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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.09.15

20回目の訪問

さかえ湯

[ 北海道 ]

ドラえもんのタイムマシンが使えたとしよう。

3年前の私に「来年、バカリズムと夢眠ねむが結婚するぞ」と伝えたら、驚きつつも「まあでも、しっくりくるな」と納得するだろう。

2年前の私に「来年、志村けん死んじゃうぞ」と伝えたら、驚きつつも「まあでも、それなりのお年だしな」と納得するだろう。

だが、1年前の私に「来年、さかえ湯なくなるぞ」と伝えても「またまた、ご冗談を」と一笑に付すだろう。

実際、その噂を耳にしたとき私は全く信じなかった。「チンギス・ハーン=源義経説」とか「プレスリー生存説」とかと同じ類の話として受け止めた。しかしすぐに、残念ながら、噂は噂でないと知った。

タイムマシンではなくチャリでさかえ湯へ。
振り返ってみると、さかえ湯への訪問は決まって仕事帰りだった。なので「今日のプレゼン、全然ダメだったなぁ…」「明日の顧客対応、憂うつだわぁ…」といった後悔や不安を抱え、暗い気持ちで暖簾をくぐるのが常だった。しかしここには最高の湯とサウナと水風呂と外気浴がある。暗い気持ちは一掃され、反対側から暖簾をくぐる時の私は身も心も軽くなっていた。

今日は初めての「仕事帰りではない」さかえ湯だ。湯もサウナも水風呂も外気浴も相変わらず最高だった。最高ゆえ、帰りに暖簾をくぐる時も私の気持ちは暗いままだった。

嘘っぱちの作り笑顔で「お疲れ様でした!」ということは容易いが、それは無礼だと思った。なので、しかめっ面で暖簾をくぐり、店先の灰皿に虚無と喪失とフィルターだけの吸い殻を捨ててきた。

さかえ湯は帰ってこないんだから。
もう、二度とあえないんだから。

俺が欲しいのはタイムマシンじゃなくてウソ800なんだよ!!!!

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.09.12

4回目の訪問

美春湯

[ 北海道 ]

松屋で創業ビーフカレーを食らい美春湯へ。

本日の薬湯は米ぬか湯。色といい泡の立ち方といい米のとぎ汁そのもの(褒めてる)で、ごはんの甘い香りが鼻腔をくすぐった。薬湯・オブ・ザ・イヤーは間違いない。ベスト薬湯ニスト、グラミー賞薬湯部門、上方新人薬湯大賞も総ナメだ。糠ニシンや糠ホッケを大いに妬んだ。

米ぬか湯を後にしてサウナへ。
「米ぬかに漬かった後は暗室で水分を飛ばすだなんて、まるで何かの珍味作りだな!」と間抜けなことを考えながら閉眼。

…熱い。いつもより確実に熱い。
もしかしてアレか?俺は本当に珍味になっちゃうのか?注文の多い料理店的なことか?糠オヤジなんて誰も食わないぞ?今ならほんのりカレー味だよ?

気持ちよすぎてバカな空想が暴走した。熱いのは単に人の出入りがなかったためだ。コンパクトなサウナ室はドアの開閉がないとすぐ熱々になる。

少々汗をかきすぎた。帰ってハイボールを飲もう。アテはもちろん糠ホッケで。

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2021.09.09

3回目の訪問

共栄湯

[ 北海道 ]

名前にあれこれと思いを巡らす癖がある。口には出さないが
(弥生ちゃんか…。さては3月生まれだな?)
(辰徳くんか…。さてはお父さんが巨人ファンだな?)
(ゴールドバーグか…。さてはウーピーだな?)
といった具合だ。

人名に限らず、店の屋号も同様だ。
(共栄湯か…。お客さんや地域と共に栄えるってことか。今ならさしずめ『win-win湯』ってところだな!)
と思っていた。

木曜午後、共栄湯へ向かう道すがらで目に入った町内会の掲示板。「東札幌共栄町内会」とある。…どういうことだ?

長く東札幌で暮らしているが、申し訳ないことに共栄町内会の存在は全く知らなかった。
win-winとかじゃなく「共栄町内会だから共栄湯って名前にしちゃお〜っと!」ということなのだろうか。いや、「共栄湯があるから共栄町内会って名前にしちゃお〜っと!」という豊田市パターンもありえる。

気になることを調べずにはいられない質なので、ググりにググった。わかったのは
昭和36年 共栄町内会結成
昭和38年 共栄湯創業
ということだ。

つまり「共栄町内会にあるから共栄湯」説が有力となった。ま、由来は何であれよい屋号である。
ついでにウーピーのことも調べたところ、本名が「カリン・エレイン・ジョンソン」であると知った。ウーピーってどっから出てきたんだよ!何だよゴールドバーグって!

