サ活・イン・台北
毎日交代でサウナ記事を書いていく毎年恒例企画のアドベントカレンダーにて、2021年に「1ヶ月毎日同じサウナに通って「常連客」を目指す」、2022年に「あかすりで天国へいこう」を執筆したT5さんによる偏愛サウナ連載。
台湾へ行くことになった
9月某日、わたしはひとり、台北にいた。
応援しているK-POPアイドルのファンミーティングに参加し、かわいいカタコトの中国語を聞くためである。
そんなことのために単身で飛行機に乗るなんてどうかしていると思う方もいるかもしれないが、わたしのフットワークはふんわり名人より軽いのだ。
新千歳空港から桃園国際空港までは約4時間。
9月の気候はだいたい沖縄と同じだ。韓国のサウナで味をしめたわたしは、今回も台湾のサウナを経験してやろうと腕をぶん回していた。
事前の調査によると、台北は男性専用サウナがほとんどで、女性が入れるサウナは2軒しかないようであった(もしかするとわたしの調査が甘いだけで他にもあるかもしれません……)ため、今回2泊3日の弾丸スケジュールだったのだが、せっかくなのでどちらのサウナにも行くことに決めた。
1日目の夜、サウナへ行く前に士林夜市へ寄ることにした。
ご存じの方も多いと思うが、台湾でいちばん有名な夜市だ。そのため日本人観光客も多く、あちこちから日本語が聞こえてくる。入国審査とホテルのチェックインですでに言葉の壁にぶつかり、粉々になっていた心をここで回復させようという魂胆だ。
士林夜市に到着すると、入口に横たわり高速で頭を上下させている男性がいた。
台湾には物乞いが多いよ、と耳にはしていたが、実際に出会うとかなりの衝撃であった。Yahoo!知恵袋で調べると「台湾の物乞いは職業のようなもので、皆かなり稼いでいる」「最新のiPhoneを持っている人も多い(なので、そこまで胸を痛めなくても大丈夫ですよ)」と書かれていたが、感受性が強めなわたしの心はさらなるダメージを負った。
これがカルチャーショックか……。
喬莉女子三溫暖 (JULY LADY PLAZA)
1件軒目は士林夜市からも近い「喬莉女子三溫暖」へ行くことにした。ちなみに三溫暖は中国語でサウナという意味だそう。
入浴料は600NTD(ニュー台湾ドル)であった。(*2023年11月現在1,000NTD=4,700円くらい)日本語も英語も伝わらなかったが、受付の女性が紙とペンで丁寧に説明をしてくれた。あかすりやマッサージのコースもなどもあるようだったが、メニュー表は当然中国語表記であり、緊張で翻訳アプリの存在を忘れていたわたしはどれがどれだかわからず断念した。
台北のサウナも韓国のサウナと同じく、スタッフのおばちゃんが施設内を案内してくれた。
ロッカーはそのおばちゃんが施錠・管理してくれるシステムで脱衣所から浴場までは身体にバスタオルを巻いて移動、サウナ室では頭にタオルを巻くかシャワーキャップを被るのがルールのようだ。
こういったシステムやルールもそうだが、ところどころやたらゴージャスな内装や、年季が入りまくっているパウダールーム、日本では見たことがないようなデザインの館内着から異国情緒を感じてクラクラした。
浴場内はわりと狭めだったがかなりすいていて、唯一の利用客である地元のおばさま数名は皆中央に集まって談笑していたので、ひとりのわたしは転校初日のような寂しさを勝手に感じていた。
おばさまたちは、浴場内に設置されている給水機から、水ではなさそうな謎の飲み物を汲んで楽しそうに飲んでいたが、一体あれはなんだったのだろう……。日本だったら「わたしもほしいで~す!」と言えたが、ここは台北。うまくコミュニケーションをとる自信も勇気もなかったため断念し、持参していた水を飲んだ(かわいそう)。
また、浴場内にはドライサウナ、スチームサウナ、あつ湯、水風呂のほかに、どでかいプールがあって、心の中にまだ存在している小学3年生の自分が歓声を上げた。が、誰もプールを利用しておらず、突然やってきた外国人のわたしがプールで泳ぐのは違うか……と自意識過剰になってしまい、断念した。断念しまくり回だ。
ドライサウナはめちゃくちゃ低温だったため(60℃くらい)、スチームサウナ(こちらは90~100℃くらいに感じました……最高)と水風呂(3℃と表示されていたが、おそらく15℃前後)を交互に3セットした。
