断熱と自動ロウリュについて
サウナイキタイ アドベントカレンダー 25日目の記事です。
メリークリスマス!
昨晩から始まったクリスマスもあと数時間となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。仕事の方も多いでしょうか。
はじめまして、『山梨サ活倶楽部』のはまと申します。
平日にひっそり担当するつもりで応募したのですが、「メリークリスマスがない青春なんて青春じゃないんだぜ」とまで言われるこの日になってしまうとは、全く想定外でした。そんなわけで今日までソワソワしていた12月でしたが、大トリの25日を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
我々『山梨サ活倶楽部』は、山梨から関東に生息している普通のサウナ好きのオジサン達の集まりです。どこのサウナ行ってもこういうオジサンいるな、って感じのオジサン達が集っています。
基本的には日々ソロで田舎サウナに訪れ、『サ活倶楽部』の名の通りサ活を書いたり、たまに集まって飲んだり、サウナ旅したり、テントサウナしたり…と、いかにもオジサンらしい地味な活動をしています。
ちなみにテントサウナはDIY、つまり自分たちで制作しています。
国内でもかなり初期にDIYテントサウナを作られていた「Attu」さんのテントに感銘を受け制作を開始、「断熱こそ正義!? 情熱を温度へ」のコンセプトで、熱を逃さないアツアツサウナを追求しています。また最近では、「DIY自動ロウリュ」を作ったりして遊んでいます。
ということで、今日は「断熱」と「自動ロウリュ」について書かせていただきます。
断熱とは何か
「自分、断熱マニアなんですよ」「断熱材と断熱計算が好きなんです」
とカミングアウトすると、だいたいは「そんな人いるんだ! 初めて聞いた」と笑われます。確かにあんまり聞いたことない。でも好きなんだからしょうがないですよね。
そんな、私が愛して止まない「断熱」とは、いったい何でしょうか?
最近めっきり冷え込んできましたが、皆さんは「寒いな」と思ったらどういう対応をしますか。上着を着こむ、布団に入る、ストーブを焚く、エアコンをつける、湯たんぽを抱える、温かい物を飲む、お風呂やサウナに入る、猫や犬を抱っこする、激しく動く…とかでしょうか。
このうち「上着を着こむ」「布団に入る」のような対応が断熱です。つまり、そこにある熱を有効利用する、「熱を逃がさない」アプローチです。
断熱とサウナ
ところで、サウナ室の温度は、何によって決まるのでしょうか。
一番重要なのはストーブの火力ですよね。とはいえどんな強いストーブでも、ドアを開けっぱなしだとなかなか暖まりません。熱がサウナの外に逃げているからです。
つまりサウナ室の温度は、「ストーブから出る熱」と「逃げる熱」とのバランスで決まり、次のようになるといえます。
サウナのドアを閉めれば逃げる熱がゼロになるかといえばそう単純な話でもなく、ドアを閉めていたとしても少なくない熱が色んなところから逃げています。その「色んなところ」に断熱を施してやれば「逃げる熱」が減り、サウナの温度が上がることになります。
「じゃあどれくらい上がるんだよ!」と気になる方もいらっしゃるでしょう(いらっしゃいますよね)。
よろしい!ならば計算だ!
熱損失量を計算しよう
計算方法としては、住宅断熱(昔ハマっていた)の性能を測る評価式である「Q値=熱損失係数」をベースとしたものです(省エネ基準の改正もあり、現在は「Ua値=外皮平均熱貫流率」が主に使われているようです)。
個人的には結構イイ線いってる計算式だと思っており、酒を飲みながら計算してニヤニヤしています。とはいえ当然ながらサウナと住宅では異なる部分も多いですし、またテントサウナストーブの正確な燃焼効率とかもなかなかわからないので、相対比較や弱点の認識に使えるかな〜というところでしょうか。あくまで数字のお遊び、手作りの酒の肴の味見程度に考えていただければと思います。
計算するにあたっては、一般的な四角い形のワンタッチテントをモデルとし、下記の条件を設定しました。
計算の詳細をツラツラ述べてもつまらないと思うので割愛しますが、仮に特段の断熱処理が施されていないテント生地1枚だけのテントをテント①としたとき、屋根+壁+床+換気から逃げる熱の量(熱損失量)は、内外気の温度差1℃あたり115W(ワット)となります。
いっぽう、断熱材として綿状ポリエステルが5mm程度入ったテント(市販されているテントサウナMORZHをイメージ)をテント②とした場合だと、95Wになりました。なんと逃げる熱が20Wも少ないのです!