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.09.05

3回目の訪問

鷹の湯

[ 北海道 ]

「みよしの」でカレーと餃子をいただき、鷹の湯へ。

「みよしの」が北海道にしかないということを知ったのは割と大人になってからだった。
北海道民はDNAに「カレーには餃子」と刻み込まれているが、よく考えてみれば変な組み合わせではある。なんせインドに中国だ。政治的にもちょっとヤバい感じがする。

さて、「みよしの」を語るうえで避けられないのは「カレーは辛口か甘口か問題」である。
いまでこそ私は甘口派だが、かつては辛口派の急先鋒に立っていた。「軟弱な甘口男子に血の裁きを」というスローガンを掲げ、甘口をオーダーしている男に片っ端から焼きたて餃子を顔めがけて投げつけた。

しかしある日、識者から「辛口と甘口の違いは辛味でなく風味」「甘口の方がコクがあって旨い」との見解を得た。
半信半疑で頼んだ甘口は確かに旨かった。その日から私は甘口派の急先鋒となり、辛口をオーダーしているバカ舌男の頭に片っ端からお新香を浴びせた。

鷹の湯には「あつめ」「ぬるめ」という2つの浴槽がある。初訪問時、「男子たるもの、そりゃ『あつめ』だろ」と意気込んだが、足先だけでギブアップとなった。
あれから数ヶ月、私は「ぬるめ→(サウナ→水風呂)×3→あつめ」というルーティンを完成させている。初めの「ぬるめ」が大事だ。

辛口、あつめ、甘口、ぬるめ。どれを選んだって、男らしい、男らしくない、カッコいい、カッコ悪いなんてことはない。
こじんまりとしたサウナ室内で悟りにも似た思いが頭を巡った。一方で、寝不足もあってかカレーと餃子を戻しそうになった。サウナ室でリバースだけは男らしくないしカッコ悪い。怒られるし。

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2021.09.03

3回目の訪問

美春湯

[ 北海道 ]

毎週金曜日の美春湯は男女入れ替えである。合法的にあのスチームサウナを味わえるのだ。
9月最初の金曜、ウキウキで美春湯にたどり着いた私を迎えてくれたのは
「毎週金曜日の男女入れ替えは終了しました」
という一文だった。

衝撃のあまり「グワァ」という獣のような声が出た。
「終了」でこんなに衝撃を受けたのは「TMNプロジェクト終了宣言」以来だ。

もちろん男湯がダメということでは全くない。存分に満喫した。
とはいえ、直線距離だと数メートル先であろうスチームサウナへと想いを馳せずにはいられなかった。男湯と女湯を隔てる壁がこんなに憎いとは。
ベルリンの壁が壊され東西ドイツはとっくの昔に統一したというのに、なぜ男女美春湯は統一されないのか。政治に疎い私にはわからない。

「TMNも結局は活動再開したし、美春湯もまた男女入れ替えやってくれるかもな!」
スチームではないものの、じっくり蒸された私の心には余裕が生まれていた。
帰り際、再び
「毎週金曜日の男女入れ替えは終了しました」
という一文が目に入った。
獣のような声を出してしまった数十分前の自分がすでに恥ずかしい。あれじゃまるで「金曜日のライオン」だ。

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2021.08.31

2回目の訪問

たまゆらの灯

[ 北海道 ]

優柔不断だ。迷いに迷って生きてきた。私立か公立か、民間か公務員か、コロコロかボンボンか、ごっつか元テレか、加護か辻か。

火曜の14時半、遅めの昼食にエビカレーを食しつつ今日も迷いに迷った。
「鷹の湯か望月湯か、はたまた共栄湯か美春湯か。それとも頑張って、こうしんの湯まで行っちゃおうか」
カレー皿が空になってもまだ迷っていた。
余談だが、エビカレーも迷いに迷って決めた。区役所の食堂なんぞ何を食っても大体55点くらいなのはわかっていたが、それでも迷った。

最終的に私は「初めての大照湯」という決断を下した。
強烈な向かい風の中、チャリ激走でたどり着いた大照湯。「定休日・火曜」という文字が迎えてくれた。
いや、調べなかった自分が悪いのはわかっているが、こういう大事なことは教科書に載せておいて欲しい。

たまゆらの灯が近かったのはラッキーだった。
「え、特選魚介しょうゆ売り切れ⁉︎じゃあ普通の塩でいいです」的にチョイスされた側はたまったものじゃないだろうが、あれだけ迷ったのに候補ですらなかった場所へとたどり着くなんて面白いじゃないか。まるで人生だ。

