山とサウナと時々晴れvol.5「広島駅裏トレラン&サウナ ~ 3時間一本勝負!トレイルを疾走、広島市街を一望、ストーンチェアで深呼吸~」
好きなものと組み合わせたら、サウナがもっと楽しくなるはず!この連載では、2021年アドベントカレンダーにて「サウナ箱根駅伝」を執筆した、大のアウトドア派のロベルト本郷三丁目さんに、「山×サウナ」の楽しみ方を伝授してもらいます。さあ、週末は山に出かけてみませんか?
名峰の麓に湧く名水が、やがて名サウナを育むように──。
北アルプスから大垣湧水、立山から富山に流れ込む伏流水、松本の名水百選。
大雪山のトムラウシ温泉、利尻岳の甘露水。
その清冽な余韻を胸に抱きつつ……瀬戸内海の風を背に、都会と自然の狭間を駆け抜けるため、広島駅裏へ向かう。
三方を山に囲まれ、目の前には瀬戸内海がある。
都市、山、海がコンパクトに詰まった街は、そう多くない。
山があるなら、走るしかない。サウナがあるなら、その扉を開くしかない。
偶然ぽっかり空いた3時間。地図を開くと、駅裏に伸びるトレイルが見えた。
もう、行くしかない。
尾長山→牛田山→神田山
トレイルの先で出逢った「広島のアスティル」
山根口の登山口からトレイルを開始する。
マンションの脇を縫うように山に分け入る。身体が山に慣れず、心拍数が一気にあがる。
尾長山を抜け、牛田山へ。
すれ違ったハイカーの首元にはサンフレッチェ広島のマフラーが巻きつけられ、牛田山の山頂にある憩いの場では、広島東洋カープが息づいていた。
牛田山の山頂直下でランナーとすれ違う。
「登り返し、行ってきます!」そう言い残し、軽やかに駆け去る後ろ姿がかっこいい。思わず見送ってしまった。
途中で「女王の椅子」に寄り道。さっきすれ違ったランナーが「眺めが抜群だから寄ってみて」と教えてくれたのだ。地図アプリでは「ソファ岩」と出ていて、教えてもらわなければ分岐を曲がらず、素通りしていたはずだ。
「女王の椅子」
……ん?
……ん?
見た瞬間、笑ってしまった。
脳裏に思い浮かんだのは、新橋アスティルのストーンチェア、テルマベッドだ。
「広島でアスティルを感じるとは……」
ストーンチェアに深く腰掛けると、眼下には広島市街が広がり、太田川の水面が日の光を浴びて一瞬、煌めくのが見えた。
背後には駆け抜けてきた山がある。遠くには輝く瀬戸内海。
出逢いという偶然と好天という偶然が重なり合い、この景色が目の前に現れた。
最後は二葉山を登り返し、シブリカ公園へ。
公園の水道で汗を流した、ふと顔を上げた先に懸垂台があった。
やるしかないよね、懸垂。
旅トレラン、旅懸垂。
その後、広島在住の友人に紹介されたお好み焼き屋は、ちょうどランチ後の休憩時間で入れなかったハプニングも笑い話に。一汗かいたら、次はサウナへ。
10年ぶりのニュージャパンEX
フィンランド化と昭和の残り香 昭和サウナを愛する戦友に捧ぐ
かつて竹原にあった岩乃屋。
広島に来るたび、アマモが敷き詰められたい岩乃屋の石風呂とニュージャパンをセットで巡るのが定番だった。
あれから10年。
久々のニュージャパンは、オートロウリュつきのサウナ室、セルフロウリュができるサウナ室が新設、さらに外気浴スペースも出来上がっており、充実のサウナエリアに進化を遂げていた。
でも、完全に変わったわけじゃない。休憩室には昭和サウナの余韻がしっかり残っている。
リクライニングチェアに沈み込み、目を閉じる。
気づけば、うたた寝していた。体の芯まで温まり、目覚めた瞬間の心地よさは、今も昔も変わらない。
外に出て、流川へ。
腰に手を当てて、ビールスタンド重富にて、生ビールを流し込む。
2軒目は、お好み焼き屋さんへ。お隣さんとトレーニング談義に花を咲かせつつ、その地のサウナと地のもの、黄金コンビを堪能した。
2024年オープンのベネトレ広島
サウナ×ジム×ワークが叶う新空間
翌朝、向かったのは「ベネトレ広島」。
サウナエリアに入った瞬間、感じた。
これは心底、サウナ好きが作った施設だ。
ジム、ワークスペース、サウナが一体化している。
もし広島でリモートワークをするならば、ここ一択。ここに定住を誓う。
今のところ、サウナ目当ての客が多く、サッカーの試合がある時は生ビール500円のサービスもある。
まずは、ジムエリアで一汗流す。
「立って半畳、寝て一畳、ベンチプレスラックで1.5畳」という諺がある。
スクワットとベンチプレスさえできれば、ご機嫌になれる。必要にして最高の設備だ。
さらに、途中から貸切ジム状態になる。サウナの貸切と同価値な貸切ジムは、最高の贅沢だろう。
サウナは会話OKエリアと静かにくつろぐ瞑想エリアが明確に分かれており、大人の社交場にも、ひとりの内省にも対応している。
設備は申し分なし。ハードは十二分に整っている。
あとは、ここに集う人たちがどんな物語を紡いでいくか。
さらに、ソフトが磨かれて、地域とトレーニーに「愛される施設」へ鍛え上げられる日も近いはず。
この日の懸垂と共に再訪を誓う。
山があれば、サウナがある。
広島駅裏15分で始められるトレラン。新幹線を降りて30分後には、もう山を駆けている。鎌倉も神戸もいいが、広島も負けていない。偶然与えられた3時間。山の空気を吸い、汗をかき、サウナで大発汗。
初めて訪れる低山に分け入り、初めてのサウナ室の扉を開く。このワクワクは、どこまでも尽きない。山があれば、サウナがある。サウナと山があれば、どこへでも行ける。
■今日のコース
広島駅新幹線口→山根口→尾長山→牛田山→神田山→
ソファ岩→二葉山→シリブカ公園 (距離 10km のぼり700m)