サ活・イン・ソウル

みなさんこんにちは！北海道在住の成人女性、T5と申します。
このたび恐れ多くもサウナイキタイマガジンで記事を書かせていただけることになりました。

サウナへ向かう電車の中、お風呂前のトイレタイム、注文したラーメンが出てくるまでの待ち時間など、暇つぶしとしてお役に立てるようがんばるぞ～

明洞黄金サウナ

8月某日、韓国・ソウルへ行ってきた。応援しているK-POPアイドルのファンミーティングに参加し、会場限定で販売されるフォトカードをゲットするためである。そんなことでわざわざ……？　と思う方もいるかもしれないが、わたしのフットワークはユニクロのウルトラライトダウンより軽いのだ。

新千歳空港から仁川空港までは約3時間。ソウル中心部に到着するやいなや友人と合流し、生瀬勝久似のおじさんが焼いてくれる大量のサムギョプサルと1000キロカロリー以上あることが一目瞭然のケーキを星のカービィのように吸い込んだ。

気がつくと、時刻は0時を過ぎている。このまま寝た場合、明日の朝は韓国料理の塩分で顔が二倍の大きさになるだろう。少しでもマシにするため、わたしはサウナへ行くことにした。韓国のサウナを利用するのは初めてだったので、よくガイドブックに載っている東大門のスパレックス、新沙のスパレイのどちらかにしてみようかな～と思いながら歩いていると、宿泊しているホテルのすぐそばで温泉マークを発見した。

めちゃめちゃ光っている。

調べるとここは明洞黄金サウナというらしい。

恐怖のクチコミ

ホテルから徒歩3分圏内ということが最大の決め手となり、入ってみることにした。念のためクチコミを確認すると、

「通常の入浴料は15,000ウォンなのに無理矢理80,000ウォンのあかすりコースにされた」
「謎の小部屋に連れていかれ、ガタガタの眉毛タトゥーを入れられた」

といった投稿を数件発見し、脳からアドレナリンがドバドバ出るのを感じた。
（＊2023年9月現在10,000ウォン＝1,112円くらい）

おそるおそる受付へ向かうと、日本語が堪能なアジュンマ（おばさん） が歓迎してくれた。

「今日はなにをしますか？」
『お風呂とサウナを利用したいです』
「じゃあちょっとこちらでお話ししましょうか」

と、いきなり例の小部屋に誘導され、進研ゼミで習ったところだ！　の顔になったが、そこにはテーブルとイス、コースが記載されているメニュー表が置かれているだけで、眉毛タトゥーをいれるマシンは見当たらなかった。

着席するとすぐにコースの説明がはじまり、気がつくとわたしはVIPコース（250,000ウォン）をクレジットカード決済していた。勧誘うめ～。

お風呂とサウナどころか、あかすり、金箔パック、マッサージもしてもらうことになり、まったく予期していなかった展開に驚きながらも、まあこれも旅先あるあるだよね、と自分を納得させた。

深夜の爆あかすり

このとき自分以外の利用客がいなかったからなのか、それとも250,000ウォン支払ったからなのか、施設内ではつねに受付のアジュンマが付き添ってくれた。

脱衣とクレンジングが終わると、あかすりがはじまるまで湯船で身体を温めるように言われたが、わたしは10秒だけ湯船につかり、あとはサウナに入ることにした。

ドライサウナとスチームサウナがあり、まずドライサウナに入ったのだが、「営業終了した……？」と思うほどぬるく、一方スチームサウナは信じられないほど爆熱であった。温度計がなかったので正確な温度はわからないが、もしも顔面が燃えたらこういう感じだろう……と思うほどの熱さ、というかむしろ痛さであった。

３セット終わった頃、あかすりを担当してくれる黒ビキニ姿のおばちゃんが登場した。

見るからに腕がよさそうである。はじまると実際にありえないほどのあかが出て、おばちゃんは終始「チンチャテバッ……（まじでヤバイ……）」と言って引いていた。

自分の名誉のために記載するが、この2週間前にもあかすりをしているのでわたしが汚いのではなく（たぶん）、おばちゃんの技術が凄すぎるのだ。体感としては全身の表面が3ミリは削られたように思う。

あかすりが終わると時刻は深夜2時になっており、コースの残りは翌日に持ち越してもらえることになった。着替えていると、受付のアジュンマに「明日、22時までに来られたら特別に窯風呂に入れてあげる」と言われ、窯風呂……？と思いつつ、必ずそれまでに再訪することを約束してホテルへ帰った。

外国人専用ドライヤー

推し活・イン・ソウル

翌朝、前日深夜まで暴飲暴食したにもかかわらず、サウナ効果でほとんどむくまなかった。全身の表面が3ミリ削られたからか外気に触れると気持ちがよく、心なしか身体も軽くなったようにも感じる。清々しい気分でファンミーティング会場へ向かい、件のフォトカードをゲットした。