帰り道、せっかくなので入ったことのない裏道を進んだ。道にも迷った。

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2021.08.27

6回目の訪問

月見湯

[ 北海道 ]

1年半ほど前に計画していた東京旅行。数々のサウナとともに渋谷のNintendo TOKYOを目的地のひとつとしていたが、コロナのおかげで計画は白紙に。

以来、東京はすっかり遠くなってしまったが、ありがたいことにNintendo TOKYOのポップアップストアが札幌にやって来てくれた。向こうから来てくれるなんて思ってもみなかった。

私は任天堂から多くのことを学んできた。マリオに愛を、リンクに勇気を教わった。
綺麗なことばかりではない。「友情は赤甲羅1つでぶっ壊れる」「『パネルでポン』をやりすぎると親指の骨にヒビが入る」など、たくさんの教訓も得た。

平日真っ昼間のポップアップストア。2つのぬいぐるみを抱えた少女に母親が「ぬいぐるみは『たぬきち』か『しずえ』のどっちか1つよ」と語りかけている。

私も心の中で少女に語りかけた。
「お嬢ちゃん、ママのいうことを聞いてどっちか1つ選ぶんだよ。ま、おじさんは大人だからこうするけどね!Money is power!」
物欲の鬼と化した私はショッピングバッグに気になった物を次々放り込んだ。親子をカップルをかき分け、私は修羅と化した。

しかし、こんな時でも私はサウナを忘れない。
「このビニールバッグ、お風呂道具入れるのにピッタリ!」
「このスチールボトル、浴後に水飲むのにピッタリ!」
「このタオル、サウナで頭に巻くのにピッタリ!」
ピッタリ3連発によりショッピングバッグは更に膨れ上がった。

会計時、レジのお兄さんが私に告げた金額は衝撃的だったが、QUICPayで支払ったので実質タダみたいなものだ。

買ったばかりのアレやコレやを携え月見湯へ。サウナはスーパーキノコよりも力をくれた。
そしてお風呂に入るとコーヒーが飲みたくなるのも任天堂のせいだ(これはわかりにくい)

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2021.08.23

3回目の訪問

大豊湯

[ 北海道 ]

週休振替となった本日月曜、残念ながら昼まで突っ伏していた。
フジロックがオンライン生配信というありがたいことをやりやがったために、はしゃぎすぎた昨晩の私は焼酎を40杯(体感)ほど飲み倒した。今じゃ言えない秘密じゃないけど出来る事なら言いたくないが、当然二日酔いである。

柄にもなく、若かりし頃はフェスなるものへと遊びに行っていた。隣町でのRISING SUNと、日本中のテクノ中毒者が集うWIREには毎年足を運んでいた。行かなくなった理由は単純で、体力と音楽への関心が落ちたせいだ。心身ともに老いたのだ(WIREはそもそもなくなっちゃったけど)

酔いも醒めた15時過ぎに大豊湯へ。人の多さに驚いたが、それ以上に驚いたのは年齢層の高さだ。大先輩ばかりで、私が明らかに最年少。「心身ともに老いた」などと彼らの前では口が裂けても言えない。
目を閉じて微動だにせず湯に浸かっている者、いろいろな浴槽をせわしなく行ったり来たりしている者、湯には目もくれずお喋りに興じる者、寝ている者。それぞれの楽しみ方をされている。

ふと思った。これはフェスだ。
微動だにせず音楽に聴き入る奴、ステージ間をせわしなく移動しまくる奴、ステージには目もくれず酒を飲みながらずっと喋ってる奴、そのへんで寝ちゃってる奴。石狩で横浜アリーナで目にした連中と大豊湯の先輩方は何も変わらない。違うとすれば服を着ているかどうかと年齢だけだ。

タイムテーブルを眺めながら「TOKYO No.1 SOUL SETでスタートして、ZAZENも捨てがたいけど次はエレカシ行って、そのまま達郎だな。んでOriginal Loveからのyanokamiで…」などと思案するのはフェスの醍醐味だが、これも銭湯に通じる。
洗身中に「まず主浴槽入って、うたせ湯も軽くいっとくか。んでサウナ3セットでラストは薬湯で…」などと考えるのは、完全にフェス前夜のアレだ。

「熱っ!」
静かなサウナ室でバカなことを考えていたら、右手首を強烈な熱さが襲った。
熱せられたロッカーキーが右手首の皮膚に触れたのだ。憎々しくリストバンドを見つめた。

