2019.08.15 登録

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  • 好きなサウナ 静かで灰暗い、利用者会見互いの礼儀のあるサウナが好ましい。特色を出したデザインもあると長い文が書けちゃう。
  • プロフィール 1137文字数制限に弩憤慨の長文サウナー。 スランプに陥ると迷走しがち。
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サウナ即身仏卍

2023.10.30

1回目の訪問

華の湯HIBURAN

[ 福岡県 ]

私はなぜか博多に向けて高速道路のバスの中。自動車整備工の友人が車を取りに行くというので、観光がてらの休日だ。佐賀県に引き取りに、その途中で呼子の烏賊を。小倉城下のホテルに着いたとき、夕陽は紫川の水平線の下。漁火のように街頭が街を彩っている。
橋を渡ると華の湯HIBURANがある。
門からしてオリエンタルな雰囲気。GoogleMapではスーパー銭湯と書いてあるがなんとも妖しいものである。980円を払って脱衣場を抜ける。何処を取ってもオリエンタル。湯霧の中にこっそり動く狛犬がいてもなんらおかしくはない。
ドライサウナと塩サウナがある。塩サウナは故障中だった。ドライサウナは露天の手前、その隣に水風呂もある。2段の広くはない、地元密着のサウナだ。テレビの音が常連の世間話に霞む。
外気浴スペースは露天に出て左。二人分のマットが敷いてある。他にも椅子が点在している。
寝転んで天を仰ぐ。残念だが天井がついていて星空は見えない。しかし東洋の雰囲気がまるでリゾート。眼を閉じるとうろおぼえの、少し傾いたオリオン座が天井を透過して見える。
もうすっかり、秋である。
サ活が終われば露天風呂の馬借の湯に浮かぶ。高くない水温は過ぎた夏を思い出すに丁度よい。壁に魚が群がるレリーフがある。私はふと、その魚の重なりにマーメイドを見いだした。もしここに訪れることがあれば、探して見てほしい。
今日はハロウィーンらしい。城下町の商店街には渋谷の真似とばかりにコスプレ若者がごった返している。私達はそれに毒づくことなく今日の酒場を探し始める。郷に入れば郷に従うことが異邦人には肝要なのだ。

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サウナ即身仏卍

2023.10.08

1回目の訪問

近江湯

[ 滋賀県 ]

友人宅の庭の手入れを目的に湖西道路を錆びた軽トラが走る。今日は昼までの仕事の予定で朝の渋滞に苛立ちながらナビゲーションに耳を傾ける。高速道路も使っていないのに所要時間表示は56分。8時半に着くという。そんなに早く着けるものかねと悪態を吐くほどの距離であるが、その時刻通りに友人宅が見えてくる。所謂魔法は常に思いの外のものである。湖西道路に乾杯。
庭仕事を終える頃には針が真上を指しており、少々の買い物を済ませて近江湯へ向かう。
今日はこの後、私の持ち寄った獣肉で謝肉祭を催す段取りだ。
昔ながらの出で立ちで、番台に金を支払い『はいから』な硝子張りのロッカーに荷物を預ける。なるほどここは美術館。客の背中をキャンバスに昇り龍が描かれているのも納得である。
浴場手前右側にサウナはあり、すし詰めで5人入れるくらいだろうか。1段だけの、小さなサウナだ。隣に座る名画観賞といこう。当方近視と乱視であるが、これほど近ければさして問題はない。有線から東京ららばいなど流れてくる。どうにもセンスの良いチョイスだ。ふたつ隣の壮年男性と拍子が合っていることに我が身の老いを感じる。
浴場入り口すぐ左手に水風呂がある。近江湯へ来たサウナーのサ活を読んでいるとどうやら井戸水らしい。しかし当時の私は新たに搬入された名画に釘付けで、水質など慮外もいいところだった。

