アドベントカレンダー2024 SAUNA IKITAI ADVENT CALENDAR 2024

2024.12.22

ホームサウナとは

さうなびと.

サウナイキタイアドベントカレンダー 22日目の記事です。

「ホームサウナ」

と聞いて何を思い浮かべるだろうか

家の近くのサウナや、通い慣れたサウナ
または自宅にサウナがある方も
いらっしゃるかと思うが、
おおよそ良く行く施設といった感じだろうか...

自己紹介が遅れてしまいました
アドベントカレンダー2024年12月22日を
担当させていただきます。

「さうなびと.」と申します

今、この記事を読んでいただける皆様が

どのタイミングで
どんな想いで

読まれているか

その時、その時の気持ちに
フォーカスして頂けると幸いです

ホームサウナ.

この言葉を聞いて、初めに思い浮かべた施設こそが
皆様の「ホームサウナ」であることでしょう

“HOME”つまりは“家”

仕事や学校、日々慌ただしく過ぎていく
日常から少しだけ解放され、

落ち着ける場所が家である方も居れば
家に帰っても忙しい方も居るかと思います

少なくても私にとっての“HOME”は
安心感と居心地の良い場所であってほしい

月に一度、学校終わりの温泉が楽しみで.

ここからは少し私の過去についてのお話を

私の生まれは福岡県

もともと両親が温泉に行くのが好きで、
小学生の頃からよく温泉へと連れて行ってくれた

金曜日の夕方

駐車場には白の“TOYOTA ガイア”が
いつも停まっているのだ

小学生の頃なんて、まだまだ友達と遊びたい。
そんな年頃だっただろう
そんなこともお構いなしで、連れられて行く

そこで父と広いお風呂に入る
一緒に体を洗い、一緒に湯船に浸かる

そんなひと時.

しかし、一つだけ
一緒ではないことがいつもあるのだ

父はいつも一通り湯船に浸かり終わると
私を置いて
『少しだけ待っていなさい』と
木製扉の部屋へと入っていく
そして数分後に出てくると、
冷たい水風呂に入り椅子に座るのだ

小学校高学年になった頃、
私もその部屋に入ったが、何が良いのか
全くわからなかった

熱くて息もしずらい。
父の隣で冷たく冷やしたタオルを口に当てて...

そんなことよりも、
お風呂上りに大広間で美味しいご飯を食べ、
地下のゲームセンターで
遊ぶことが最高に楽しかった

薬湯の匂いが苦手で.

そして特に思い出に残っている施設が

『薬王寺の湯偕楽荘』だ
ここの特徴はなんと言っても
8種類の漢方をブレンドした薬湯

これが幼いころの私には衝撃であった

店内へ入ったところからうっすらと香る匂い
脱衣所、浴室へと入るとその独特な香りが
ものすごく印象に残っている

そしてここでも父は謎の熱い部屋に入る
しかしここの室内は白く煙がかっている

高温の部屋といい、匂いのするお風呂といい
一体何が良いのか。
そんなことばかり考えながら
いつも様々な温泉へと連れられていた

木製扉の向こう側へ.