…と言われても、何のこっちゃって感じですよね。もう少し突っ込んで言うと、たとえば①②のテントを同じ室温に上げた時、テント②の方が18%少ない薪の量でその温度を維持することができるということになります。
仮に外気温15℃、サウナの平均温度を75℃にするとします。ここで言う「平均温度75℃」は、テントサウナにおいては、天井100℃、座面70℃、床40℃というような環境を一定に保つイメージです。この時、テント①は1時間につき薪を5.4kgくべる必要がありますが、テント②であれば4.4kgで同じ状態を維持できるのです!
…薪が少なくて済む、と言われてもやっぱりピンと来ないですかね。
では、テント②に先程のテント①と同じ薪の量(1時間あたり5.4kg)を投入して燃やした場合、温度の上昇はどうなるか。先ほどの計算を逆にしていくと、「平均温度88℃」と、テント①よりも13℃も高くなるのです。これは天井付近だと110℃を超えるような状態でしょうか。
このように言えば、サウナ好きの方には「断熱、ヤルじゃねーか」と思っていただけるでしょう(ですよね)。
断熱の使い道
このように、「断熱」とは省エネのためのアプローチであり、高温を狙うためのアプローチでもあります。熱さで評判の「MORZH」の秘密のひとつが、断熱にあるのは間違いないでしょう。
もちろんサウナは熱ければ熱いほど良いというものではありませんし、体感の熱さを湿度でコントロールすることもテントサウナの醍醐味です。
とはいえ冬場は極寒となる北海道上川・空知地方のような環境や、一部のサウナーの究極目標となっている「氷が張った湖に入る(アヴァント)」ような環境でのテントサウナに挑戦するなら、断熱は必須と言えるのではないでしょうか。
『山梨サ活倶楽部』製テントサウナの断熱性能はというと…もし興味を持っていただけるなら、今後開催されるであろう何らかのテントサウナイベントで、ぜひ実際に体感してもらいたいです!いつかどこかの河原でお会いしましょう!
見える化と自動ロウリュ欲
そんな感じで断熱を考えながらのテントサウナ制作をしていると、どれくらい効果が上がっているのか、感覚だけではなく数値でも知りたくなるのが人情ですよね。
となると温度と湿度の測定となりますが、サウナのような高温環境で測定できるデジタル湿度計は高価な業務用に限られてしまうため、試行錯誤の結果「サウナ室に温湿度センサを設置し、マイコンを経由して、サウナ外のパソコンでログを取る」という手法に至りました。
この手法により、上のグラフのように、10秒毎の座面の温度と絶対湿度(センサからは相対湿度が出力されるのでTetensの式を使って計算させています)のデータを取る事に成功しました。
そして、こうして温度湿度が見える化されると、今度は「温度湿度に応じて自動でロウリュされるようにしたいな…」という欲望が浮かんできます。
「いやテントサウナなんだから好きにロウリュして湿度上げろよ!」と思われるのはごもっともなのですが、自動でできるようにしたくてたまらなくなってしまったのでしょうがない。
最初は水頭差を利用した点滴ロウリュや、シェラカップ(アウトドア用のメタルカップ)の底に細工をして徐々に水が垂れる装置なども作りました。それぞれに長所短所があるのですが、あくまで「一定間隔で水を垂らす装置」で、温湿度と連動するわけではなかったため、結局最終的には温湿度センサと電動ポンプを連動させた「全自動ロウリュ装置」を作ることにしました。
これができるまでにも様々な試行錯誤があったので開発過程も書こうと思いましたが、長文になりすぎるのでまた別の機会にさせてください。
自動ロウリュが発動するトリガーは、「絶対湿度g/㎥」(空気1㎥に存在する水蒸気の重さ)を基準としました。温度変化が激しいテントサウナにおいて相対湿度単体では意味がないためです。
するとその先には、「絶対湿度が何g/㎥を下回ったら動かす?」「ポンプは何秒間動かす?」「大量に1回だけ?」「少量を複数に分ける?」「分けるならその間隔は?」というような、たくさんの設定ポイントがある事に気づきます。
最近では、トリガーを「絶対湿度」ではなく「空気の持っているエネルギー」にした方が?とかも思っていたり。温度が高い時はそれ以上湿度がいらなかったりする(体感温度が上がりすぎて入れなくなってしまう)んですよね。サウナは悩ましい。
そんな風に、装置を作ってみて改めて実感しましたが、自動ロウリュは奥が深く、また色んな可能性があるなと思っています。
製作費用は3000円くらい、プログラミングもほぼ未経験だった自分が作った稚拙な装置でもここまでできるのなら、業務用の装置はどういう仕組みで、どう制御されているんだろう?どういう事ができる余地があるんだろう?俄然興味が沸いてきますね(これも「サウナに関するニッチな議論」の一つになりそうです)