近江湯の向かいにいかにもな自販機。友とパインアメサイダーを購入し、友人宅へ戻る。
その喉越しは午前5時の湖西道路の風によく似ていた。

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2023.09.15

1回目の訪問

新型コロナウィルスに感染しても休みを取らなかった(取れなかったが正しい)私であるが、この度オートバイのエンジンから異音につき休業することに決めた。この相棒は私の行動の起点である。戦友が不調になった今、労働意欲は私の中からすっかり抜け落ちてしまった。
オートバイを整備に出して友人と滋賀県は東近江市、永源寺のキャンプ場にやって来たのだ。
車を出せば道の駅や渓流魚の販売店がある。ここの鮒寿司は絶品と言う他はない。麓のスーパーで買った近江牛と共に七輪で焼けば、足りないピースといえばもうサウナだけである。
キャンプ場から麓へおりる長い一本道を行くと八風の湯がある。駐車場に多くの車が停まっているのはここが宿泊施設も兼ねているからだろう。店内は落ち着いた出で立ちで、床の質感が心地好い。タオルセットが無料貸し出しなので手荷物も減らすことができる。
内湯を抜けると水風呂があり、サウナはすぐ左側。どうやら露天の先に塩サウナもある。岩魚を塩まぶしで焼いた身であることだし、まずは塩サウナからいこう。
入って左に水場、右に塩甕がある。丸太の椅子に腰掛けて塩に疲労が吸着して流れ出るまでただただ待つ。外気浴スペースは出てすぐ、丸太の椅子がある。
露天を寄り道しよう。寝転び湯、つぼ湯、そして2ヶ所の露天風呂という構成だ。ターゲットとする年齢層が高いのか、内湯の「ぬるめ」以外全てが熱い湯だ。たまらず水風呂に入り、サウナへ。
三段ある階段状のドライサウナだ。タイミングが良かったのか唯一人。もちろん最上段でこのサウナと仲良くなろう。最上段最高気温はまさしく高めの年齢層向きであった。
水風呂が心地好い。キャンプ場では川に足を浸けていた程度であったが今は肩まで、心置きなく浸かろう。

日が暮れて、また七輪で岩魚を焼いた。ふくよかさに堪らず矢継ぎ早に酒が注がれる。
眼下を流れる雄大な河川の、どてっ腹を眺める。水風呂よりもっと浸かれそうだと微睡む大きな欅の木の下見わたし。

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2023.08.16

12回目の訪問

台風7号にせっつかれながら庭仕事。ご先祖様もこんなときに帰って来ないで下さいまし!地獄に叩き返して差し上げますわ!!
ああ……隣の川が道と同じ高さにきて精神的に限界!
皆様ごきげんよう!!ファッキンな今日はたんたん温泉で暴風外気浴に決まりですのよ!
するとクロイツ(名刺)を交換したお姉さま(常連客)から突然の電話ですわ!
「今日はたんたん温泉休館ですわよーーーッッッ」
な、なんですってーーーッッッ!?
それが昨日の話しですの。台風災害処理を終えて経ヶ岬で青い海を見ればたんたん温泉の開店時間に丁度良くなりますわ。天然水風呂にトリプルアクセル着水かましますわ!
昼の薔薇の温室(サウナ)にはいつもと違う顔ぶれ。比較的年長の方々がいらっしゃるのね……。わたくしはできるだけ目立たず、上品に立ち振舞いますのよ。そこらの小娘と一緒にしないで下さいまし!
天然水水風呂にこのお盆の疲れを置き去りにしたら外気浴の時間ですわ。丸太のベンチに生えるガーデンパラソルが夏ですわね。ここに腰掛け先刻の経ヶ岬を思いだしますの。
──ああ……なんだかビーチでパラソルの下海を眺めてた気がしますわね──
おおよそ夏と言われる間は仕事しかしていなかった気がしますけれど、この思い出を胸にわたくしの夏はターンエンドですわ!!

最高の夏ですのよ!!!!!

たんたん温泉の周りには福寿の水と奥山の名水の二ヶ所湧水がある。今回は後者をポリタンクに詰め、この地を去ることとする。
地元のスーパーで海鮮物を買い込み縦貫道を下るのが常であるが、宮津天橋立ICが見えたとたん、嫌悪感のような不快感のようななにかが私の脳によぎる。顔もきっと同じ表情をしていただろう。それは故郷を持たない身であるが故の懊悩であり、それこそが終生消えることのない呪いの根源であるのかもしれない。

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2023.08.13

11回目の訪問

お盆も盛りときたものだが、私は庭木のお手入れに丹後半島へ車を走らせる。八木西~園部間で起きるお決まりの渋滞に嵌まり車を歩かせる羽目となった。
この現場は3日間掛かり、なんと台風が直撃の進路をとっているではないか。追加仕事を申し付けられ、作業にキリがついたのは西日が隠れて間もない頃だった。
たんたん温泉福寿の湯。丹後半島に来る際はここに来るか、そうでないならシャワーで済ませる身構えである。日替わり湯は右側、海水浴客が押し寄せているかと予想は外れ。どうやら17時あたりがピークだったようだ。
サウナ室内は5人ほど。その中に常連客がふたり、あとは若い衆だ。
テレビには阪神対ヤクルト。どうやら私が入る直前に逆転し、常連を沸かせているようだ。
サウナを出ると既に外は暗く、時おり鹿の警戒鳴きが聞こえる。そんななかで天然水の水風呂に浸かるとなんだか、帰ってきたような気持ちになる。それは故郷を持たない私にあるのは有り得ないが、おおよその人々には当たり前のものだろうか。
常連と同タイミングでたんたん温泉の受付にいるとその常連は弁当を持っていた。土日や盆休み限定で注文できるらしい。これに乗らない手はないと明日の晩飯を予約する。
まだまだ奥の深いたんたん温泉福寿の湯。この地に来たらここで決まりだ。

