなくなってしまったのだろうか。
「空前のサウナブーム!」「今サウナがきている!」などと聞かされ続けてきた2020年は、こんな年だった。
サウナ玉泉(最終営業日:2020年9月27日)
年季の入った樽型ストーブが頑張る、フラットな造りのサウナ室が素晴らしかったこのサウナ屋は、閉店から2ヶ月がたっても、かつてのままの姿でそこにあった。
命脈尽きたことを告げる貼り紙もなく、もしや夜になれば灯りがついて、かつての客の魂だけは現れるのではないかと、夢想してしまう。
顔を合わせればヘボ将棋の相手をしてくれた紳士は、今はどこのサウナ屋で汗を流しているのだろうか。
人が消えれば縁が切れる。店が消えても縁は切れる。そこにはなんの違いもないように思える。
今年はあまりに新型コロナウイルスの影響が大きすぎて様相が変わった感もあるが、サウナ屋の閉店理由は主に中身外身の老朽化であって、「時代に取り残された」の文脈で語られることが多い。
最終営業日に向けて、休憩室で私と常連客の間に割って入って写真を撮る人がいた。
サウナ屋は変わらず、人間だけがあさっての方向に進んでいるのではないか。
カプセルホテル&サウナ ノーブル(最終営業日:2020年10月30日)
千葉駅近くの歓楽街で営業していたサウナ屋。
閉店前後を比較すると、色が塗り替わっている!
もしかしたら閉店する前に塗り替えていたのかもしれないが、あのやる気を感じづらい水風呂と店内の雰囲気を顧みるに、「なにかテコ入れをしてやろう」と思っていたとも考えにくい。
風〇ビルとしてやり直すとするなら、カラーは白のほうが受けはいいのだろうか。
サウナ室は狭さが幸いしていた感もあったが、湿度と熱さが両立していて実に好みのセッティングだった。
かつてはニューウイングの2号店だったという噂もあるが、真相はわからない。
あのサウナ屋に通じる華やかさは、ここからは感じられなかったのは確か。
よからぬ理由で侵入する輩が多いのか、それともかつての記憶が消えない者がいるのか、入口には立ち入り禁止の黄色いテープが非常線のごとく張り巡らされていた。
メンズサウナ こり・こり(最終営業日:2020年11月24日)
かつての店名は『サウナフィンランド』だったらしいのだが、どうも記憶があいまいだ。
目立つ立地の割には行ったことがないという人も多く、私も特に再訪することなく閉店の日を過ぎてしまった。
前に行ったのがいつだったのかも思い出せないが、アカスリの呼び込みがモンシャトー(ジートピアの前身)のさらに先を行く方向性で激しかった記憶だけはある。
新宿における各種商売は、「夜の街」でコロナ発信源のイメージが定着してしまったことで、相当に苦戦している。
閉店の知らせは貼り紙のみで、看板はそのまま残されていたが、建物自体の老朽化もあり、このまま姿を消してしまうらしい。
パークプラザ大宮(2020年3月31日閉店、12月11日再オープン)
年の瀬に気の滅入る話ばかりに付き合わせてしまったが、少しは明るい話題も。
『来る4月1日朝11時をもって、浴場改修工事の為、一時営業を停止させて頂きます。長らくご愛顧を頂き、大変ありがとうございました。パークプラザ大宮』
一時の停止とあるが閉店とも十分読み取れる、国語の指導をしたくなるような書き置きを残して休んでいたパークプラザ大宮だったが、先日12月11日、めでたくリニューアルオープンの日を迎えることとなった。
交通の要所である大宮駅にほど近い、無骨な造りのサウナ屋だ。
実際、3月の閉店時点では「お客が減ってもうこれ以上は…」という話だったから、おそらくは心変わりしてのリニューアルオープンに、”空前のサウナブーム”が寄与した可能性はもちろんある。
あのサウナ室の壁画はそのまま残っているのだろうか。