自動ロウリュの可能性
昨今では、セルフロウリュ可能な施設が増えてきています。もちろん我々も大好きですし、とてもありがたく楽しんでいます。でもそれと同時に、自動ロウリュを導入する施設も増えていくと思っています。
セルフロウリュには、利用者側のスキルとモラルが要求される側面が少なからずありますよね。かける水の量を加減しないとサウナ室が熱くなりすぎたり、石が冷えすぎてしまったりします。慣れている人は様子を見ながらかけたり、隠れた熱い石を探したり、熱が育つのを待ったりできるかもしれませんが、そうこうしているうちに慣れてない方が入ってきてジャバ〜…なんて事も。
施設にとってみてもセルフロウリュを可能にする事のコストとリスクは少なくないように思われますし(だからこそ可能にしてくれている施設はありがたいです)、この情勢で人力のアウフグースサービスの提供ハードルも上がっている(だからこそ…です)事などを考えると、自動ロウリュを採用する合理性は高まっているように感じます。最近はisnessのような、比較的コスパに優れた自動ロウリュストーブもありますし。
(ところで、セルフロウリュできる施設でも、一定時間にかけられる水の量を決めているところも良くありますよね。これって見方次第では、人間という注水装置を使った自動ロウリュとも言えるなと笑)
そんなわけで、我々が実際に装置を作ってみた中で感じた自動ロウリュの可能性、やりたいこと、やっていることなどいくつかあげてみたいと思います。
(酔っ払いの素人オジサンの戯言なので、話半分でお聞きください)
「変化をつける自動ロウリュ」
湿度センサが備えられている施設サウナの中には、設定された相対湿度を保つように自動ロウリュのタイミング、回数、頻度をコントロールしている所もあると思います。
そのように、ベースとしては「湿度を一定に保つ」ための自動ロウリュを行いつつ、例えば時間帯によって湿度を上げてみたり、あるいはあえて(ロウリュ回数を抑えて)下げてみたり、イベント的に変化をつけてみるのも面白いかなと思っています。
「有名熱波師セッティングロウリュ」
アドベントカレンダー1日目のうだ(宇田蒸気)さんが、我々のテントサウナでロウリュをしてくれた際、「少量ずつのロウリュを頻繁に長時間続け徐々に湿度を高める」という事をされていましたが、その時に「このタイミングと量をプログラミングで設定すれば”自動宇田蒸気”が作れるんじゃ」と思ったりしました。
そんな感じで、有名熱波師さんに自動ロウリュをセッティングしてもらい、「自動○○」みたいな感じでイベント的に稼働させるなんて事ができたりするんじゃないかなと。アロマの使い分けができたりすると、より面白いですね。
(少し違うかもですが、なごみの湯さんで「ニューウイングの吉田支配人&マグ万平さんによるセッティング」というイベントをされていましたね)
「音楽連動ロウリュ」
ニュージャパン梅田店などでは自動ロウリュ時に音楽が流れると思いますが、これを一歩進めて「曲に合わせた自動ロウリュ」ができないか?ロウリュでグルーブを作り出せないか?と考え、実際に試してみました。
#自動ロウリュ をバージョンアップ。まずはランダムで2曲流れる仕組み。
たまにタイミングズレたり音楽鳴らなかったり…動く機械が増えると色々難しいナ pic.twitter.com/9zxAWdeoWA— はま@山梨サ活倶楽部 (@yamasa_club) May 31, 2020
スピーカをテントの床に設置し、70~90秒くらいにカットした曲の「合いの手」的な部分に合わせてポンプを動かしています。自分はさほど音楽に明るくないため選曲もロウリュ発動タイミングのセンスもイマイチかと思いますので、ぜひ音楽好きの方に設定していただきたいです。
ポンプと電圧が一緒だったのでなんとなく買ってみたLEDライトも連動させてみましたが、本気でやるなら本格的な照明機材、レーザー、スモーク、プロジェクションマッピングなどと連動させる事もできると思います。
アッパー系のみならずチル寄りな演出とかもできそうですし、同じくアロマも連動できたりするとより面白いですね。音楽ライブなどの演出をされているような方が取り組めば、かなりすごい事ができる気がしています。
「手動コントローラによるDJロウリュ」
先ほどの音楽連動ロウリュはプログラミングですが、こちらは人が音楽に合わせてコントローラーを操作するバージョンです。DJ機材的なイメージですね。
コントローラーはスイッチでもツマミでも何でも良いのですが、我々はヴィジュアル重視でレーザーハープ風(某平沢進先生リスペクト)のものを作ってみました。
レーザーを遮るとロウリュ用ポンプが動いた。とりあえずレーザーハープロウリュの仕組みは完成!