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2023.06.27

13回目の訪問

ここに来るときは大学の先輩と共に、そして仕事後にが定番である。カーオーディオから吹く夏を想わせる風が車内を抜けて行く。
到着したのは20時も中ほど。食堂でうどんのお勧め御膳を注文する。コロナ等の理由でお勧め御膳は200円の値上がりを見せたが、企業努力がわかる出来だ。1280円で悪くない。そのときの先輩との他愛もない雑談の中に、ふいに夏を感じた。それはありもしない故郷で、ありもしない青春の中を二人で駆けていた情景。虚構でしかないがどこか懐かしい。この先輩とは4年離れているので同じ制服になることはないが。

サ活が始まったのは21時を過ぎてから。オートロウリュは22時を残すばかりである。
なんだか記憶しているより室内が暑い。そういえばここ水口温泉に来るのもいつぶりだろう。いわゆる記憶と実際とでは差がある、あれだろうか。僅か6分で1、2回目は終わる。
3セット目にオートロウリュを合わせて最上段へ昇る。やはり暑い。常連のような口ぶりの若者が今日は暑いとのたまう。これでオートロウリュがきたらどうなっちゃうの。
3セット目が終わり、私は無我夢中でリクライニングチェアーに向かう。水風呂もだ。心臓が早鐘のように脈打ち、しばらくは何も考えられそうにない。

夜空はどうやら雲に覆われているようだ。あと何回か雨が降れば夏が来る。またとない夏が、二度と来ない夏が。
忘れられぬ夏にしよう、三十数年変わらず夏はワクワクする。
新しく興る早鐘の心音はさっきのものとは違ってみえた。

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2023.06.15

10回目の訪問

私の手は血で汚れている。
豊岡の仕事は今日が最終日。仕事終わりにたんたん温泉でサ活をするのが毎年の常となっている。その道すがら、アナグマが息絶えているのを見た。ロードキルだ。夜行性のアナグマがなぜ明るいうちに道路にいたのか分からない。早朝か、もしくはこの曇天でいつもより早く活動したのか。
路肩に車を停めて近寄り、触る。まだ温かい。すぐ横を川が流れているのでそこで腹を割る。雌だ。膨れた腹はガス溜まりではなく乳だ。本当に死んでから少しも経っていない。

たんたん温泉に着いたのは19時くらいで、サウナに入ると阪神対オリックスの3戦目が映っていた。常連の方と野球談義をする。内臓を抜いたアナグマを氷で冷やす必要があるので、今回は2セットだけ。最終日だから倍はイキタイと思っていたが仕方がない。2セット目の最初が独りきりだった。この瞬間を大事にして、サ活を終える。
それにしても……この後先考えずに物事に手を出す性分はなんとかならないものだろうか。福寿の水風呂に浸かる間、ずっとそんなことを思っていた。

京都縦貫自動車道を下る手前から恐ろしいほど強く雨が降った。丹後の冗談のような強い雨が、手に染み込んだ血の汚れや自身に対する呆れも、この時ばかりは忘れさせてくれたのだった。

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2023.06.14

9回目の訪問

皆様ごきげんよう。わたくしは昨日から豊岡に出張していますの。朝4時から京都縦貫自動車道を爆走して日没まで仕事し続けてたんたん温泉が定休日ですのよーーーーッッッ!!発狂してお嬢様化したわたくしですが、今日こそ福寿の水風呂にルパンダイブをキメてやりますわ!!
日替わり湯なたんたん温泉、お嬢様湯は向かって左側。身を浄めて薔薇の温室(サウナ)でお姉さま方(常連)とお紅茶(阪神対オリックスの野球中継)シバくことに致しましょう。
入場するとお姉さま方が7人、ところ狭しと並んでおりました。ああ、薔薇ってそういう……。お茶会にはご無沙汰なわたくしでしたが、お姉さま方はすぐにわたくしを思い出してくれましたの。話題は自衛隊の銃乱射事件や京都府警の乱交パーティ、Z世代のモラルに大麻と花盛り。ここに福寿の天然水風呂でガンギマリですわ!!
女子力が上がりましてよ!!!!
お控えなすってくださいまし!!!!!!!!


