詰め込みサウナ旅のススメ

サウナイキタイ アドベントカレンダー 15日目の記事です。

はじめまして、杉並バイブラーと申します。

簡単に自己紹介させていただくと、2019年に沼津のプロダイバーにサウナの魅力を説かれて以来、どっぷりサウナの沼にハマってしまった30歳男性です。
2021年に「松本湯リニューアルプロジェクト」への参画を経て、本業の傍ら同銭湯で週に数日ほど働くようになりました。
その他にも温浴関係のデザインやグッズ企画、ひょんなことから記事の執筆なども行っている人間です（よかったら、執筆した記事についても読んでいただけると嬉しいです）。

そんな私がハマっているのが「サウナ旅」。
巷では「サ旅」とも呼ばれていますが、要はサウナに入ることを目的とした旅のことを指します。旅先では主にレンタカーでサウナ施設を回っているのですが、私の場合、一日にめぐるサウナ施設の数は多い日では10軒近くと、地元ではまず回らない軒数になることがほとんど。
スケジュールも当然かなりタイトになります。
今回の記事では、そんな『詰め込みサウナ旅』の楽しみ方や魅力について書きたいと思います。

詰め込みサウナ旅を企画するまでの過程

これまで静岡、北陸（石川、富山）、岐阜、九州（福岡、佐賀、長崎、大分、熊本）へのサウナを目的としたサウナ旅に行ってきました（この他にも地方のサウナに入る機会は多々ありましたが、他の訪問理由があったため、それらはサウナ旅という定義からは外れます）。

行き先を決めた理由はいたってシンプルで「行ってみたい施設があるから」。
北陸であれば「スパ・アルプス」、岐阜であれば「田辺温熱保養所」、九州であれば「湯らっくす」など、どうしても行ってみたい！！という施設が各地にあるので、その施設を軸に他に回るサウナを決めていきます。

サウナ施設を探す際には、まずサウナイキタイの検索機能で目的の都道府県を絞り、興味のある施設にGoogleマップ上でピンを打っていきます。
ピンを打ち終わったら位置関係を見ながら巡るルートを考えていきます。
移動時間や食事のタイミングなど細かにスケジュールを立てますが、現地ではあくまで「臨機応変に」をモットーにしています。

筆者のGoogle Mapには約800本のピンがずらり。もちろん全てサウナです

スケジュールを詰め込む理由

サウナを巡るスケジュールは10分単位で細かく設定しています。
道路の混み具合なども加味して多少余裕を持ってはいるものの、超大型施設やお目当ての施設などを除き、すべての施設を満喫するには、1時間程度が必要だと自分では結論付けています。
最低限の時間を確保した上で、いかにたくさんの施設を巡ることができるかが重要と考えています。

スケジュールを詰め込むのは、「せっかく遠出したんだから～」という理由や、純粋に建物そのものを見てみたいという興味もあり、「詰め込みサウナ旅」≒「多くの施設を回ること」とも言えます。
「もっと時間をかけてゆっくり回ればいいのではないか？」と言われれば、その通りなのですが、仕事で時間が取れなかったり、宿泊日数が増えれば当然お金もかかってしまいます。
制限のある中でいかに工夫して多くのサウナを巡るかという点が「詰め込みサウナ旅」の面白さなんです！
スケジュールやルートを考える時間が一番楽しいと言っても過言ではないのです。

詰め込みサウナ旅の魅力とは

これまでの私の経験から、以下の3点が「詰め込みサウナ旅」の魅力なんじゃないかと感じています。

魅力①：地域のサウナ特性が分かる
魅力②：思いがけない出会いや発見がある
魅力③：温浴施設の方々との話のネタになる

ここからはそれぞれの魅力について、岐阜サウナ旅でのケースを例に語っていきたいと思います。

魅力①：地域のサウナ特性が分かる

魅力の1つ目は「地域のサウナ特性が分かる」ことだと考えています。
その地域で数多くのサウナを回っていると、似通った点や共通点に気づくことがあります。
例えば、大分県の別府方面では温泉蒸気を利用した「むし湯」と呼ばれる温浴法が多く用いられていたり、石川県金沢市の銭湯では「肌に優しい」という理由でスチームサウナを採用する施設が多かったり（某石川県銭湯のご主人談）、もっと細かい点ではサウナの施工業者が一緒だったり、ストーブの種類が同じだったり。
ここではこれまで知り得た特性の中でも、感激・感心したケースを1つご紹介します。

＜岐阜県：薬草文化＞
岐阜県といえば、「田辺温熱保養所」や「恵みの湯」に代表されるように薬草の活用に長けた温浴施設が数多く存在します。
これらの施設では、霊峰伊吹山の薬草園で栽培された薬草をお風呂やサウナ等に活用しています。
伊吹山は岐阜の薬草産地として有名で、奈良時代からこの地で育てられた薬草やハーブが天皇に献上されており、後の戦国時代では織田信長がこの地に広大な薬草園を作らせたことでも知られています。
冬には日本海側からの季節風の通り道となっており、この季節風は「伊吹おろし」とも呼ばれます。

