沖縄でしか体験できないハーバルサウナBUNA SAUNA(沖縄県大宜味村)サウナ誕蒸#2
サウナ大好きクリエイティブディレクターの相沢あいさんによるインタビュー連載。サウナを作った方の想いやこだわりなどを深掘りしていきます。
サウナ施設を立ち上げた方へのインタビュー連載「サウナ誕蒸」。今回は、那覇空港から車で1時間40分。沖縄県北部やんばる地区の廃小学校敷地に建てられた「BUNA SAUNA」。
ユネスコ世界自然遺産にも登録された沖縄やんばる地区の豊かな自然を取り入れ、自家製ハーバルウォーターを使ったロウリュや季節のウィスクなど、自生する植物をふんだんに使ったサウナ施設です。
オーナーの幸野志勇さんにお話を伺いました。
幸野志勇
1982年生まれ。岩手県出身。2000年に岩手県から上京。2001年から東京でミュージシャンとして活動しつつ、田んぼを耕す。2011年3月、美容師アシスタント中に被災したのを機に沖縄移住。2012年、デザイン事務所を設立。デザイン時々米自給。2023年8月にBUNA SAUNAスタート。
沖縄移住したデザイナー、サウナオーナーになる
── 幸野さんはデザイン事務所を経営しながらサウナオーナーになられたとのことですが、沖縄移住時からサウナを作りたいと思っていたのですか?
いえ、僕は岩手県出身で、温泉マニアのおじいちゃんの影響もあり子どもの頃から温浴施設が好きだったんですけど、サウナを意識したのは2021年の秋と、わりと最近なんです。
当時は仕事が忙しくて、福岡出張のときにクタクタで訪れたのがウェルビー福岡。サウナのことをなにも知らずに入ったのですが、一気に疲れが取れたことで「人生を豊かにするのはサウナだ!」と開眼したんです。沖縄に戻ってサウナについて調べ始めてやっと世がサウナブームだと知って(笑)。
サウナ作りのモチベーションは「自分の生活にサウナを取り入れたい」だったので、最初は経営するなんて思っていませんでした。
── BUNA SAUNAは、廃校になった小学校跡地にできた「喜如嘉翔学校」内にありますよね。
仲の良い山原工藝店さんが廃校跡地活用事業のプレゼンに臨むということで、僕もデザイナーとしてチームに参画しました。一次審査に受かって現実味を帯びてきた頃、敷地内を歩いていたら焼却炉が目に飛び込んできて、直感的に「ここでサウナをやりたい!」と。焼却炉の後ろに広がる森がとても美しくて、原石だと思ったんです。
提案が通り、2022年6月から喜如嘉翔学校はスタートしました。現在は山原工藝店のほか、書店・ハンモック工房・木工工房・陶芸工房・映像作家オフィス・水彩画家アトリエ・研究企画ラボ・観光系社団事務所などが入居して、地域活性化に取り組んでいます。
BUNA SAUNAは2023年の8月末にオープンしました。一組目のお客様がマグ万平さんと清水みさとさん。東京出張時、渋谷SAUNASに行ったら万平さんがいらっしゃったので、「サウナを始めるから来て下さい!」と声を掛けたご縁で、『マグ万平ののちほどサウナで』の撮影に来ていただいたんです。
実はフィンランドから取り寄せたサウナストーブが割れていたり、壊れていたりと、2度のトラブルに見舞われ納期が大幅に遅れてしまい、撮影のときはストーブのクセや温度調整の仕方などまだ自分のなかにメソッドが築き上がってない状態で。不甲斐ない気持ちもありましたが、お二人に沢山褒めていただいて嬉しかったです。
デザイナーならでは⁉視覚でも楽しめるサウナ
── サウナ室のこだわりについて教えてください。
サウナ室に入ったときに、センダンの木を中心にひとつの絵を描くようなイメージで、視覚的に楽しめるデザインになっています。
やんばるの植物でできたウィスクを飾り枠の中に入れているのは、茶室における掛け軸のように、やんばるとリンクしているものを読み取ってほしいという思いから。植物を沢山吊しているので、サウナ室にいるときにも自然を感じることができます。
開閉で換気されて温度が低くなりがちなドア側に、最初に蒸気が降りてくるよう設計しています。設計士さんもやんばるの方で、ふたりで資料を読み込んだり、色々なサウナを訪れて壁の間を覗いてみたりと、切磋琢磨しながら作りました。外壁は日本の伝統的な建築で用いられる焼杉で、味わい深い風合いです。
── BUNA SAUNAという名前の由来を教えてください。
大宜味村では、昔から「ぶながや」という精霊がいると信じられていて、夜にはやぐらの上から川のほうを見ると「ぶながや火」が見えたという証言集があるくらい地域に根付いた文化なんです。僕の出身の岩手だと、座敷童的な立ち位置ですね。