そんな幼少期を過ごした私だったが、
中学、高校になってからは全くと言っていいほど
温泉へ行かなくなった

思春期とでも言うと聞こえが良いかもしれない
なぜ行かなかったかは、あまり覚えていない

親と話すのもどこか恥ずかしいのに、
温泉で裸の付き合いなんて
考えられなかったのだろう

月日が流れ社会人となった頃、
初めての車を買った
ずっと欲しかった車

真っ白のスカイライン

今まで自転車しか無かった私の行動範囲が、
無限に広がった瞬間

毎日毎日遅くまで、

大切に乗った

海沿いの道
少し不気味な峠道

そして特に好きだったのが、深夜の高速道路

何も考えず、ただ無心に走る

車内には車のマフラー音と
買ったばかりのiPodから洋楽が流れる

そんなとき、
ふと頭に浮かんだあの“木製扉”の正体

“サウナ”と書かれた扉

気になって仕事終わりに
小学生の頃に行った施設へ
車を走らせてみる

当時の施設名『レイクサイドホテル久山』ではなく
『久山温泉ホテル夢家』へと名前が変わっていた

ここ数年で、オーナーが変わったのだろう

入口を抜け店内へ

内装・雰囲気はあまり変わっていなかった

昔父と入ったように、
今回は一人で入る

扉を開けると室内には
独特の世界観が広がっていた

徐に空いている一番下の段、
入口の正面に座ってみた

高温の室内、木の匂い、
テレビではバラエティー番組が流れていた
12分計とかかれた異常に針のスピードが速い時計
ブラウン管から流れる音声

そのひとつひとつが新鮮だった
辺りのおじ様方と一緒に、
ゆったりとした時間が流れる

3分も入れなかった
扉を抜け出し見よう見まねで
水風呂にも入ったが
10秒もしないうちに耐えられなくなり、
出てしまった

今の私が見たら、笑ってしまうだろう

さっきまでサウナに入っていたおじ様は、
今は椅子に座って目を閉じている
私は温かい湯船の中から
その姿を横目に見ていた

サウナの魅力に.

しかしその日を境に
サウナが気になり始めていた

もともと温泉が好きな私は、
近所のスーパー銭湯にある
サウナに入る機会も増え
気づけばサウナに入るために
温泉へ行くようになっていた

会社の転勤で何度か福岡を離れた際には
近くの温泉施設へと通い、
出張先ではサウナに行くために
近場のホテルを探した

毎日の暮らしの中で、
嬉しいことや辛いことがあった時には
いつもサウナへと向かっている
そうして自分と向き合い・対話する

昔3分で出てしまった場所のサウナは
当時の面影を残しつつ、
薪サウナが楽しめる魅力的な施設になっていた

昔父が入っていた場所で、
今度は私がサウナに入っている

ホームサウナとは.

効率や合理性が優先される現代社会は、
私には少しスピードが早く落ち着かない

そんな感じがする

目まぐるしく変化する日常

そんな時代に生まれ、仕事をしていると、
慌ただしい日々で
大切なものがわからなくなっていた

いつも通り仕事を終え、
夕方の帰宅ラッシュ前の時間帯

ふと思い立ち『薬王寺の湯偕楽荘』へと
車を走らせる

近くには、大型のスーパー銭湯や有名店舗がある
いつもなら、気持ちが落ち着かない時は
ガツンとくるサウナや、
キンキンの水風呂でととのうのだが、
なぜここへ向かっていたのかは覚えていない

16時を少し過ぎた時間帯

周りを走る車の流れにあわせ、
少しだけアクセルを踏み込んだ
車内にはFMラジオから流れるおしゃれな洋楽

周りを走っていた車は、
いつの間にかいなくなった

この付近は水の綺麗さ故、
夏には蛍を見ることが出来る

駐車場へ車を停め、
懐かしさを感じながら入口を抜ける

数年ぶり

あの時と変わらない店内
変わらない匂い

受付を済ませ脱衣所へ

体をしっかりと清め、白湯へ浸かる

昔入った浴槽、なにも変わっていない
サウナや水風呂も当時の記憶のまま

苦手だった薬湯が、
今ではどこか懐かしく心地が良い

夕方の乾いた風が窓から入り込み、
空はうっすらとオレンジ色に変わり始めている

実家のような居心地の良さと安心感
ここは小さいころから私の事を
見てくれていたかのよう

『おかえり』と言ってくれているような

私は頻繁に実家へは帰る方ではない
しかし帰った時には懐かしく、
慌ただしい日常を忘れさせてくれる

今回はきっと自分の中で、
『帰りたく』なったのだろう

私の中での『ホームサウナ』とは、
こういうことなのかもしれない.