この厳しい環境下で育てられた薬草は香り高く、様々な効能が期待でき、岐阜県では古くから薬草は身近なものとして生活に取り入れられてきました。
だからこそ今でも多くの温浴施設で薬草が用いられており、さらにこれらの温浴施設では、より薬草効果や香りが発揮されるように、独自の工夫を施している施設も多いといいます。

田辺温熱保養所では、伊吹山で栽培されたものと自家栽培の薬草を調合して使用している

歴史的背景や地域文化から推察できる点もあるとは思いますが、これらの地域特性は決して施設を1軒見ただけでは分かりません。
その地域で数多くのサウナを回り、実際に見て体験したからこそ分かる特性なのです。

魅力②：思いがけない出会いや発見がある

旅の最中には思いがけない出会いがあるものです。
サウナ旅においても、細かくスケジュールを組んでいても、現地に訪れなければ知り得なかった素敵な発見があります。
この「不意な出会い」を大切にするためにも現地では臨機応変にをモットーにしているのです。
訪れた施設が思いのほか充実していて長居をしてしまったケースや、たまたま通りすがりの施設に入ってみたら素敵だったこともありました。これはサウナ施設に限らず、食事処や観光施設なんかも含まれます。
富山県では世界遺産である五箇山合掌の里に出くわしたり、岐阜県では飛騨高山の自家焙煎珈琲の「イーグルコーヒー」に急遽寄ってみたり、阿蘇では鹿に遭遇したり。そんな現地での素敵な施設との出会いについてもご紹介します。

＜岐阜県高山市：鷹の湯＞
ふらりと訪れた高山市の「鷹の湯」では、あまりの感激から3時間ほど滞在してしまいました。
鷹の湯は、高山市の中でも昔ながらの長屋など風情が残る「空町」のすこし高台に位置しています。
もともとは近くのお寺の中にあった温浴施設でしたが、空町へ移転後に当時のオーナーが買い取ったそうです。
移転してから既に100年以上が経過、お寺時代を含めると300年の歴史があるといいます。

そんな銭湯がとんでもない進化を遂げているのをご存じでしょうか!?
鷹の湯は2022年8月末に露天エリアを新設。
そこにはMOKIストーブを用いた薪サウナや、大きな屋外プールには贅沢にもエプソムソルトを投入！
都内では消防の関係で、薪サウナの新設には大変な調整が必要であると聞いたことがあります。
しかし、一般家庭でも薪ストーブが使用されているこの地域では、薪サウナの導入に際して「特別な苦労はなかった」と店主の清水さんは話してくれました。
薪も自分でくべるスタイルで、銭湯でこんなサウナに出会えるとはまさに感激もの！　当時はまだ導入直後で事前情報が一切なかっただけに、大変感激し、店主の清水さんとも話がはずみ長居をしてしまった、というわけです。

鷹の湯に新設された薪ストーブ（写真は鷹の湯HPより引用）

魅力③：温浴施設の方々との出会い/交流

「たくさんのサウナ施設を回っている」という話をきっかけに温浴施設の方と会話がはずむ場合がよくあります。
前述の鷹の湯でのケースのように、温浴施設の方にその施設の魅力や工夫点を聞いてみるもよし、周辺のおすすめ施設を聞いてみるのも面白いと思います。
岐阜の田辺温熱保養所の女将さんからは、薬草が楽しめる施設として伊吹山の麓に位置する「かすがモリモリ村 リフレッシュ館」をお勧めいただきました。
大量の薬草が詰め込まれた大きな薬袋が3つも湯船に投入してあり、あまりの成分の濃さからお湯は真っ黒！
施設内には伊吹山で採取された薬草がずらり。さらに薬草畑の様子などが写真を交えて解説されていました。

モリモリ村には伊吹山の薬草畑の様子が展示されている

温浴施設をはじめとする地元の方々とのコミュニケーションから新たな発見や経験を得ることもあり、こうした出会いも、サウナ旅の楽しみであり魅力であると考えています。

サウナ旅のモデルケース

ここまで主に岐阜県のサウナ旅での経験を例に、詰め込みサウナ旅の魅力について語ってきましたが、どのように岐阜県を回っていたのか、実際に私が回ったスケジュールを記します。

