2024.07.24

アウフグースの技名、知ってますか？｜熱波をお届け！#3

熱波師のじゃがさんによる、熱波をもっと楽しむ方法を提案していく連載です。

じゃが

サウナーのみなさん、こんにちは。熱波師のじゃがです。もう熱波しましたね？

連載もお陰様で3回目です。第1回の記事で「熱波の種類」を説明し、第2回ではそのうち「業務熱波」を掘り下げたので、第3回は「アウフグース」を掘り下げたいと思います。

「熱波」と「アウフグース」

熱波師の多くは最初の口上で「熱波またはアウフグースを受けるのが初めての方はいますか？」と確認します。これは、受けたことが無い方に手順や注意事項を説明するだけでなく、どれくらいの人が受け慣れているかを把握し、熱管理や風の送り方を調整する意図があります。（受け慣れているオーラがあるお客さんしかいない時は省略することもあります）

では、この「熱波」と「アウフグース」の違いとは何か。尋ねられたら「熱波を横文字にしたものがアウフグースですよ」と答えるのですが、若干細かいニュアンスが異なる気がしています。

「熱波」はサウナブーム前からあるスタイル、「アウフグース」はサウナブーム以降のもの、くらいの肌感覚ですが、ざっくり言うと下図のように捉えています。

2024071402 熱波／アウフグースあるなし表

アウフグースという黒船

アウフグースの大きな特徴は、片手でタオルをくるくる回すタオルまわしでしょう。風を届けるだけでなく、華麗にタオルテクニックが決まった時は、サウナ室内に拍手や歓声が沸き起こります。

熱波師になる以前、ただのサウナ愛好家だった私がアウフグースを知った時は、黒船が到来したかのような衝撃を受けました。日頃から受けていた熱波はどうやら海外が本場らしい、ドイツ語で「アウフグース」というらしい、タオルで風を送る動作には技名があるらしい…。

そんなアウフグースの「技名」のうち基礎的なものを簡単に紹介するとともに、熱波師がどんな意図でこの技を使っているのかをお話していきたいと思います。

アウフグースの「技」6選

まずはこれを知っておくとアウフグースをもっと楽しめる、基本の技を6つご紹介します。

●ヘリコプター
いわゆる「撹拌」。タオルを半分に折り畳んでタオルの角を持ち、ストーブの上やお客さんのサウナ室の上空を手首のスナップをきかせて旋回する、お馴染みのアレです。

ロウリュ後に行うもので、タオル旋回によって空気の流れをつくりだし、ロウリュで霧散した蒸気を均一に撹拌します。

●ランバージャック
タオルの両端を持って頭の後ろに振りかぶり、両手を開きながらインパクトをつけて振り下ろす、お馴染みのアレです。

ランバージャックという名前は斧で木を割る動作に由来しているそうで、全ての技の中で最も力強い風を送ることができます。至近距離から強い風を送る時や、上段で距離がある方に風を送りたい時にも使います。あと、二の腕にめちゃくちゃ効果的です。

●パラシュート
タオルの両端を持って左右に振りかぶる→振り下ろすことで風を送る技です。ランバージャックとは違って、振り下ろしたタオルを振り子運動の要領で引き上げるので、繰り返し風を送ることができます。

動作のストロークが長く、大きな空気を動かせるので、お客さんに優しく柔らかい風を届けたい時だけでなく、ロウリュ後に上空に溜まった蒸気を降ろすのにも使います。

●フラッグ
タオルの両端を持って左右に振り、地面に対して垂直になるようにタオルを開いて横から優しく柔らかい風を送る技です。

動作のストロークが長いだけでなく、タオルを振りかぶった時に手首を返せば上方向にも風を送れるので、広いサウナ室で重宝します。ただ、タオルを振るスペースが正面だけでなく左右にも必要なので、狭いサウナ室だと使いづらいです。

●ピザ
代表的な片手技。片手でタオルの長辺を持って手首を内外旋して捻ったり、腕を上下に振ることでタオルに遠心力をつけて、ピザ職人がピザ生地を伸ばすようにタオルを操るタオルテクニックです。

サウナ室の上部に溜まった蒸気を多少降ろすことができますが、基本的には風を送るというより魅せる目的で使います。

●スーパーエイト
タオルをくるくる回す代表的な片手技。片手でタオルの長辺を持って手首を内外旋しながら腕を8の字に振ることで、タオルに遠心力をつけて開かせるタオルテクニックです。

ピザ同様、風を送るというより魅せる目的で使い、上下左右に腕を振れるので、かなり動きをつけることができます。

基本的なものは以上です。

他にもタオルを投げる「投げ技」や自身が回転しながら繰り出す「回転技」、折り畳まれた大判タオルを開いたり、タオルを2枚使って片手技を両手で行ってタオルを回す技など、紹介しきれないほど沢山の応用技があります。

アウフグースに込める想い

熱波師やアウフグースマスターは、お客さんが最後に笑顔でサウナ室を出られるよう、アウフグースに想いを込めています。ロウリュした蒸気をサウナ室に送り届けて良いサウナ空間を作り上げ、曲やアロマでストーリーを描き、お客さんが最後まで飽きずに楽しんでもらえるよう、一つ一つに意図を込めた選択をしているのです。

タオルテクニックもその選択肢の一つ。風を送らない技もありますが、見惚れて時間を忘れるほど巧みなタオルパフォーマンスは、お客さんの体を芯から温めるためのアプローチなのです。

「この人はどんな意図でアウフグースをしているんだろう？」と考えたり、自分なりの視点を持つと、少しだけ長くサウナ室にいられて、アウフグースを楽しめるようになるかもしれません。百聞は一見にしかず。サウナ室でどんなことが繰り広げられているのか気になった方は、ぜひお近くのサウナ施設に足を運んでみてください。