くじら

ズボラなオレは時間を止める能力を持っている。

機械式腕時計を持っている方ならあるある（だと思っている）なのだが、時計を使わない期間が長くなるとついついゼンマイを巻き上げておらず時計が止まってしまう事がある。
いつもなら出かける前に時刻を合わせ、ゼンマイを巻き上げてから出かけるのだが、本日は敢えて時計を止めたまま家を出た。



今月末で閉館してしまう東名厚木健康センター。
いつもの通り時間を忘れて楽しみたいという気持ちと、閉館の時など来ないようにと思って今日だけは上記のように更にズボラを発揮させた。


オレはこの施設には本当にお世話になったし、思い出も沢山作れた。大人のオレが子供の頃のように時間を忘れて楽しめたし友達と遊び時間を忘れるほど楽しめた。
本当に感謝している。
4年半前、相模健康センターが閉館した後も出会った友人達は誰が決める事なくここに集まり仲間は増えた。

しかし時が流れれば人の生活も変わる。
オレも引越しをして足が遠のいてしまっていた。
来館する頻度があの頃とは全然落ちてしまい、休日ゴロゴロしたり夜友人達とおしゃべりしたりという事も少なくなったのだが、たまに来ればいつも同じ健康センターが待っていてくれた。

オレは前職、ここと同じく閉業を伴って転職をした過去がある。常連のおじいちゃんおばあちゃんはもとよひ従業員の方々の事を勝手に心配してしまっている。勝手に胸が締め付けられそうな気持ちになっている。
余計なお世話だが。
ここに毎日のように来ていた友人もいる。
そんな方々の人生、生活サイクル、ルーティンが変わってしまうのだ。一つの施設が終わりを告げるという事がこんなにもツラい事なのか。

本当に時が止まってしまえばいいのに。

そんな事を思いながら、おそらく最後の訪問となるであろう健康センターを存分に堪能した。いつも通りの東名厚木健康センターだった。


帰路につく前の車の中、オレは腕時計のゼンマイを巻き上げ、時刻を合わせて魔法を解いた。
無常にもまた日常は始まる。

ありがとうございました