たんたん温泉の外に出ると外はさすがに暗くなっていた。弱い雨が降り頻る中、車に向かうと濃い花の香りが立ち込めていることに気付いた。暗闇の中で蜂蜜を食べているようなイメージだが、何の花の香りだったかはサウナの熱と福寿の水に浮かされた頭では思い出せなかった。

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2023.05.26

3回目の訪問

ゴールデンウィークの1日から今日まで働き詰めであり、年末までノンストップ勤労の可能性まで出てきた。これからの耐久レースの状況を鑑みるにここらあたりでピットインするべきである。
まだ高い西日をバイクで追いかけると仁左衛門の湯が見えてくる。到着は18時を回った頃、人は疎らで空きの靴ロッカーを探すのに苦労はなかった。こんな人生でも113(いいさ)。これからのサ活を占う、良いナンバーだ。
浴場はまだ明るく、日替わりの湯は「藤壷」の方だ。サウナは露天に至る道すがらにある。身体を浄めていざ入場。意外と人が多く、テレビには阪神対巨人、坂本選手がちょうど長打を撃ったところから始まる。阪神贔屓の客が控え目な歓声を上げる様を、私は近視と乱視の中で溶かして見ていた。
そのまま露天に出ると右手に水風呂がある。汗をそこで流し、水には浸からない。そのまま反対方向を向けば水温26度ほどの源泉に身を委ねられるからだ。
心臓の悪い私にはこちらのほうが良い。身体に籠った熱が水平線へ出航し、跡形も無くなるまで見送れば次セットが始まる。
ここ仁左衛門の湯には塩サウナもある。露天へ出て直進し、突き当たりを右に進むと見えてくる。塩櫃が2基あり、塩サウナにはテレビも存在しない。男達は皆黙って身体に塩を擦り付ける。ここは療養所。戦士達が傷を癒し、次の戦場に想いを馳せる場所。その場と人間がその雰囲気を醸し出しており、私もまたその一人である。

サ活を終える頃には20時過ぎ、今は受付前にある広場でサ活を投稿している。ちょっとした飲み物を買い、自販機近くのソファーで腰かけていると子連れが現れおおはしゃぎ。私の真横を行ったり来たりの大暴れだ。その場を発って遠くの席に座る。親御さんには私が苛立って移動したように見られただろうが、私の心は靴ロッカーのナンバーのように穏やかだった。

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2023.05.07

12回目の訪問

ゴールデンウィーク最終日が終わる。今日の滋賀は強烈な雨が降り頻るあんまりな天気だった。仕事は前日に終わっており、実に8年ぶりのゴールデンウィーク休日が、この様なのである。
オフロードバイクで一頻り遊んだあと水口温泉つばきの湯でサ活。この1日には天候など関係はない。ゴキゲンなゴールデンウィーク最終日だ。
雨にもかかわらず車の入りは多く、腐ってもゴールデンウィークであるがサウナはそこまで人はいない。21時のオートロウリュにはオフロードコースの頂上に佇むように、最上段にいる私がいた。ストーブがライトで照らされるとまるで富士山頂の初日の出だ。先輩ともども手を合わせて拝むことはなんら不自然なことではない。
少し長めのインターバルを取り、気付けば22時のオートロウリュの時間だ。3分前に入ったが最上段ががら空きなのは僥倖という言葉が相応しい。
さあ、これがゴールデンウィーク最後のロウリュ、ラストサ活だ。
8年ぶりの休日は熱風の遥か後ろ、私はまた仕事へ飛び立つ猛禽である。大和民族の戦士はこうして形作られるのだ。休日の使い方を正しく理解した、有意義な1日であった。

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2023.05.04

11回目の訪問

水口温泉のある滋賀県にいるのはもちろん行楽理由ではないがここにいればまた水口温泉に行く段取りが付くのだ。恐るべし二律背反。
ゴールデンウィークということで大盛況の水口温泉である。駐車場はもちろん満杯、食堂も3組待ちときたものだ。ガンガンワーキングの私に道を譲れ。
一回目のサ活は21時のオートロウリュから始まる。3段目に陣取ると隣にサウナハットを被った男が座る。私と同様に最上段を狙う動きを見せるが私のスピードに敵うものはいない。格好を付けさせて頂く!