ちなみに水風呂はスチームサウナを出てすぐのところにあり、地続きとなっているため何度か転げ落ちそうになったので、もしわたしのように運動神経があんまり良くない方が訪れる際はかなり気をつけてください。
入館してまだ1時間も経過していなかったが、しかも緊張と孤独感でととのうことはできなかったが、「台北のサウナを経験する」というミッションをクリアできたので帰ることにした。
平日の仕事帰りのようなスピード感だったが、「もうわたしは台北のサウナを経験した側だぜ……」という謎の満足感があった。早々にロッカールームに戻ってきたわたしを見てスタッフのおばちゃんが「もう帰るの!?」「ごはんは!?」「仮眠しないの!?」と驚いていた。
伊莉莎生活会館 (ELIZA LADY PLAZA)
2日目の朝、早起きをして2軒目のサウナ、「伊莉莎生活会館」へ。
最寄り駅である中山國中駅を降りると、大戸屋や吉野家、すき家などの見慣れた看板があり、すき家の角を左折すると伊莉莎生活会館の派手な入口が現れる。
金色の回転扉を抜けると、受付のにこやかな女性スタッフさんが日本語で「日本人ですか?」「サウナですか?」と聞いてくれたので、日本語で話しかけてもらえるの嬉しいな~と思っていると、突然館内アナウンスで「日本人がきました(中国語)」と館内全体に周知をされてひっくり返りそうになった。
入浴料は700NTDで、やはりスタッフのおばちゃんが施設内を案内してくれるシステムだった。1軒目よりも館内・浴場が広くて利用客も多く、年齢層も幅広い。日本のスーパー銭湯に似た雰囲気があり、個人的には台北で初サウナをするなら伊莉莎生活会館のほうが取っつきやすくておすすめかもしれない。
ホテルにお風呂セットを置いてきてしまったため備えつけのものを使ったのだが、ボトルに漢字で「沐浴乳」「洗髪精」「潤絲精」と書かれていたため一瞬ひるんだ。が、冷静になってよく見たらなんとなくわかる。生まれて初めて漢字が読めることのありがたみを感じた。
三種類のドライサウナ、スチームサウナ、二種類のお風呂、水風呂があり、全部入ってみたがドライサウナは違いがわからないくらいどれもぬるかったため(上段でも60~70℃くらいだと思います)、こちらでもスチームサウナと水風呂(10℃ちょっとだと思います……サウナはぬるいのに水風呂はめちゃめちゃキンキン)を交互に3セットした。
スチームサウナは1軒目よりも温度が低いように感じたが、かつてすすきのにあったスパ・サフロを彷彿とさせるスチーム量(50センチ先までしか見えない)だった。
ここで気がついたのだが、台北の浴場にはイスが全然ない。日本のサウナファンは水風呂のあとに休憩を挟んで「ととのった~」とする方が多いと思うが、台北では浴場内で休憩している人をあまり見かけなかった。
お風呂の淵に座るのも失礼かも……でも床に座るのもな……と思い、迷走した結果一番温度の低いサウナ室に入って休憩することにした。
おそらく50℃前後だったかと思うのだが、室内はまあまあ混みあっており、ここが一番人気のサウナ室であるようだった。台北は暖かい気候だから、低温サウナが人気なのかな……と思いつつ隣に座っていた方に目をやると、100℃超えサウナさながらの大汗をかいていて「どうして!?」と思った。
どうして!?
伊莉莎生活会館には、食事スペースや美容室、ネイルサロンなども併設されており、みんな館内着に着替えてゆったりと過ごしていた。
わたしももう少し館内を探検してみたかったし、サウナ室で台湾女子たちが「ここのパパイヤミルクはうまい」というような会話をしていたため試してみたかったが、ファンミーティングの時間が迫っていたため、後ろ髪を引かれる思いで退館することに。使用済みのタオル類を返却する場所や、パウダールームの場所、靴を履き替えてよいエリアなどがわからずオロオロしているわたしにもスタッフの方々は優しく真摯に対応してくれた。謝謝……。
ホーム(サウナ)シックにかかる……
台北のサウナに行くことはできたものの、慣れない地で思うようにコミュニケーションがとれず、ごはんも食べられず、また、あまり考えないようにしていたが、初日の物乞いおじさんの姿が常に頭の片隅にあり、わたしは完全にバッドに入っていた。なにもかもが不安だ……つらすぎる……日本に帰りたいよ~~~!!!!!
