わたしはごきげん第6回「完璧じゃないものも、愛おしい」
毎日のようにサウナに入る、サウナイキタイポスターでもお馴染みの清水みさとさん。サウナに向かう途中やサウナ室でトラブルに見舞われても、大丈夫。むしろラッキー。生活の中にちりばめられた「ごきげん」を集めて過ごす日々を綴る、今日も一日がちょっと楽しくなるエッセイです。
わたしの前髪は短い。
眉毛よりもうんと上にあるそれは、その辺にあるハサミでザクザク切る。
ときどき、調子に乗って切りすぎてしまうこともあるけれど、髪の毛は伸びるから大丈夫。うまく切ろうと欲をかくと、手作り感が損なわれて、きれいに揃ってしまうからいけない。わたしはこの絶妙にガタついた短い前髪に愛着があるのだ。
美容院で切ってもらうと、ピチッと整列した美しい前髪が鏡に映って、少し切ない。
だからいつも、「前髪は大丈夫です!」と元気に伝えることを忘れないんだけど、それでもときどき切られてしまうこともある。でもまぁそりゃそうだよなって一応納得するわたし。だって、このガタガタっぷり、手を出したくなるのが自然の摂理。
短い前髪によってあらわになるのは、わたしの顔面に腰を据えた極太眉毛だ。
佇まいが、ドン。
この眉毛、虫を捕獲したことだってあるもんだから油断も隙もありゃしない。どうか虫だけはやめてほしい。眉毛をととのえるって思ってるより難しくて、剃りすぎて麻呂になって以来、わたしはもういじらないと決意した。ザッツ・ナチュラルボーン・ゲジゲジ眉毛。
人相が変わるくらい、顔の中で相当重要なポジションを担っている眉毛が、本当にこのままでいいんだろうかと何度も考えたことがある。
自分をサウナでととのえてばかりいず、眉毛もちゃんとととのえて、さすがにそろそろ垢抜けたほうがいいのかなって。
それでもこの極太眉毛を褒めてくれる人もいて、わたしは躊躇してしまう。
たいていそれはサウナで出会うひとたちで、避けられない「ノーメイクinサウナ」でとびきり輝く我が眉毛である。
人生の大半をサウナで過ごしているわたしにとって、宝といっても過言じゃない。
やっぱりだめだ、眉毛だけはととのえてなんていられない。
わたしはこの眉毛を、なにがなんでも守るんだ。
今日も鏡にむかって、おはよう、わたし。
短い前髪と極太眉毛の、なんたる茶目っ気。そんなわたしに、ぶすっとした顔は似合わない。
わたしにだって色々あるし、悲しいのに、泣きたいのに、なんだかふふっと笑ってしまった。
そうそう、心は一旦置いといて、まずは笑ってしまえばいい。心はあとから追いかけてくる。
わたしはわたしを見るたびに、なんだか元気が湧いてくる。ガタガタしたり、ゲジゲジしたり、完璧じゃないもののほうが、たぶん、きっと、愛おしい。
わたしは、そんな自分が大好きだ。
そう思える自分でずっとずっといれたらうれしい。