リストバンド。やっぱフェスじゃん、銭湯。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.08.20

4回目の訪問

本当は昨日の仕事帰りに行こうと思っていたが、ポイントカードを忘れたため1日順延しての訪問。
たかがポイントカードで…と人は笑うかもしれないが、死んだバアちゃんが「1ポイントを笑う者は1ポイントに泣く」とよく言っていたので、私は正しい。

受付レディにスタンプを押してもらい、「もう忘れたりしないからね」と改めてカードを見つめた。
いままで気に留めたことはなかったが「お楽しみポイントカード」とある。

…お楽しみ、とは。
いやまあ、お楽しみかお楽しみじゃないかといわれれば、お楽しみではある。
ではあるが、「どっちかといえばお楽しみ」ぐらいで、積極的に「わ〜い、お楽しみ〜!」というほどではない。
例えば私は毎月の給料日を楽しみにしているが、「お楽しみ給与明細書」とは書いていない。

「お楽しみ」とは何だ。
ドラクエⅠでローラ姫を抱きかかえた状態のまま宿屋に泊まると、翌朝に店主から「ゆうべは おたのしみでしたね。」と言われるのは全国民の知るところだが、この場合の「おたのしみ」は言わずもがな、そういうことである。
「さすが勇者!おたのしみなうえにHP全回復とは!」とファミっ子達の喝采を浴びたものだ。

はは〜ん、お楽しみポイントカードもそういうことか?ポイントコンプリートの暁には受付レディとそういうことか?
マッサージコーナーで紙パンツ履かされちゃったりするんでしょ?

南郷の湯にマッサージコーナーはありませんが、また来ます。次回もお楽しみに!

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.08.15

1回目の訪問

千成湯

[ 北海道 ]

少々距離はあるが、徒歩で千成湯へ。

少し前まで30℃超えを連発していたのに、今日はTシャツだと肌寒いくらいだった。北海道の夏は過ぎ去った。
「夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれに さまよう」
素敵な歌があったものだ。

…つーか風あざみって何?
日本語を扱える者なら誰しもが思うだろう。しかし私は答えを知っている。かつて「なんだこの言葉は」と疑問を抱き調べたのだ。たどり着いた答えは「陽水の造語」だった。

しかし造語とは思えないほど耳にスッと入ってくる。違和感がない。
「風あざみ」という「何か」が確かにあると思わせられる強さと柔らかさが同居している。
こんな言葉を生むことができるのは、その才能ゆえだろう。

「ヒゲおろし」
これは私が千成湯のサウナ室で考えついた造語だ。私には才能がないので強さも柔らかさも何もない。
泥ポトフ、鼻ずらし、偽レグザ、エモ茶漬け、ドンフライ…。
想像を超える熱さの千成湯サウナは脳をも襲った。とめどなく溢れる造語と汗。

帰り道。往路で感じた肌寒さはない。サウナで蒸されたからだろう。
平岸の住宅街にびゅうと風が吹いた。火照った身体には心地よい。
風あざみってこれのことか。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.08.12

8回目の訪問

望月湯

[ 北海道 ]

通勤時、地下鉄の乗客が少ないことに気がついた。「え?まん防本気出した?それとも戦争始まったりした?」と思ったが、すぐにお盆であることに気がついた。
お盆を失念するとは日本人としてあるまじきことだが、これには理由がある。私が生まれた函館という場所は、なぜかお盆が7月に設定されているのだ。

他の地域に1ヶ月ほど先行して訪れるお盆。理由はわからない。おそらく「先行プレミアム上映会」とか「ファンクラブ会員限定チケット先行予約」とかと同じ仕組みなのだろう。
詳しくないので明言はできないが、函館の生んだスーパーバンド・GLAYにもお盆の歌が1つや2つあるだろう。それらの曲が扱っているのは8月でなく7月だ。ご留意いただきたい。

閑話休題。地下鉄が空いているなら銭湯も空いているだろうと訪れた望月湯。読みが当たったのか偶々なのか、人は少なかった。静かなサウナ室でしつこくお盆に考えを巡らせた。

そもそもお盆とは先祖の霊が現世に帰ってくるという、あの世とこの世の垣根を超えた「プロレス夢のオールスター戦」的なミラクルイベントである。
つまり、現世の我々が7月だ8月だと騒いだところで意味はなく、先祖がいつ帰ってくるかが肝心なのだ。私の先祖−といってもジィさんとバァさんの顔しか思い浮かばないが−がいつ帰ってくるかによって定義すべきだ。