私は目が悪く、サウナにいるときは眼鏡を外している。外気浴スペースへ向けて歩くと、やおら男二人組が魚の水揚げをしている。そんな馬鹿な。眼鏡をかけると魚ではなくご老人だった。どうやら逆上せたようだ。寝椅子に座らされて暫くぐったりしていた。
2回目のサ活ではそれどころではない、なんとなく気になり方であった。
露天へ出て老人に話しかけるとなんとまた風呂に入ってから上がると言う。助け起こすのはいいが、はてさて湯に連れていっていいものか。
参ったな。近くの寝椅子で様子を見るか……水口温泉で高齢社会の縮図が展開された瞬間である。
結局のところ連れの奥様が従業員に相談していたらしく、2回目の事は起きずに済んだ。こういった事にも対処しなければならないとは、従業員の皆様に頭が下がる思いだ。
3回目はなんだかんだ22時になってしまい2回目のオートロウリュの運びとなった。不思議と最上段ががら空きだったのは水口温泉で徳を積んだがゆえだろうか。
外気浴の寝椅子も全て空いていたが、なんとなくご老人の寝ていた寝椅子を避ける。それはこの三十数年のうちに我が身に刻まれたしきたり(もっと近い意味の単語はあるが、あえてこちらを使う)だった。

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2023.04.21

10回目の訪問

水口温泉つばきの湯は今日11周年だという。偶然仕事に来ていた私は先輩と祝福に駆け付けたのだ。回数券と食堂で金を落とすとくじを引かされ、タオルをプレゼントしてもらう。なるほど記念の品。祝うのも祝われるのも多い人生はよいものだね。
既に22時近くになっており最後のオートロウリュのタイミングだ。サウナに入ると最上段は満員で、先輩と共に3段目に座る。ほどなくして1人抜けたので先輩は最上段へ。サウナーが抜けたところに座り最上段を狙うが、仕事上スピードフォルムに仕上がっている私には勝てない。ロウリュ寸前に最上段へ滑り込む。
水口温泉のサウナはロウリュ時にストーブへ光を当てる。このとき私と先輩は丁度神社の参拝のように手を合わせて一礼する。このストーブには神格があるのだ。貴方がこのサ活を見て且つここに訪れることがあればここに信仰があることを忘れないで頂きたい。
外気浴をするが今日はいつもより気温が低く、また風も強い。短い時間で切り上げ露天風呂へ向かうが月替わりの湯は満員だったのでもう片方に向かう。湯を見るとワインのように赤くなっていた。今日は流血はしていないはずだ。これもまた水口温泉の11周年記念による計らいだろうか。
子供の頃──あれは熊本の阿蘇であったが──こういったワイン風呂というのを忌避していたことをふと思い出した。だがこれは水口温泉の記念日を彩る薔薇の束。あのときより遥かに成長した私は身体の芯が温まるまで、心ゆくまで浸かることにする。

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2023.04.16

8回目の訪問

連続11日間に渡る庭造りが終わった。英単語の“exhausted”の意味は頭も体も忘れることは無いだろう。
この丹後半島とも暫しの別れ、となれば今回の立役者であるたんたん温泉福寿の湯へ挨拶に行くのは明日が仕事なくらい当然のことである。
地元のスーパー「ジョイクックおくだ」で海鮮を買い込むと最早思い残すことはなくサウナを楽しめる。
サ活を始めたのは19時半を回ったあたりで閉店は21時。この1時間半は得難い至福の時だ。
タオルを頭に掛ける。常連客が地元のお勧め店の話をしているのでどうしても聞き耳を立ててしまう。次に来るとき、機会があればお世話になろうと記憶を熱から守る。
外気浴スペースで滴が当たるのを肌で感じる。思えば──今日は昼から雨の予報であったが、荷物を積み込む最後の時まで雨は降らなかった。この日程の実に半分が雨であり大いに悩まされたものだが、最後の最後でこの地が憐憫の情を垂れ流してくれたのではないだろうか。そう思えるほどタイミングの良いものだった。
サウナに戻ると常連客がまだ情報を垂れ流していた。
このサ活が終わればまた暫くの間空くことになる。そう思うと足取りが重くなるが、時間と雨足が許してはくれない。後ろ向きになる私を次の仕事へと促すのだ。
ままならないものだね。その独り言だけこの地に置いていこう。
夜の縦貫高速道に乗り、今はこうしてサービスエリアでサ活を書いている。
ここで作った庭の写真を載せておこうと思う。ご縁があれば掴みたいのが初代の性だ。
このサウナイキタイで営業をする輩もそうはいないだろうから。