今回の公演では撮影が許可されていたので遠慮なく撮影しまくらせていただいたのだが、中盤で推しがこちらを見て口をパクパクさせていたので、神ショット撮れちゃったんですけど……などと思いながらニヤニヤしていたら、なんとまじでわたしに話しかけてくれていたようで、隣に座っていた韓国JKに「オンニ（お姉さん）！！！」と絶叫された。そこからはなにも記憶がない。

気がついたら心臓を押さえながら地下鉄に乗っておりiPhoneにはパニックになったことだけがわかる、空中をものすごいスピードで撮影した動画が残っていた。

アジュンマとの約束

終演後、盛り上がっているアイドルオタクたちとごはんを食べに行く流れであったが、それよりもわたしには大切な約束があったため、「なんでこんなときにサウナ……？」という皆を無視し、ひとり明洞へ向かった。

22時ギリギリに到着。クチコミの呪いが解けきっていなかったわたしは「アンタ誰？」と言われることも覚悟していたが、普通に覚えていてくださりあたたかく迎えてくれた。

「じゃあ今日は特別に窯風呂に入れてあげましょう」

いったい何がどう特別なのかはわからなかったがわくわくした。

オレンジ色の湯着に着替えて500㎖の水を持たされ、アジュンマと一緒にエレベーターに乗って地下3階に下りると、ドーム型のサウナ、いわゆる汗蒸幕があった。

10人以上入れそうなほど広く天井も高かったが、かなり高温で、おそらく100度近くあったように感じる。正直なところ1分程で（出してください……）と思ったが、せっかくの厚意を無下にできない一心で10分間耐えた。

ドームのなかでは先ほどのファンミーティングがフラッシュバックしてしまい、床にうずくまって絶叫したり、休憩スペースでは突然胸がいっぱいになり、サランヘ……と言いながら号泣したりと、わたしはととのうどころか完全に情緒不安定になっていたが、おばちゃんたちはそんな激キモ状態のわたしを気にもとめず、韓国ドラマを見ていた。

深夜の爆マッサージ

汗蒸幕と休憩を3セット終えると、金箔パックとマッサージをしてもらう時間になり、担当のマダムが迎えにきてくれた。マッサージ台に仰向けになるとさっそく金箔パックが始まった。クレオパトラや楊貴妃がやっていた美容法ということで期待していたが、おでこと頬とアゴに薄くて小さい四角形の金箔を貼り付けられた姿を鏡で見せてもらえるだけで、一瞬で終わった。マダム曰く金箔はお肌にとてもよいとのことであったが、効果は感じられずただただおもしろ顔面になっただけであった。

その後、マッサージをしてもらったのだがなんと施術時間が2時間もあり、気持ちがよすぎあまり序盤で意識を失った。マダムとおしゃべりしようと思っていたのに……今回唯一の後悔した点だ。途中、熱が78度出る夢を見て目を覚ますと、お腹の上に謎の熱い物体を乗せられていた。いったいあれはなんだったんだろう。

マッサージが終わると、ウソのように身体が軽くなっていた。特にわたしは肩こりがひどく、マッサージ師からよく「肩に鉄板入ってるの？」と言われるレベルだったのだが、マダムのゴッドハンドによって驚くほど改善されていた。できることなら週1で通いたいのに、自宅から1000キロメートル以上も距離があるのが本当に悲しい……。

ありがとう明洞黄金サウナ

すべて終わるとアジュンマが かたつむりのパックと韓国のヤクルト、そして自宅から1000キロメートルも距離がある顧客なのにポイントカードをくれた。

この二日間、推しの顔よりも見る機会が多かったアジュンマは、もはや「韓国の母親……？」と思ってしまうほど安心感があり、いつの間にかかなりなついている自分がいた。帰り際はとても寂しく、大学進学で上京する前のような気持ちになってしまい、最後にもう一度挨拶をしようと思ったのだが、アジュンマはものすごい速さでバックヤードへ戻っていった。

朴さん…肩こり、しっかりとります

今まで、行ってみてよかったサウナはたくさんあるが、「明洞黄金サウナ」はベスト3に入るかもしれない。

私はたまに自宅にいるのにもかかわらず「帰りたいよ～」と思ってしまうことがあったのだが、もしかするとわたしの帰りたかったところってここなのかも……と思うほど居心地がよく、ノスタルジーを感じた。正直、日本の施設のような清潔感や、きめ細かな配慮などはあまりないし、サウナの温度はバラバラだし、常連らしきおばあさんが洗い場の中央で仁王立ちになって歯磨きをしていたけれども、誰の目も気にせず、自分が自分らしく過ごせる懐の深い場所であった。

韓国に行く機会がある人はクチコミを恐れずにぜひ明洞黄金サウナへ訪れてみてほしい（もしも、本当に眉毛タトゥーを入れられてしまったらごめんなさい）。わたしはもうあそこのあかすりとマッサージじゃないと満足できない身体になってしまったので近いうちにまた250,000ウォンを握りしめて行ってこようと思う。そして国境を越えてポイントを貯め続けて、絶対に特典の「あかすりサービス」をゲットしたい。