そんな気持ちを抱えながらも、今回の大目的であるファンミーティング会場へ行くと、韓国人の知り合いのYさんと会うことができた。Yさんとは前月に開催された韓国でのファンミーティングで、推しのトレーディングカードを交換しただけの関係性だった。
が、ホームシック真っ最中のわたしは知っている人がいるだけで大親友に再会したような気持ちになってしまい、Yさんの肩をバシバシ叩いて声をかけた。するとYさんも同じくひとりで寂しい思いをしていたようで、二人で大盛り上がりしてハイタッチした。
わたしの拙い韓国語で会話をしたのだが、コミュニケーションがとれるだけでこんなに楽しいなんて……。終演後、一緒に臭豆腐を食べに行って二人で「クサ~~~!!!」と言いながらゲラゲラ笑い、今回の旅行で初めて誰かと共感し合える喜びで胸がジーーーンとした。「臭いね」と話しかければ「臭いね」と答える人のいるあたたかさ……。
同時に、台北のサウナのぬるさがフラッシュバックし、日本のサウナのありがたみも感じた。
ホームサウナでゆっくりお湯につかり、熱いサウナ室でヌシの長すぎる近況報告を聞き、ゆるゆるの館内着で食事処のカレーを食べることって、平凡すぎてもうつまらないような気がしていたが、このときわたしはホームサウナがとても恋しかった。
あの平凡さって実はめちゃめちゃ幸せで豊かなことだったんだ……!今まで当たり前だと思っていたことは決して当たり前ではなかったんだね……!!!
海外のサウナは新たな発見があっておもしろいし、文化の違いを感じてとても刺激的だけど、ストレスなくただただサウナに没頭できる、ということが自分にとって最重要項目だったのだ……と今回の旅行で再認識することができた。
これからもこの気持ちを忘れずに生きていきたい。
帰国後、この話を友人にしたら台湾でそんなことを悟る人珍しいと言われた。とりあえず、次回の海外旅行は絶対に誰かを連れて行く。
来月、30数年ぶりに 台北に行きます✨ しかも同行者がキャンセルでひとり旅に🤣 でも、せっかくなので初海外サウナにチャレンジするつもりです✌️詳しいリポート、参考にさせていただきます😊
本当にいつも楽しく読ませてもらっています!! 今回も貴重な経験を共有いただき、かなり勉強になりました! 台湾のサウナは、なかなか独自の文化(入浴ルールや施設の設備等)があり、難しいですね!笑 毎回思いますが、T5さんの記事は最高です!! ありがとうございます!!
外に出て違いを知るってやっぱり大切なことだと思いますよね☺️T5さんの文調はワタシ的にどストライクなのです⚾✨これからも楽しみにしてまーす❗
楽しく拝読させていただきました! 初めて訪れるサウナで感じる不安に加えて 異国となると…でも行ってみたい気もあって。 ヒヤヒヤしながら開拓と克服する感覚が たまらなく良かったりする訳で。 次のレポートも楽しみにしております。
情景が目にうかぶ文章、楽しく最高でした!また読みたいです!
ちょうど台湾にいます😅 伊莉莎にいこうと思っていて下見(場所)をしましたが、都合が合わなくなってしまい次回のお楽しみへ。、 読んでいて、なるほど〜と予習になりました!
台北は男子向けのサウナは多数たしかにあるんですが、色々アレな施設が多いので、女性目線が身に沁みます
素晴らしいレポートをありがとうございました。 異国の地での心情が伝わる文章。 台湾・韓国サウナを体験してみたくなりました。
異国の地(台湾)でのサ活お疲れさまです。サウナでのととのいが不完全燃焼のようですが、ご友人と会えて時間を過ごせた事が何よりの“ととのい”なのかなと感じた素敵なレポでした。低温でも発汗バリバリのおばさまも謎にみちてますね、笑。なんでなのか気になっちゃいますね〜。
今回も最高でした♥️♥️♥️
ソロ活女子で今回は台湾が舞台になっていて、台湾に行きたいわん〜な気分だった所にこの記事! 私もソロ旅行はするタイプですが、わかる〜その寂しさ!みたいなものも噛み締めながら、面白く読ませていただきました🙌 韓国に推しがいるのも共感ポイント! すっかりT5さんのファンになりました🙌
楽しく読ませていただきました!🎵
T5さん、こんにちは。 あかすりの会も楽しく拝見させて頂きました、 日本在住の台北出身サウナーです!🙌🏻 自分はすっかり日本の高温サウナに慣れてしまったから、地元であっても台湾サウナは行かないです 笑 そして、やはりおっしゃるように、台湾のサウナ専門店は男性専用のイメージが強く、それもあってあんまり行かないようにしていました。T5さんの勇気に感心しました。🥹! 物乞いはびっくりしますよね、私の感覚で言うとコロナ後が特に増えた印象です。コロナ明け、久しぶりに地元へ帰ったら、同じように驚きました。 もしまた機会があれば、夜市は饒河夜市と寧夏夜市をおすすめします。☺️💖
楽しく読ませていただきました。この記事に影響されて来月台湾に行くことにしました。台湾のサウナ見てきます😊
今回のサ活も最高でした~!😚♡ 日本人来たとアナウンスされたくだりで爆笑しました、 天才ですか? 次のサ活も楽しみにしてまーす!!!🤟
台湾で新規開拓されるT5さんすごい👍 おもしろかった!
僕もコロナ前に台湾のサウナに行きました♨️ 大阪のスパワールドに雰囲気が似てるなぁと思いました。 たまに冒険したくなりますよね✈️