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2023.04.15

7回目の訪問

庭造りは第4コーナーを曲がった。明日が日程の半分が雨であり、セメン(セメント、コンクリートを使う作業のこと)をするには最悪の日々の〆切だ。明日もなんと昼から雨。
丹後半島の桜花は自然と私との熾烈なデッドヒートの中に、消える!!
それならばと車を走らせる先はもちろんたんたん温泉福寿の湯。行く途中も雨が降り頻り、なんと霧まで出るという状況だ。なるほど勝負はもう始まっているのだ。今日の男湯は高龍の湯。向かって右側である。身体を清めていると常連のお二方が声を掛けてくれる。雨だからなのかいつもより退散が早い。サ室も人は疎らで、独りになることしばしばである。
外気浴をしているときも霧雨が辺り一面を覆い、まるでたんたん温泉を隠しているようだ。
20時を回ると人気はさらに少なくなる、というか私しか居なくなった。サ室で唯一人、明日の作業について考えていた。テレビは誰かの何かのドキュメンタリーのようなものを映していた気がするが、私の耳にまともな音として聴こえるのはサウナストーブの弾ける音だけだった。
月すら隠れて20時半。丸太のベンチに腰掛けて身体の状態を確かめる。11日間の工程を為し得るのもここたんたん温泉があってこそだ。明日の作業がつつがなく終わるように自身の手入れをする。
サウナ、水風呂、外気浴スペース、露天風呂、そして内湯とお一人様一周旅行を終えた頃にはそろそろ閉店のお時間だ。さんざ悩まされてきた雨であったが、こんな僥倖があるなら、そんなに悪いものではないのかもしれない。
それともこれは、嵐の前の静けさなのだろうか。

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2023.04.11

6回目の訪問

庭造りは中盤に差し掛かり、今日は仕事上がりに材料をを取りに戻らなければならない。となれば地元のスーパーで寿司やあら汁を買い込み道端で食べる。一度も冷凍されてない、素晴らしい鮮度だ。なんでも店長が釣ったものが並んでいるのだとか。職人の手ではないので鱗がついていることがあるがそれも魅力のうちだ。口許についていた鱗を払うと、風に舞う花びらにまぎれて消えた。
早く帰りたい気持ちもあるが、風がたんたん温泉へ向いているから行かない手はない。というか車を停めているこの道自体たんたん温泉へ続いている。

日替わり湯は向かって左側、石組水風呂の方だ。サウナへ入り、常連客に挨拶をする。そのくらいには出入りしているのである。
話題は阪神や、メジャーへ行った某投手、そして選挙結果についてだ。本来私はあまり人と関わろうとしない性質だが、たんたん温泉と福寿の水が思想を裏返すのだ。それがまた心地よく、それは故郷を持たぬ身の人間こそ強く感じられるものだった。
2セット目はタイミングの関係で私ひとりのサウナである。この時間帯は常連客が多く、またその常連があまり外気浴をしないので、非常に珍しい光景だ。これから2時間半駆けなければならない私に、豊岡の地が話のネタをくれたのだ。だからこそ、今こうして睡眠時間を削っているのである。

常連客と脱衣場で別れ、外に出る頃には暗くなっていた。電灯のない道を、故郷でもない場所に向けて走り去る。
前進する動きが鈍いように感じたのは、向かい風だったからだろうか。

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2023.04.08

5回目の訪問

ここ数日丹後半島で庭造りをしている。
昨日は雨だった。気象予報士は的を外し今日も雨である。失敗しても飯が食えるとはまこと良いご身分だ。石を並べるために掘ったスペースは泥沼と化し、土を締め固める作業はできるわけもない。そして狙ったかのように重要な作業のときばかり強く降るのだ。
このような心のささくれ立ちはたんたん温泉福寿の湯でサ活をすることでのみ癒される。
豊岡へ続く道を走ると花の時季の終わりが観てとれる。トンネルを抜けた先にある気温計は7℃と光っていた。

土曜日であるから人は多く、サウナは満員だ。まだ早い時間帯なので常連客はまだ登板していない。まずは軽く流して天然水の水風呂に挨拶をしよう。水を頭からかけて汗を流すときに心臓が悲鳴を上げたので浸かりはしなかった。不整脈という症状が認知されていない時代には、これはいわゆる「ときめき」と感じていたに違いない。こんな外気温だ。春という単語に騙されてはいけない。
次にサウナに入る頃には福寿の湯のスタメンが集合していた。ベテラン(常連)勢で固めたいぶし銀の骨太球団だ。世代交代には失敗しつつあるが。野球中継がないので、皆テレビそっちのけで加齢の話をしている。

サ活を終え、露天風呂に浮かぶ。見上げると露天風呂の屋根、そして仕事中さんざ私を悩ませた雲が遠くに見える。そのうち暑くなって縁石に腰をかけて休憩する。そんなことをしていると1人、入ってきた。遠くに腰かけるが、すぐに私の近くまで来て腰を下ろす。
おいおい、こんなところでボーイ・ミーツ・ボーイってか。仕事で来てんだぜオイ──と肩をすくめる。縁石から降りて湯に浸かると、先ほどまで男がいた水面が跳ねているのが見えた。その正体は日中私を悩ませた雨であり、男はそれから逃げてきたわけだ。やれやれ、こんなところまで追ってくるなんて私が好き過ぎるというわけだ。ボーイ・ミーツ・ネイチャーならそう悪いものではない、そう思えるほど精神が回復するくらいには、ここでのサ活は効果的だ。