霊感ゼロの私にはそれがいつなのか全くわからない。
ただ、すっかり札幌に染まってしまった私に気を遣い、ご先祖様たちは8月に戻って来ているのかもしれない。死んでからも気を遣わせてしまっているのならば、それは本当に申し訳ない。
おそらくご先祖様たちは「こいつ、いつ来てもサウナ入ってるか酒飲んでるかFANZAでサンプル動画見てるかだな!」と呆れ果てているだろう。

ご先祖様たちのおかげであらゆる快楽を享受できています。ありがとうございます。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.08.08

2回目の訪問

美春湯

[ 北海道 ]

サウナ室と水風呂を行き来する時間に比べ、湯に浸かる時間は短い。洗身後、文字通りウォーミングアップとして5分も入れば十分だ。
温まりさえすればよいので、白湯だろうが薬湯だろうがなんでもよい。最悪、ペヤングの捨て湯でも構わない。

日曜昼下がりの美春湯、いつものように軽い気持ちでバイブラ湯に向かった。「パインアメの湯」とある。

…これは軽い気持ちじゃダメだ。今でこそ龍角散のど飴のヘビーユーザーと化しているが、若かりし頃はその甘酸っぱさに魅了され、朝な夕なパインアメを舐めていた。かつてのパインアマー(アムラー的用法)として、ここは真摯に対峙しなければいけない。

熱い。黄色い。いい匂い。壁の掲示に目をやると
「まるでパインアメまみれ♪」
とある。
まさかパインアメにまみれる日が来るとは。自分がまみれるとすれば血まみれか借金まみれだと思っていたが、まさかのパインアメまみれ。歯を食いしばって生きてきてよかった。まみれにまみれた。

全身にパインアメの爽やかな香りを纏ってサウナ室へ。
この先、血まみれや借金まみれにならない保証はないが、どんな状況でも歯を食いしばり、そしてサウナには入っていきたい。

気がつけば汗まみれだった。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.08.05

13回目の訪問

湯処花ゆづき

[ 北海道 ]

二十四軒某所への助っ人勤務も残りあと数日。私が助っ人勤務に応じたのは「さかえ湯と花ゆづきがあるから」という愛社精神溢れる理由のためだが、振り返ってみれば一度さかえ湯に行っただけ。忙しすぎた。

諸々を考えると今日が最後のサウナチャンス。前日から気持ちはさかえ湯だった。
「花ゆづきはいいのか?」と自問自答はした。さかえ湯も花ゆづきも同じように愛している。そこには大も小も優も劣もない。

じゃあ何故さかえ湯なのかって?うーん、そこに理由っているかなぁ。理屈じゃなくない?まあ、敢えてよ、敢えていうなら花ゆづきより近いからかな〜。え?「どうせ私は都合のいい銭湯なんでしょ!」って?いやいや、そうじゃないって。そんな怒るなって!待てって!痛っ!わかった、一旦落ち着こう!一旦座ろう!お茶飲んでみよう!

不倫などするまいと思っていたが、気づけばサウナ不倫のど真ん中にいた。そんな私に下った罰は「さかえ湯定休日」という非情なものだった。忘れていただけともいう。

そんなわけで、結局は花ゆづきを訪ねた。ひどい男だ。「もう『別れる』って口ばっかり!私、バカみたいじゃない!」と洗面器を投げつけられてもおかしくなかったが、花ゆづきの懐は深かった。「今日は奥さん大丈夫なの?」と言わんばかりの余裕すら感じた。
20時閉店。人は少ない。秘密の逢瀬には却って好都合だ。数ヶ月ぶりとあって激しく愛し合った。汗だくだ。

不倫が善なのか悪なのか、独身街道爆進中の私にはよくわからない。ただ確かなことは、不倫も銭湯も文化ということだ。

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2021.08.03

2回目の訪問

大豊湯

[ 北海道 ]

静かなサウナ室、人は一体何を思うのか。
「企画書、どうしよう」「晩メシ、何にしよう」「ビアンカとフローラ、どっちにしよう」など様々だろう。
もちろん答えのある「考え事」だけではなく、後悔や反省、不安がグルグルと頭を駆け巡ることもある。

大豊湯のサウナ室はテレビもラジオも有線もなく静かだ。そしてレンガ造りのため、なんとも言えぬ重厚感を纏っている。こんなシチュエーションでは否が応にも昨日の後悔が脳裏を駆け巡る。平日午後という時間帯のせいか、ほぼ室内にひとりぼっちだったことも災いした。

私は現在、配属先とは別の営業所に助っ人としてレンタル移籍中だ。若かりし頃なら「どうせ期限が来たらおさらばだしな!」などとほざいていただろうが、少しは大人になった今、これは人脈を広げるチャンスだと思ったりもしている。