どんな筐体にすべきか悩む。やっぱり白樺をくり抜いたり?w#手動ロウリュ #テントサウナ pic.twitter.com/APNiTdLgxI
— はま@山梨サ活倶楽部 (@yamasa_club) June 24, 2020
細かいことを言えば、コントローラーを操作してから水がストーブに到達するまでに若干タイムラグがあるので、DJの慣れとセンスが必要ですね。
コントローラーの強弱と注水量を連動させて、ボリュームノブ的な感じにしてもよりDJっぽいかもしれません。曲の盛り上がりに合わせて水量を強くするとか。
電池切れや故障によりロウリュしっぱなしになってしまう、熱に強い筐体が必要、レーザーハープ形式だとスモークを焚かないとレーザーが見えない…など課題も多く更なる検討が必要ですが、上手く使えば結構盛り上がるんじゃないかと。
もはや自動なんだか手動なんだか訳がわからないですし、普通にロウリュしろやっていう気もしますが、まあそこは。
「バイタルロウリュ」
ぷり男さんの記事を読んでひらめきましたが、バイタルセンサと自動ロウリュを連動できれば、「心拍数や呼吸に連動したロウリュ」ができますね。黄泉の国と繋がるための布石になるかも。脳波センサとかと連動させたりもできるんだろうか?ヘッドバンドびしゃびしゃでしょうけど。
書いてから知りましたが、現在開催中の「NAKED SAUNA」は「バイタルセンサーに合わせたプロジェクションマッピング」の演出をされているとのことで、上に書いた「音楽連動ロウリュ」と合わせてかなり近いアプローチですよね。
今後サウナはサイバーパンク化していきますね!
最後に
これからサウナはどのように進化していくのでしょうか。
今日の「クリスマス」にしても、その起源から様々に変化し続けて、現在の形で祝われているものだと思います(そもそもはイエス・キリストの誕生日じゃないですしね)。
サウナも同じく、現在進行系で変化し続けていると思います。
ここ日本においては、残念ながら失われていくサウナもある一方で、たくさんの方々が新たなサウナを作り出そうと動いています。テントサウナオーナーも増えています。皆それぞれの工夫を凝らして、良いサウナにしようと試行錯誤しているはずです。これからどんなサウナに入れるのか、とても楽しみです。
2021年は色々なサウナを自由に楽しむことができて、その事に今まで以上に感謝できる、良い年になりますように。
それじゃ皆さん、来年の作戦考えようぜ!
面白い記事でした! 皆さんに送りすぎて今月送れるトントゥが27しかないことが悔やまれます! 熱電導率なんて水と空気、鉄くらいしか気にしたことなかったです。 8割理解ですが面白く読めました!
他の方の記事も振り返られる構成になっていて、とても面白かったです。外気温や水温に連動してバランスを考慮した自動ロウリュなんかも面白そうだなと思いました😆
丁寧な解説でなんとなく断熱の事が分かったような気がしました。難しすぎて完全には理解できませんでしたが。また時間をかけて読んでみます。面白い記事ありがとうございました。
また煉獄に入りたいです!
最高でした!断熱にメリークリスマス!
噂には聞いておりましたが変態すぎ、素晴らしいです。勉強になりました。
断熱に(≧∇≦)/□☆□\(≧∇≦ )カンパーイ!!
音楽連動ロウリュの動画が面白すぎて♪
リンクありがとうございました!断熱材の足しにしてください!
温度湿度のグラフを見てて、あ〜これ心拍と一緒だなあと、思ってました。例えば最近流行りのソロサウナの施設なら、個人のバイタルサインと連動とか、それぞれ好みのセッティングを楽しむのもいいですね〜。サウナって本当に色んな楽しみ方があるんですね。ビックリしました!
常に進化し続けている煉獄テント⛺サウナのアイディアの源は、限り無い追究心✨と楽しむ心🎶が大切ですね🎵
面白かったです😊サ室のコンディションの維持は難しいものだなと。音楽連動もいいアイディアですね。
断熱についての説明が分かりやすかったです☺️さすが断熱マニア🤗
夢がひろがりんぐ。
自動ロウリュにおまかせしたい派としては面白かったです。
楽しかったです!そろそろ誰か趣味で熱損失計算する人が出てくるかな~と思ってましたが、すでにはまさんがされてたんですね。ニヤニヤして読みました~(o^^o)今後、益々の発展がありますように。
素晴らしい記事を読ませていただき、ありがとうございました😊これからもサウナの可能性の模索、楽しみにしています!
後れ馳せながら記事を読ませていただきました。 DIy、断熱ロジック、プログラミング、全てがツボで大変面白くよませていただきました。 これからも投稿楽しみにしてます。 ありがとうございます!