気になるからこれから行ってくるか。
石岡健康センター(2020年8月31日閉店、10月1日再オープン)
8月に訪れた際にはかなり建物も古く、これは閉店もやむなしか、の感想だった。
が、引っかかったのは、閉店を告げる貼り紙の「平成19年の4月のオープン以来……」の文言。
サウナ屋としてはそれほど営業歴が長いわけではないのに、摩耗の度合いが高すぎるのではないか。
果たして、しばらく経った10月1日、再オープンの告知があった。
どうもここは経営母体を変えながら、引退と復活を繰り返しているサウナ屋であるらしい。
サウナ界の大仁田厚は、茨城県石岡市に存在した。
一応は”最寄り”と表現せざるを得ない、常磐線の羽鳥駅もしくは岩間駅から徒歩で実に50分…と腰が抜けるようなアクセスのサウナ屋だが、水がいいのでぜひ一度。
近くには、本来は北海道が本拠地であるセイコーマート(茨城県にもそれなりの店舗数があるらしい)もあるので、アフターサウナに牛乳ソフトクリームも悪くない。
番外編:カプセルランド柏泉(最終営業日:2015年9月頃)
今年閉店したサウナ屋を振り返ってきたこの記事だが、最後は番外編。
常磐線の柏駅から賑やかな商店街を抜けて静かになるあたり、いかにもカプセル付きのサウナ屋らしい立地に、かつてあったのがこの店。
住所から推測するに、おそらく写真の中華料理屋の隣にあったのではないかと思われる(もしくは道を挟んで逆側)。
検索してもほとんど情報が出てこないあたり、”空前のサウナブーム”のまだまだ前々夜、2015年に閉店した店なんだなと思わせる。
乏しい情報をかき集めたところでは、ボイラーが故障してそのまま閉店…と、当時のサウナ屋の、悲しいながら良くある最期であったらしい。
ところがこのカプセルランド柏泉、現在でも、なぜかホームページだけは残り続けているのだ。
「オンライン〇〇」が流行った、流行らざるを得なかった一年だったが、オンラインにだけ生き続けているサウナ屋もあるようだ。
いつの日かの復活をまさか目論んではいないと思うのだが、何かを期待してしまう。
厳かなサウナ愛にトントゥ
今年1年がどんな年だったかがよくわかる資料的価値満載の記事にシビレました
ガンバって続けてほしい。。。ご時世で応援することも難しい時期ですが。。
歴史を学べました。ありがとうございます。
ありがとうございました😭
夜勤明けからのノーブルが好きでした…😭
郷愁感を感じる、良き記事でした。ありがとうございます
思い出が蘇る記事ありがとうございます😭
稲城浴場懐かしいです。いい施設がなくなるのは本当に悲しいですね
久しぶりに稲城浴場を思い出しました、グリーンサウナトーホー共々書き残して頂いて感傷に浸ってます。
一度きりですが、稲城浴場行きました。地元に愛されるいい浴場でした。グリーンサウナも忘れ難い。不思議な色の水風呂。永遠に居座れそうな食堂。
素敵な記事でした☺️
アーメン
サウナ愛。感じました。
この閉店の流れは個々の力で止められるものではないのかもしれませんが、それならばせめて看取ってあげたいですね。
いつもブログも興味深く読ませて頂いております🙇♂️
いつまでもあると思うな、ですねぇ…。ギラギラネオンの稲城浴場閉店切ないです。
今年はサウナに入れないという異常事態にもみまわれましたが。。。頑張ってる近場のサウナを応援していかねばですね。
千葉のノーブル無くなってしまってたのですか!!初めて知った!ショック!
職場のそばの消えてしまった銭湯の跡地を見て、こんなに狭かったんだなって驚きました。壊すのは簡単、すぐに風化されてしまうものが多いですが、時折こうやって思い返して当時を懐かしむことは大切ですね。 いまある施設には長く続いてほしいです⛄✨
素晴らしいクロニクルでした!