レンタル移籍先には西尾さんという男性社員がいる。白髪が目立っており、私より10歳は上だろう。とにかく温厚で腰が低い。よくも悪くも「いい人」の代表みたいな人だ。
昨日、その西尾さんが私のそばに来て「あのぉ、お忙しそうなところ本当に申し訳ないんですがぁ、ちょっとパソコンの調子が悪くてですねぇ…」とやはり丁寧に話し始めた。声が小さくて聞き取りづらいのが玉に瑕ではある。
「わかりました」と西尾さんのデスクに向かうと、机上にタンブラーが鎮座していた。猛暑の続く毎日、水分補給は大事だ。さらにタンブラーをよくよく見てみると「B'z」のロゴが刻まれていた。

B'zか。確かに世代だろう。でも西尾さんにはB'zじゃない。チューリップかビリーバンバンだ。慇懃ウイスパーボイス白髪とB'zがどうしても結びつかない。私は見なかったことにしてモニタに目を向けた。

以上が昨日の後悔である。そう、人脈を広げる絶好のチャンスをあっさりと見送ったのだ。
B'zのロゴが目に入った瞬間、私が「♪あの娘は 太陽の Komachi!」と唄えば西尾さんは「エーンジェーール!」と続けてくれただろうし、「♪BLOWIN' BLOWIN' IN THE WIND!」と唄えば「Yes!」と言ってくれたはずだ。
そして西尾さんは「あのぉ、大変申し上げづらいんですけどもぉ、B'zの知識が90年代前半に偏ってらっしゃいますよねぇ」とボソボソと言ってくれたに違いないのだ。

明日からまた頑張ろう。西尾さんとも他の人とももっと仲良くなろう。ひとりぼっちのサウナ室、いやALONEなサウナ室で決意を新たにした。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.07.31

2回目の訪問

鷹の湯

[ 北海道 ]

今日も今日とて暑い。窓を全開にし2台の扇風機をフル稼働させたところで暖簾に腕押し、ぬかに釘、悟空にアクマイト光線だ。

じっとしていようと腹を決めてテレビをつけると、当然のように五輪中継。一流選手の技、力、メンタリティは暑さで弱った心に響く。
しかし一方で「え⁉︎お前マジか⁉︎」という選手を目にすることが稀にある。

100m走がわかりやすいだろう。スタートで見事に出遅れ、その後の加速は全く伸びず、息も絶え絶えでダントツ最下位フィニッシュ。「え⁉︎お前マジか⁉︎」と言わざるを得ない。

とは言えだ。彼のフィニッシュタイムを見れば、素人のそれではない。十分に速い。彼がポンコツなのではなく、周りが凄すぎるのだ。つまり相対的な問題だ。私は鷹の湯に向かった。

鷹の湯の「熱め」浴槽に比べれば30℃そこそこの外気など、氷河期といってよい。これも相対的な問題だ。

3セットをこなした時点で外に出てもよかったが、氷河期はまだ遠い。〆に「熱め」へ身体を浸した。
熱い。震えるくらい熱い。この火照りを維持したまま外に出れば、氷河期の到来だ。

汗を拭き取りスムーズに着衣。待ってろ太陽!カモン氷河期!レッツ恐竜絶滅!

外に出た瞬間「あっつ…」と呟いたことは墓場まで持っていこうと思う。

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月見湯

[ 北海道 ]

本日35℃という最高気温を叩き出した札幌。狂っている。
北海道の売りは「過ごしやすい気候」「広大な大地」「矢部美穂を輩出」という3点だけだが、過ごしやすさが失われた今は「だだっ広くて矢部美穂が生まれたところ」に成り下がったと言わざるを得ない。

だがしかし、札幌には月見湯がある。炎天下、チャリ激走で訪れた。

いつも通りに水風呂から上がり外気浴と思ったが、寸前で動きを止めた。降り注ぐ紫外線を前にためらってしまったのだ。
乙女でも思春期でもない。おっさんたるもの、紫外線だろうがX線だろうがバルトリン氏腺液だろうが浴びに浴びるべきだ。しかし私は肌が弱い。少しでも紫外線へ肌を晒すと翌日には真っ赤っかになってしまう。

一瞬の逡巡はあったものの、気がつくと外気浴スペースの寝椅子でヨダレを垂らしていた。
一応、私なりに多少は考えた。日焼けが目立ってしまうのは腕時計やサングラス、あるいはマスクの跡が残るせいだ。だが、全裸なら全身一律で真っ赤になる。
明日は出勤日だが、全身真っ赤の私に「あれ、焼けましたね?」と言う者は多分いない。言われるとすれば「あれ、シャア専用ですか?」だ。