フィンランドではトントゥがサウナの火を守ると信じられてることもあって、焼却炉の跡地にできた、ぶながやが火を守るサウナという思いを込めて名付けました。
沖縄に自生する植物をふんだんに使って、ストーリーを紡ぐ
── BUNA SAUNAでは沢山の植物を使っていますよね。
サウナを調べるなかで、バルト三国に多い「植物を使って心身をメンテナンスするハーバルサウナ」の考えに共感し、それを沖縄の植物でやりたいと思ったんです。やんばる地区は「山原」と書くくらい自然が多くて植物が多様なエリア。無農薬の薬草やハーブなどを使ってアロマオイルや芳香蒸留水を精製しています。
植物は喜如嘉翔学校で育つものや自生している月桃・琉球シナモン・ヤブニッケイ・シークヮーサー・レモングラス・ローズマリー・ライム・マイヤーレモン・フーチバなど。アロマはお客様に合わせてストーリーを考え、体験をデザインするイメージでブレンドを変えて提供しています。
たとえば現状7割がサ旅のお客様なので、遠方の方には嗅ぐ機会の少ない月桃を中心としたブレンドを、沖縄からのお客様には「やんばるまで運転お疲れ様」の気持ちを込めた癒やしのブレンドを、といった具合です。
ストーブにくべる薪もやんばるのもの。木こり文化のあった地域なので、間伐材や端材、倒木などを使い、薪のための伐採はしません。色々な木が集まるので「パンチを出したいときはサクラ」など、用途に合わせて薪を使い分けています。台風で倒木が出ると、おじいから連絡をもらえるのは沖縄ならではですよね。
── 水風呂はどこか和の趣が感じられますね。
僕は江戸文化も好きなので、風呂釜は五右衛門風呂です。どうやって設置するのかもわからなかったので、日本で唯一五右衛門風呂を作っている大和重工さんに連絡して、ひとつひとつ教えてもらいました。窓からの景色を主役にしたかったので、あえて暗くしています。
沖縄では稀少なチラーを導入した水風呂は、15〜18℃くらいに設定しています。プールや海より冷たいから、夏なら先に水風呂で体を冷やしてからサウナに入ると気持ち良いですよ。沖縄ならではのサウナの入り方も提案していきたいですね。
サウナ文化が根付いていない沖縄の地でサウナを始めるということ
── 沖縄は家に湯船がなかったり、サウナ自体も少ない土地ですが、そこでサウナを始めることに不安はなかったのでしょうか?
たしかに「サウナをやりたい」と言ったら、皆さんにキョトンとされました。でも僕は過去の経験から「大丈夫」だと思っていて。
13年前やんばるにはデザイン事務所なんてほとんどなく、周りからは「デザイン事務所を始めても食べていけないのでは?」と心配されました。移住したばかりでしたが、積極的に地域の人たちと交流していくなかで少しずつデザインやブランディングの相談が増え、仕事になりました。だから“ない”というのは“チャンス”なのだなって。
沖縄にサウナがないなら、沖縄でしか作れないサウナを作ればいい。むしろ全国から来てもらえるきっかけになるはず!とポジティブに捉えていました。
── BUNA SAUNAを経営するなかで、気づいたことなどありますか。
植物を沢山使っているのもあって、季節の移ろいに敏感になりました。花の香りや地域の匂いなど、嗅覚も鋭敏になったので、新しい自分に出会えたようで人生が楽しいです。
東京にいるときはミュージシャンの傍ら接客業をやっていたのですが、だんだんマニュアル化した接客で不特定多数の人に笑いかけるのが辛くなって…。だからサウナという接客業を始める不安もありました。でも目の前のお客様に寄り添ったサービスを提供して、心地良さそうにされているのを見たら、心から「ありがとうございます」と笑うことができたんです。
先日、遠方からお越しいただいたサウナ好きのお客様が休憩中にぼそっと「いまが人生で一番幸せかも」と仰っていて「すごい仕事をしているのかもしれない!」と感動しました。サウナを通じて、人と向き合うことの大切さを再確認できましたね。
── 今後どういったサウナにしていきたいですか。
BUNA SAUNAは、いま流行りのアツアツのサウナではありません。でも僕が好きな低温多湿なハーバルサウナも、意外と受け入れてもらえると感じています。
これからも変わらずやんばるのハーブの香りや効能、そのハーブたちが地元でどんなふうに利用されているかなど伝えていきたいです。欲を言えば大宜味村の歴史や伝統に興味を持っていただけるきっかけになれば良いですよね。
先月ブナサウナに行ったばかりですが読んでいると、また行きたくなりました。ちょうど梅雨で雨に打たれるのもまた心地良かった‥。
ほんと、ブナサウナ最高です🌿
今度行ってみます!
家族旅行がてら、寄らせて貰いますね!!