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2023.03.17

2回目の訪問

仕事の延長や打ち合わせ、果てはWBC観戦など、なにかとサ活は日を改めなければならない状況が続いていた。サ活の前に用事の山を登らねばならないその姿は求道者のそれであるため仁左衛門の湯へやってきたのだ。受付で女性と間違われるがいつものことだ。
浴場へ入ると何故かいつも濃い湯気が立ち込めて、全容をはっきりさせない出で立ちだ。日替わりの湯であり、今日は露天へ向かう道すがらにサウナがある。
久しぶりのサウナだ。まだ早いのか、私唯一人だ。もちろん最上段の真ん中に掛ける。真後ろにあるライトが後光に、外から見れば天孫降臨も甚だしい佇まいだ。
ここ仁左衛門の湯には26度前後の源泉がある。もちろん水風呂もあるのだがこちらをチョイスしたい。手摺のついた直線の露天廊下を映画「300~帝国の進撃~」に登場する、崖から敵船に跳び移るアテナイ兵士のように駆ける。もちろんイメージである。この源泉から、内湯がガラス越しに見えるが前述の通り濃霧であり、更に私は眼鏡を外した状態であったため、見間違いかもしれないが──やおら男二人組が肩を抱き寄せている──妖しい雰囲気だ。
サ活は3セットを満了し、加温源泉に浮かぶ。いよいよ心臓が不規則になってきたため立ち上がると、季節を纏った南風が26度の源泉へ私を誘う。
た、頼む……!
やめてくれ……
嗚呼─────

ここ仁左衛門の湯は有ること無いことの境界が曖昧となり幽玄な雰囲気を醸し出している。有るような無いような、可能性だけでいうなら無限である。そこから貴方が得るものもまた無限の通りがあるのだろう。求道者ならば、一度訪ねてみるのがよろしかろう。

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2023.01.22

1回目の訪問

全国旅行支援が蔓延する中、丹後奥伊根温泉油屋へやって来た。いわゆる天然温泉旅館という贅沢だ。来週には猛烈な寒波が来る予報で、このあたりには近付けなくなるだろう。そう考えると選択肢は他にない。
日本海側ではこの時期、庭木の松等に雪吊りをする光景が見られる。積雪で枝が折れぬよう、柱を立てて天辺から各枝に縄を垂らし、枝を引っ張り上げて固定する。遠くから見たら布地のない傘のように見えるものだ。この油屋も多くの松が植わっており、なかなか壮観だ。エントランスは2階になり、温泉は1階にあるようだ。チェックインを済ませ、温泉エリアへ翼を畳み垂直降下する様は経ヶ岬に住まう猛禽から得た身体使いであった。
脱衣場から見える内湯と、露天風呂の構成だ。水風呂はない。サウナが見えないのであるかどうか不安になる。
ふと右を見ると、ふたり入るか、いや小柄な私でも無理だろう、一人用のサウナがあるではないか。ガラスの窓からすぐ1段の階段と座面が見える。見た目が平面過ぎて騙し絵ではないだろうかという、細々だが確かなサウナが奥伊根の海岸にへばりついているのだ。立地や歴史を肌で体験してもらおうという旅館側の粋なはからいに頭が下がりすぎて岸壁のテトラポッド群に刺さるばかりだ。
身体を清めて先ずは内湯へ。なんだかぬるぬるする湯はアルカリ泉であるからだろう。そして眼前の窓から、遠くまで見渡せるであろう澄んだ眺望のように透明な温泉だ。今日はあいにくの雨だが。
ではいざ限界地(失礼である)のサウナへ。
入場するとやはり狭い、狭い!しかし良い、こうでなくては困るのだ。起動し始めたばかりなのか、室温が低い。
…………。
……。
この室温には私しかいないのだ。
私はふたりは入れぬ虚空に向かい、タオルをはためかせることに決めた。
ヒーターに秘匿されていた熱がまろびでてくる毎に幸福を感じる。それも最果ての、断崖絶壁にしか存在できぬ儚き楽園で。2セットを終えて露天に浮かべば途端に雨が降る。断続的な強弱が潮騒に聴こえる。そうであるならば、うねる湯気は岸壁に弾ける高波である。

ここでは18時から好きな時間に蟹尽くしの晩御飯が楽しめる。私が食事を終えたのは20時を回る頃だった。
脱衣場にいるのはもちろん独り占めを味わうために他ならない。この断崖絶壁サウナは15時から23時までしか利用できない。宿泊客が蟹に気をとられている内に浴場とサウナの領有権を主張することこそここでは最高の贅沢である。
ここのサウナはどこのものより狭い。水風呂もない。だがそこには私たちがサウナにある固定観念や因果律に潰されぬよう引っ張り上げる縄が、確かに天上より垂れていたのだ。