浴後の脱衣場、帰路のチャリ激走に備えて日焼け止めを塗り込んだ。もちろん塗るスピードは通常の3倍だった。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.07.23

1回目の訪問

美春湯

[ 北海道 ]

初めての美春湯。
金曜は男女入れ替えらしく、本日はスチームサウナ側。初めてなのに「番外編」だ。
いうなれば、初めてやったマリオシリーズが「スーパーマリオUSA」的なことだろう。

さすがに例えが違うなと思いつつ脱衣場へ。
すると「スチームサウナ 温度上げました」との貼り紙。男女入れ替え日になんてありがたい、と小躍りした。
しかし、普段から貼りっぱなしという可能性もなくはない。
いうなれば、北海道民にはおなじみの「焼肉昌苑 50%オフ」的なことかもしれないのだ。

またしても例えが違うなと思いつつ洗身等々を済ませ、いざサウナ室へ。
ドアを開けようとした刹那、足元に何かがあることに気づいた。プラスチック製のうちわだ。

「このうちわはサウナ室でもお使いいただけます 周りの方にご配慮ください」とある。
一見すると何ということのない文章だが、粋に感じた。理由は2つ。
1つめは余計な説明がないことだ。「蒸気を攪拌し一層の熱気が〜」とか「ドイツではアウフグースと呼ばれる〜」といった文言があってもよさそうなところ、「わかる奴だけわかりゃいい」的ミニマムテキストに心意気を感じた。
2つめは「サウナ室『でも』お使いいただけます」という言い回しだ。これが「サウナ室『で』」なら意味合いは変わってくる。
つまりこの貼り紙を意訳すると「サウナ室で使っても別に構わんけど、ま、うちわっすからね。涼むために用意したんですよ、へへへ」ということだ。やはり「わかる奴だけ」と取れる。
いうなれば、「あくまで鳥の餌用ですからね!あとは知りませんよ!」と大麻の種を売る輩的なことだろう。

これも例えが違うし何かちょっと失礼だしと思いつつ、うちわを手にした。
「周りの方にご配慮ください」の注意書きに従い、はやる気持ちを抑えつつサウナ室の中を窺った。先客がいる。二の腕から胸にかけてペイントされているタイプの方だ。
彼らのほとんどが堅気以上に紳士なことは心得ているが、万が一にも「サウナでうちわ振り回してぶん殴られる」という珍妙なエピソードを誕生させてはシャレにならない。うちわをそっと戻し、ドアを開いた。

2セット目の途中、ついに一人となった。ドアを半開きにしてうちわをキャッチ。時は来た。
一心不乱に扇いだ。宙に浮くんじゃないかというくらい扇いだ。酢飯作りか炭火起こしかというくらい扇いだ。
それはもう凄かった。

もはや例えも思いつかず「すごかった」という馬鹿な感想を抱いたまま脱衣場へ。汗を拭きつつテレビに目を向けると、東京五輪の開会式が映し出されていた。こんなときにもサウナへ入っていた私は「サウナ好きすぎ」なのかもしれない。

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68

水風呂のボーイズ・ライフ

2021.07.20

1回目の訪問

初めてのセンチュリオン。
何事も「初めて」には緊張が伴う。

温浴施設の場合は顕著だ。何しろシステムが多様すぎる。
前払いなのか後払いなのか、シューズロッカーのキーは預けるのか預けないのか、館内着のサイズは尋ねられるのか尋ねられないのか等々。

さらに困ったことに、私はこの「初めて感」を見破られたくない。「初めてで全然わかんないっす」と言えればよいのだが、敵はいつでも自意識だ。
なので今日もフロントに到達するやいなや「日帰り90分で」と、さも慣れているかのように言い放った。事前に脳内で「ヒガエリキュウジュップンデ、ヒガエリキュウジュップンデ…」とリハを繰り返していたのは言うまでもない。

よく来てますよ感の演出に成功したところ、フロントの紳士が一枚の紙を差し出した。名前と電話番号を記入してくださいとのこと。もちろん従う。
よく見ると2つのチェックボックスが設けられている。1つめ「タトゥー、刺青は入っていません」と書いてある。入っていないのでチェック。
2つめ「サウナイキタイに投稿する」とある。

…困った。
平日の投稿は日に3、4つだろう。バレる、と思ってしまった。
「こいつ、投稿じゃ饒舌なくせに話し声はボソボソだったぜ!」「変なキャップ被ってたな!」などとモニタを覗き込む従業員たちから笑いを買うことになるのだ。
もちろんセンチュリオンさんに限ってそんなことはないが、またしても自意識に邪魔されチェックしなかった。ごめんなさい。

