わたしはごきげん第5回「人生の配牌と捨て牌」

わたしはごきげん第5回「人生の配牌と捨て牌」

毎日のようにサウナに入る、サウナイキタイポスターでもお馴染みの清水みさとさん。サウナに向かう途中やサウナ室でトラブルに見舞われても、大丈夫。むしろラッキー。生活の中にちりばめられた「ごきげん」を集めて過ごす日々を綴る、今日も一日がちょっと楽しくなるエッセイです。

大垣サウナではじめて雀卓をみたとき、緑色をした机が正方形のサッカーコートみたいだと思った。
サッカーでゴールを決めるのは難しいけれど、このコートなら私もかっこよく、それも日本代表ばりのゴールを味わえるかもしれない。

つまり「ロン」。この正方形のコートで、「ロン」とか言いたい。

麻雀のルールも何もわからないのに、あっという間に妄想だけはすくすく育って、わたしはほんとうに、うれしくなってきた。
妄想力に定評あり。そうやって、妄想と現実があやふやになったら、もう絶対に行動したほうがいいと思ってる。

家に帰るや否や、「ただいま」のかわりに「麻雀やりたい」と言っていた。今日、一体全体何があったんだよって感じだけど、わたしは何かやりたいことが見つかると、頭の中がそればっかりになるほんのり厄介な性質を持ち合わせていて、おかげで翌日には友人たちを呼び麻雀を始めることに成功した。

家にあった折りたたみの雀卓で(あるなんて知らなかった)、手積みで17列×2の牌を並べるところから始まった。こどもの頃からピアノを習っていて、指が結構長くて手がでかいもんだから、軽々手積みができちゃって、みんな驚いていた。
この瞬間ほど指の長さに感激したことって、後にも先にもきっとない(ピアノの先生に怒られる)。

あっという間に麻雀のルールを覚えたわたしは、いっちょ前に勝って「ロン」とか「ツモ」って叫んでいた。うれしさのあまり大きな声になってしまって、全然クールにあがれない。いつかわたしも大人っぽく、あがれる日がくるのだろうか? それはそれでちょっぴり寂しい気もするけれど。

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小さいころから夜が苦手で、今も24時なんてちょー眠い。21時以降に観る映画はほぼ全滅な勢いで寝落ちてしまうし、差し迫る試験や受験の前だって、徹夜ができた試しがない。早寝早起きの健康優良児。そんなわたしが深夜の3時まで夜更かししてしまうほど、麻雀はわたしを虜にする。

麻雀を覚えたわたしは、もう覚える前のわたしじゃない。
毎秒毎秒、自分、更新中。


そんなニュー清水は、街のあらゆる場所に雀荘を見つけるようになった。都民の中でもだいぶ散歩している方だけど(みさと調べ)、雀荘がこんなにあるなんて全くもって知らなかった。

ある日、スパ・アルプスへ行くと、「全自動麻雀無料」と書かれた看板がでかでかと掲げられているのに気が付いて、驚いた。大好きな草加健康センターにも、数年前まで麻雀ルームがあったらしい。こればっかりはさすがに悔いたけど、新しいことに触れるたび、どんどん視野が広がっていく。そうやってわたしは些細なことからぐんと世界を広げていくのだ。

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麻雀はサイコロで親を決め、順番を決める。ひとつずつ決められた牌を取り、14個の中から捨てる牌をひとつだけ選択する。ひとつずつひとつずつ、積み重ねるように、自分で自分のこれからを選択する。小さな選択の連続が、人生を可視化してるようで、不思議な気持ちになっていく。

捨てた牌と選んだ牌が丸見えだから、あーあ、捨てなきゃよかったと思ったりもするけれど、進むんだ。進め、進め。あがってもあがらなくても、同じ局面に出会うことはきっとない。人生だってそうだもん。

わたしはわたしの人生の、配牌と捨て牌に満足している。だから、ありがとう、わたしの選び抜いた運命さん。

この正方形の小さなコートで、今日も「ロン」。

ああ、なんてたのしいんだろう。

※『サウナのぷりンセス』(トラツグミ出版 )に掲載されたエッセイを加筆修正しました)

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2024.11.04 08:46
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