わたしはごきげん第7回「わたしは、汗ソムリエ」
毎日のようにサウナに入る、サウナイキタイポスターでもお馴染みの清水みさとさん。サウナに向かう途中やサウナ室でトラブルに見舞われても、大丈夫。むしろラッキー。生活の中にちりばめられた「ごきげん」を集めて過ごす日々を綴る、今日も一日がちょっと楽しくなるエッセイです。
わたしはサウナで汗を舐める。
おすすめは、肩の汗。
ほっぺの汗を肩で拭うふりをして、ぺろっとひと舐めするのがいい。
そうすれば、誰にもバレずに舐められるから。
汗は舐めても、品性だけは保ちたいのだ。
とりわけカラカラに乾いた昭和ストロングの激熱サウナで、真実の汗を舐めて欲しい。
昨今、ロウリュができるサウナが圧倒的市民権を得てるけど、サウナ室に湿度があると、汗に水分が混じって生半可な汗になってしまう。
乾いたサウナは肌に負担がかかるけど、純度100%の混じり気ない汗が生成されるから、汗を舐めるならやっぱり昭和ストロングに限るんだ。
そう。かくいうわたしは、汗ソムリエ。
汗を舐めて己の体調を確かめる。エビデンスはありません。
汗の味、それは一概に言ってもさまざまで、白って200色あるのとおんなじように、汗って200味あんねん(被験者わたし)。
今日は、流れる汗が涙のようにしょっぱくて、体が泣いているみたい。
そういえば昨日の夜、ダイエットのために我慢していたラーメンを解禁して、麺は増量、餃子追加で、スープも一滴残らず飲み干したことを思い出す。
我慢による欲望肥大により、ほどよい量を平然とはみ出していくのが恐ろしい。
わたしもおいしい、からだも嬉しい、そんな高カロリーなのにハッピーなものってないのかよってひとりごちながら、サウナ・水風呂・休憩を4セット繰り返し、わたしの汗はぐんと水に近づいた。
塩抜きしてうまいもの、1位数の子、2位わたし。
昨日の罪悪感が吹っ飛んだ。
余分なものがなくなって、シンプルになったわたしは体も心も弾むように軽い。
心なしか、顔はシュッと、目はぱっちり。むくみが取れたその人は、自信に満ちた顔つきでわたしにむかってニコッと笑った。
汗ソムリエは門外不出の隠密行動。誰にも悟られてはいけない。
「汗を舐める」。はたから見れば奇妙な行動かもしれないけれど、そんなことにもおもしろみがあるんじゃないかと無限の可能性を張り巡らせて、わたしは今日もうきうきしている。