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仕事の延長や打ち合わせ、果てはWBC観戦など、なにかとサ活は日を改めなければならない状況が続いていた。サ活の前に用事の山を登らねばならないその姿は求道者のそれであるため仁左衛門の湯へやってきたのだ。受付で女性と間違われるがいつものことだ。
浴場へ入ると何故かいつも濃い湯気が立ち込めて、全容をはっきりさせない出で立ちだ。日替わりの湯であり、今日は露天へ向かう道すがらにサウナがある。
久しぶりのサウナだ。まだ早いのか、私唯一人だ。もちろん最上段の真ん中に掛ける。真後ろにあるライトが後光に、外から見れば天孫降臨も甚だしい佇まいだ。
ここ仁左衛門の湯には26度前後の源泉がある。もちろん水風呂もあるのだがこちらをチョイスしたい。手摺のついた直線の露天廊下を映画「300~帝国の進撃~」に登場する、崖から敵船に跳び移るアテナイ兵士のように駆ける。もちろんイメージである。この源泉から、内湯がガラス越しに見えるが前述の通り濃霧であり、更に私は眼鏡を外した状態であったため、見間違いかもしれないが──やおら男二人組が肩を抱き寄せている──妖しい雰囲気だ。
サ活は3セットを満了し、加温源泉に浮かぶ。いよいよ心臓が不規則になってきたため立ち上がると、季節を纏った南風が26度の源泉へ私を誘う。
た、頼む……!
やめてくれ……
嗚呼─────
ここ仁左衛門の湯は有ること無いことの境界が曖昧となり幽玄な雰囲気を醸し出している。有るような無いような、可能性だけでいうなら無限である。そこから貴方が得るものもまた無限の通りがあるのだろう。求道者ならば、一度訪ねてみるのがよろしかろう。
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