タオルを受け取ってから進み出し「ごゆっくりどうぞ」の声を背に受けたが、180度ターン。
「すいません、お風呂どこですか」
初めてなのはバレた。

そしてここまで書いて気づいたが、結局こうやって投稿してるんだから、どっちみち身バレしてもおかしくはない。変なキャップ被っててすいませんでした(ボソボソ声で)

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.07.17

19回目の訪問

さかえ湯

[ 北海道 ]

数週間前、職場の偉い人に声をかけられた。

偉「人手の足りない営業所があるんで、少しの間行ってもらえないか」
俺「4月に異動してきてやっと慣れてきたところですよ、私」
偉「…そうだな」
俺「前向きには考えられないですね。ちなみに場所はどこですか?」
偉「二十四軒だ。君の場合は通勤も大変になるし、確かに別の人のほ…」
俺「さかえ湯!花ゆづき!イクイクイクイク!」
偉「ことばの意味はわからんがとにかくすごい自信だ!」

かくして、二十四軒某所へ1ヶ月弱のレンタル移籍となった。

さかえ湯も花ゆづきも今春までは仕事帰りにふらりと立ち寄れる場所だったが、4月に異動となり、3ヶ月ほど遠ざかっていた。

3ヶ月ぶりのさかえ湯は期待通りに何も変わっていなかった。「毎月第3金曜は爆アゲSUPERロウリュ開催!」とかになってなくてよかった。

変わらないためには努力が必要だ。
無情に進み続ける時間の中、努力をしないとシワは増える。髪は減る。脳は縮む。アレはへたる。努力を重ねる者だけが、ツヤツヤ、フサフサ、キレキレ、ビンビンでいられるのだ。

久々のさかえ湯はツヤツヤ、フサフ(中略)ンだった。仕事帰りにふらりとここへ立ち寄れる日がまたやって来るなんて。しかもこんなに早く。にやけるしかない。

いや、にやけてばかりもいられない。私のような人間ですら駆り出される職場である。イージーなわけがない。
業後のさかえ湯を支えに、相当な努力をしなくてはならないだろう。努力を重ねた1ヶ月後、ここを去る時にはツ(中略)ンになっているはずだ。

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水風呂のボーイズ・ライフ

2021.07.14

7回目の訪問

望月湯

[ 北海道 ]

賛否渦巻く中、東京オリパラが迫っている。

私の三大好きなものはサウナ、熟女、サッカーだ。五輪で最も注目している競技は当然サッカーである。
オリンピックのサッカーでは過去にも色々とあったが、最も鮮烈な思い出は「マイアミの奇跡」だ。日本がブラジルを破った試合である。

しかし私はあの試合をリアルタイムで観ていない。時差が災いし、日本では月曜午前という最悪の時間帯に行われたためだ。
「学校はある程度サボってもよい」というルールを知らなかった私はあの日も普通に登校した。

スマホはもちろん、ガラケーもポケベルもない。情報を得る術はない、と思っていた。
数学の授業中だったと記憶しているが、突然隣のクラスから「うおぉぉぉぉ!」という歓声があがった。刹那、私は2つのことを悟った。
「2組、テレビ見てんじゃん」
「点入ったじゃん」

私に試合経過を知らせたのは5Gでもwi-fiでもなく、中学生の歓声だった。
休み時間を迎え、2組に在籍する唯一の友人である谷内に確認したところ、英語の大川先生がテレビをミュートにして中継を流してくれたとのこと。多分、大川自身が見たかったのだ。
サッカーに興味のない谷内に試合の詳細を尋ねたところ
「ゴールを決めたのは前園じゃない人」
「川口すごかった」
「たぶん日本勝った」
とのことだった。間違ってはいない。

望月湯からそう遠くない札幌ドームでは、東京五輪のサッカーが行われる。
無観客開催が決まり、私のチケットは紙屑となった。残念とは敢えて言わない。
あの日のマイアミも今年の札幌も、見るとすればテレビしかない。滑稽だ。
中学生から中年となり、「サウナのテレビで知らないオッサン達と見るのも楽しいかもな」と思えるくらいの余裕は持てるようになった。テレビのない望月湯のサウナ室でそんなことを考えたのもまた滑稽ではある。

サウナでサッカー観戦。オッサンではなく熟女と一緒ならばハットトリック達成だが、叶いそうにない(熟女のサッカーをサウナで見る、でも可)

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