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1日目（9/4 日曜日）8軒
– 6:10 岐阜駅到着（朝食）
6:30 – 8:00 新岐阜サウナ（1）
8:40 – 9:40 アクアリゾート岐阜ふじの湯（2）
10:20 – 11:10 養心薬湯（3）
11:40 – 12:40 満願の湯（4）
12:50 – 13:30 里山きさら（昼食）
15:40 – 16:40 ゆぅわ〜くはうす（5）
17:00 – 16:30 ぬく森の湯すぱーふる（6）
18:10 – 臥龍の郷（7・夕食19:00~・宿泊）
20:00 – 22:30 鷹の湯（8）

2日目（9/5 月曜日）7軒
– 9:00 臥龍の郷（朝食）
10:00 – 11:50 ひらゆの森（9・昼食）
12:00 – 13:20 奥飛騨ガーデンホテル焼岳（10）
13:40 – 14:00 ジョイフル朴の木 宿儺の湯（サウナ休止中でした）
15:20 – 16:30 巌立峡 ひめしゃがの湯（11）
16:50 – 17:50 飛騨川温泉 しみずの湯（12）
18:20 – 19:20 南飛騨馬瀬川温泉 スパー美輝（13）
19:50 – 20:50 幸乃湯（14）
21:00 – 下呂温泉小川屋（15・宿泊）
21:30 – うお藤（夕食）

3日目（9/6 火曜日）5軒
– 8:30 下呂温泉小川屋（朝食）
10:00 – 11:00 武芸川温泉（16）
13:20 – 13:50 手打ちうどん朝日屋（昼食・臨時休業のため中村屋へ）
14:00 – 17:00 田辺温熱保養所（17）
17:10 – 17:30 金蝶園総本家（おやつ）
18:10 – 19:00 かすがモリモリ村リフレッシュ館（18）
19:50 – 20:40 いずみ湯（19）
21:00 – 養老温泉 ゆせんの里（20・宿泊）

4日目（9/7 水曜日）2軒
– 7:50 養老温泉 ゆせんの里
8:40 岐阜駅（レンタカー返却）
10:00 – 11:30 恵みの湯（21）
13:00 – 13:30 手打ちうどん朝日屋（昼食）
14:00 – 16:00 大垣サウナ（22）
16:20 – 金蝶園総本家（おやつ）
17:20 – 18:00 かぎや温泉（サウナ休止中でした）
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岐阜サウナ旅では計22軒のサウナを回ったのですが、前述の「鷹の湯」で長居したことや、「かすがモリモリ村リフレッシュ館」へ急遽行くことを決めたため、当初訪問を予定していた施設をいくつか諦めています。
しかしそれだけ時間をかけた施設はどれも魅力的で、柔軟に予定を変更して良かったと思えた経験ばかりでした。
自分の感覚を信じて、魅力を感じた方へ進んでみることが、旅においては大事であると感じました。

ちなみに冒頭のトマトの写真は、奥飛騨温泉郷の野菜売り場に寄った時のもの。厳しい残暑の中、外で食べる天然水で冷やされたキンキンのトマトは絶品！！　これもまた不意な出会いのひとつ。
岐阜サウナ旅のハイライトと言っても過言ではないほど、自分にとっては思い出深いひと時でした。

また、岐阜以外のサウナ旅のスケジュールは私のInstagramに載せておりますので、こちらも興味のある方はご覧いただけますと嬉しく思います。

過去のサウナ旅の様子はストーリーにまとめています！

これまでのサウナ旅での反省点

これまでのサウナ旅を通じて、魅力を存分に感じることができた一方で、「もっとこうしておけば……」と思うことも多々ありました。
例えば、北陸を回ったときには「食事」について全く考えておらず、時間の関係で海鮮の美味しいお店はすでに閉店。結局コンビニでご飯を買うという旅らしからぬ食事体験をしたこともあります。

さらに「移動時間は往々にして予定より延びる」ということも大きな教訓になりました。
移動時間はGoogle Mapを元に設定しているのですが、当然ながら検索する時間によって所要時間が異なってきます。現地で移動の際にはこうした時間のズレが積み重なり、予定していた施設を泣く泣く諦めた経験があります。
あらかじめ移動時間に余裕を持つことも大事ですが、途中途中に時間調整用の空の予定を入れておくと、時間ズレの対策にもなりますし、ふと行きたい場所が出てきた時にも、予定を変えることなく組み込むことが可能です。

よくよく考えてみれば当たり前のことではありますが、これらを意識することでより充実した「詰め込みサウナ旅」を実現することが可能です。予定を組む際にはこの点に注意しながら、ぜひたくさんの施設を詰め込んでみてください。

最後に

最後になりましたが、アドベントカレンダーの記事を執筆する機会をいただき、編集部の皆様に感謝申し上げます。

そして、長くなりましたが最後まで読んでくださったサウナ好きの皆様、どうもありがとうございました！　この記事を読みながら「来年はどこのサウナに入ろうかな〜」なんて考えていただけたら嬉しいです。2023年も皆さんが全国の素敵なサウナに出会えますように……。