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サウナ即身仏卍

2022.12.20

1回目の訪問

皆様ごきげんよう。
今回はサウナ即身成仏お嬢様として現出しましたわ!何事も度胸と経験で成り立っているものですのよ。
このクソ寒い中守山天然温泉ほたるの湯にやってきましたわ。気温計は0度を下回り、カップ麺作る時間でお手軽に死ねますことよ!
ほたるの湯に来るのは2回目ですの。内湯が薬湯なのでこのファッキンコールドな季節にもってこいですわ~!
あら……普通のお湯ですわ。どうやら薬湯は別日のようですの。
わたくしはお嬢様として相応しく、笑顔で通りすぎますのよ。悪態を吐くのは文中だけですわ!
チッッ!!

サウナ室内では保育士様達の現状についての番組が流れておりましたの。
強い言葉などを使わなければならない状況や、監視カメラ設置による保育士への不信感などの話題だ。
根幹を成す性格や常識は保育園、幼稚園で形成される。三つ子の魂百までという言葉もあるほどだ。最近の事件にある虐待は以ての外であるが、罰則を安易に禁じることにより生じる問題がある。それは報復を受けなくなることによる、正誤の判断が付かなくなることだ。躾の施されぬ幼児が野放図に走り出すようになるのは当然であるし、そのまま成長した先など想像したくもない。
思えば今回の虐待事件は保育士に何もかもを押し付ける状態であるということも一因だったのではないか。あらゆるフラストレーションが暴走して起こした凶行であるならば、今後も同じような事件が起こり続けるだろう。
今までの手段の中には荒削りなものもあっただろうが、その時々で最も効果的な手段を選ぶことこそ教育には重要だ。それをマニュアル化し、先生の立場を法律で守るという環境を整えるべきだ。また先生達に規制を押し付けるのではなく、その手段を取らなくていいようにしつけることこそ親の責任であるだろう。
小生も人を指導する立場ではあるが、言葉すら通じないこともある幼児の世話や教育を担う方々に、ほとほと頭が下がる思いである──

真冬のサウナが気持ち良すぎてトリップしてましたわ!HeartBeatが不規則になる前にトンズラ一択ですわ。露天スペースには寝転び湯があるので選ばぬ手はございませんことよ!でもこの季節、お湯に当たらない部分はすぐ冷えてしまうのでケバブのように回転することをお勧め致しますわ!
女子力が上がりましてよーーーッッ!!
このほたるの湯は各浴槽の距離が長いので、わたくしのように発熱能力が著しく低い方は秒でナムアミできるので要注意ですのよ。
ウフフ!!
守山天然温泉ほたるの湯、堪能致しましてよ!今後もお世話になりますので何卒よしなに!
それでは皆様ごきげんよう✨

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サウナ即身仏卍

2022.12.11

9回目の訪問

庭師の師走ともなれば1日も休みがないが定説──新年にむけての繁忙期であるのだが──にもかかわらず私はバイクの整備のため滋賀県は竜王にきている。
整備士が長らく不在であったため、1年分の整備箇所が溜まり、ついには故障してしまったのだ。
私は仕事より相棒が大事である。これは誰が何を言えることではない。決して水口温泉つばきの湯の熱波が浴びたい下心で行動しているわけではないと、ここに筆で断じておきたい。
なんとこの12月11日、水口温泉ではガラポンの日であり、入場者に1回くじ引きのチャンスが与えられる。素晴らしい滑り出しだ。まるで水口温泉に行けと云う天啓ではないか。
抽選は入り口でやっていた。
結果は──私は庭師であり、危険高所作業に従事するものである。こんなところで運を使ってはいけないのだ。

身を清めるとすぐに20時、最後の熱波師によるロウリュが始まった。
すし詰めになったサウナ亡者共に挨拶する従業員熱波師。彼らの瞳に光が見えなかったのはサウナ室内が薄暗かったからだろう。
この時期私は水風呂に浸かることができない。心臓のこともあるのだが、年々身体の発熱量が減り続けている感覚がある。
外気浴に行くまでに外気浴が終わり、日曜日ということもあり、2段目に腰かける。
3段目のサウナーがサウナから出ると武装勢力タリバンが入ってきた。タオルを三角に口許を巻き、姿勢を低くし3段目に突進する様は突撃兵のそれである。
そうでなければサウナ室の上段や政権を奪取できないのだ。滋賀県は水口くんだりのサウナ室内から異国の情緒に想いを馳せる。
そこには自身と他人の進退に対する漠然とした葛藤が、確かに含まれていた。

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