
扇いでない時は何してる?熱波師の一日|熱波をお届け!#9
熱波師のじゃがさんによる、熱波をもっと楽しむ方法を提案していく連載です。
みなさんこんにちは、熱波師のじゃがです。寒波を熱波で吹き飛ばしてますか?
読者のみなさんは、熱波前後に館内で過ごす熱波師を見かけたことはあるでしょうか。皆さんと同じようにサウナ施設を満喫している時もあれば、熱波前後にやるべきことを進めている場合もあります。
今回はそんな熱波イベント当日における熱波師のスケジューリングを、私を例にお話ししてみたいと思います。熱波をするまでのタスクや時間管理をまとめましたので、熱波師になって間もない方や、これから熱波イベントを始めたい施設の方の参考になれば幸いです。
1.現場入り
熱波イベントで初めて扇ぐ施設に伺うなら、1時間半前までには入館しています。「そんなに早く着いて何すんの」と思うかもしれませんが、やっておきたいことがいくつかあるのです。
①施設スタッフさんとのコミュニケーション
館内のスタッフさん全員とはいいませんが最低限、当日にお世話になるスタッフさんに挨拶をします。当然のマナーではありますが、たかが挨拶、されど挨拶。熱波の準備のためにサウナ施設のバックヤードを通ることもありますので、「今日イベントをやる熱波師さんだな」と認識いただいた方が、何かと連携しやすいのです。
②段取りと動線の確認
熱波イベントでは、担当スタッフさんがゲスト熱波師をサポートしてくださることが多いので、当日の段取りや手伝っていただきたい内容を打ち合わせます。初めて伺う施設なら、施設ルールや注意事項、ロウリュする時の注水量も確認。
また、備品置き場や水を汲む場所などを確認し、熱波で必要な物品をサウナ室に搬入するまでの動線確認をします。部外者がバックヤードをうろつくほうが困る施設もあるので、役割を確認してスタッフさんがやってくれるのならおまかせしています。
今日はこういう熱波をやるので、水や氷をいつまでにこれくらい持ってきてほしい、というような話をしている図
③サウナに入る
自分が熱波をするサウナ室に入り、温度湿度のコンディションを自分の肌で確認し、身体を熱に慣れさせます。とはいえ、身体の芯まで熱を入れてととのってしまうと後ほどの熱波に影響しますので、ほどほどに。
また、ストーブや換気口といったサウナ室の構造であったりお客さん層を観察して、どんな熱波をするのかをシュミレーション。特に業務熱波が行われる場合は、ロウリュの注水量や蒸気の動きをみています。
④準備の準備
熱波直前になって「あれやこれが無い!!」と焦りやうわついた気持ちで臨むと、お客さんに伝わってしまうもの。私は心配性なのでそういうことが無いよう、準備をする前に熱波をするのに必要な物品を一通り並べて最終チェックします。
2.熱波準備
熱波前の水分補給をしたら、後は準備をするだけです。熱波の衣装に着替え、必要な物品を搬入したら、アロマなどを準備。イベント開始の5分前までに一連の準備が終るよう、逆算して手を動かします。私の場合、シンプルなアウフグースであれば15分程度で一連の準備を終えますが、熱波師になって間もない方ならもう少し時間をみておくと良いでしょう。
サウナストーブの調子を確認している図。位置ごとの温度を確認して注水の調整をします。
①アロマの準備
アロマオイル(精油)を使う場合、準備が早すぎると揮発して香りが変化するので、最後に準備します。キューゲル(クラッシュアイスの氷塊)を使う場合は室温で氷が溶けてしまうので、キューゲルを作るのは直前、アロマを滴下するのは一番最後です。
アロマオイル1滴が熱波の出来を左右することもあるため、アロマ水を作っている時の熱波師は集中しています。声を掛けず静かに見守ってもらえたらありがたいです。
アロマオイルをキューゲルに滴下する図。この状態の熱波師はウミガメの産卵レベルでそっと見守ってください。
②お迎え
一連の準備を終わらせたら、イベントに参加するお客さんをサウナ室前でお出迎え。お客さんの層や表情をできる限り確認して、この後に行う熱波の内容を頭の中で微調整しています。
混雑して座席に余裕が無い場合は詰めてもらうようにお声がけし、空いた席に案内誘導もします。いらぬ配慮をさせぬよう、熱波前からリラックスしてほしいのです。
3.熱波後
熱波後もやることはまだ残っています。全力を出し尽くして熱波後に動けなくならないよう、ペース配分を調整しています。達成感にひたったり一人反省会をするのはもう少し先。
①お見送り
熱波を受けてくれたお客さんをサウナ室の出口でお見送りします。できる場合は、ととのっているお客さんに柔らかい風(クールスイング)を送ったりします。これはサービスという意味よりは、お客さんの熱波後の体調確認が目的です。
②片付け
全てのお客さんが熱波イベントを歓迎しているわけではありません。いつものサウナ室を愛し、熱波イベントが終わるのをサウナ室の外で待っているお客さんもいます。そんなお客さんのために、素早く搬入した道具を片付けて座席を整え、いつものサウナ室に現状復帰します。
ここまで終えて、やっと一休みできます。慣れればなんてことなくても、慣れないうちは結構大変。一日に複数回熱波をやる場合は、これを何度も繰り返します。全ての片付けが終わった後は、サウナ施設を心ゆくまで大満喫します。熱波師やっててよかった〜と感じる瞬間の一つです。
熱波を終えてサウナ施設を大満喫する図。熱波後のビールはうまい!熱波師やっててよかった!
熱波に波風を立てないために
立ち振る舞いには人間の内面が表れるとはよく言ったものですが、それは熱波も同じ。丁寧な人は丁寧な熱波をしますし、雑な人は熱波にもどこか粗さが出ます。準備でバタバタして心に波風が立っている時は、それが熱波としてお客さんに伝わります。
幸いなことに、私はこれまで様々な熱波師と接する機会に恵まれてきました。表や裏から数々の熱波師を見るなかで気づいたのは、良い熱波をする人はサウナ室内でのパフォーマンスや所作だけでなく、そこに至るまでの準備であったり、周囲への気配りといったサウナ室で行う熱波以外のところも安定しているということです。
サウナ施設に来るお客さんはリラックスを求め来館し、サウナ施設のスタッフさんはそのリラックスを提供するために奮闘しています。サウナ室内でのパフォーマンスに目が向きがちですが、準備や片付けといったサウナ室外での普段の立ち振る舞いを磨くことが、良い熱波を送るための基礎なのかもしれません。
撮影協力:東京荻窪天然温泉 なごみの湯
記事の感想をいただけると
次回の記事の励みになります!









