観音湯が教えてくれたこと
はじめまして。フクベエと申します。
簡単に自己紹介をします。東京で働くサラリーマンです。サウナ歴は4年半ほど。好きなサウナは昭和の雰囲気が残る銭湯サウナや、景色・空気が良いところのサウナです。今年訪れたサウナの個人的に好きだったところは、北海道の「白銀荘」や「メープルロッジ」、熊本の南阿蘇にある「四季の森」、ウラジオストクの「banya more」です。あぁ、また足を伸ばしたい、、、
さて、このアドベントカレンダー企画に当選してから、どんなことを書こうか、ああでもないこうでもない、といろいろ考えました。先に述べたような、各地で出会った方との想い出を書くのも良いなぁ、とも思ったのですが、先日私がよく行くサウナでとある出来事があり、あたり前だけど大切なことだなぁと実感したことがありました。
なので、今回はそのことについて書かせてもらいます。
観音湯との出会い
私は1年半ほど前に新宿から京王線で一駅西に進んだ「笹塚」という街に引っ越してきました。その前も近くに住んでいたのですが、当時マルシンスパにドハマりしていたこともあり「歩いてマルシンに行けるとこが良い」と思ったのが引っ越しのきっかけでした。
それからはマルシンスパに足繁く通い、帰り道に笹塚周辺のお店でご飯を食べる毎日が続きました。サウナが好きになったおかげで笹塚という街も好きになりました。そんなサウナの力に魅せられた私は「サウナがある街の魅力を発信できないかなぁ」とぼんやり考えるようになり、同じ想いを持った友人とサウナマップを作ることになりました。
お互いが知っているサウナの情報交換していると「マルシンも良いけどここも良いよ」と友人に勧められたのが隣の駅、幡ヶ谷にある観音湯という銭湯でした。
私はさっそく友人に連れられて観音湯に行くことになりました。
男湯ののれんをくぐると、そこはいたって普通、街の銭湯でした。
しかし、3セットを終えたとき、私はにやけてしまうほど観音湯の虜になっていました。
お尻がアツくて座れないほどのボナサウナ
深く心地良い冷たさの水風呂
風がほどよく吹き込む外気浴スペース
それはそれは最高でした。
「天空のアジト」がマルシンスパだとすると観音湯は「地上のアジト」だと個人的に思っています。(地上のアジトって、普通のアジトですね)
その魅力に気づいてからはマルシンスパだけでなく観音湯にも足を伸ばすようになり、常連さんに昔の渋谷周辺の銭湯事情や、近くの美味しいお店を教えてもらいました。
そんなアットホームな雰囲気も観音湯をもっと好きになる理由の1つでした。
観音湯が教えてくれたこと
観音湯ファンになってからしばらくして、いつものようにサウナ室で暖まっていると、常連のおじいさんにいきなり話かけられたことがありました。
その方とは何度かサウナ室で一緒になったことはありましたが、お話するのは初めてでした。おじいさんは額の汗をぬぐり、古くなった壁を見ながらこう言いました。
「ここ、良いだろぉ?古いかもしんないけど、それすらも好きになるよなぁ」
と。
私の記憶ではそのおじいさんは少し笑みを浮かべていたと思います。
観音湯は古くからある銭湯です。
髪染めの注意書きは文字が見えなくなっていて、
水風呂の温度計は温度を示す針がありません。
でも、そんなところが不思議と愛せてしまうというか、とても落ち着くのです。昔友人と観音湯の水風呂に入りながらこんな会話をしたことがありました。
「うわぁ気持ちいい…」
「やばいわぁ…ここ何度~?」(針のない水温計を見て)
「わかんない(笑)」
「え?ほんとだ、わかんない(笑)」
「でもまぁ、いいじゃん、気持ち良いし」
こんな会話だったと思います。確かにあのとき、ぼくたちは観音湯の古さを好きになっていました。そんな想い出が頭をよぎった私は、少し頬を上げながら
「愛せちゃいますね」
と返すと、その言葉へ被せるようにして目線を合わすことなくおじいさんは言いました。
「他で補えりぁいいんだよ、別にぜんぶ完璧じゃなくたってさぁ、なんだってそうなんだから」
と。
初対面だからか間が合わず、ぎこちない会話であったものの、おじいさんが放ったその言葉はまるで自分自身へのアドバイスのようで、心に深く刺さりました。たしかに、サウナの熱さが抜群だからか、水風呂が心地いいからか、きっとそういう長所が他を補って、短所まで好きになれてるのかもしれない。
あぁ、良いところも悪いところも自分らしさだと認めてみるって大事かも、とそのときに思いました。これが観音湯と常連のおじいさんから教わった、あたり前だけど大切なことです。
きっとぼくが観音湯で学んだようなことは、他の銭湯でも感じられるでしょうし、もしかしたら他の銭湯では違うことを学べるかもしれません。なので、みなさんのいつも行くサウナで学んだことや感じたこと、これからもサ活を通して教えてもらえたら嬉しいです。
また、観音湯に興味を持たれた方は、幡ヶ谷周辺にいらっしゃったときに訪れてみてください。近くの6号通り商店街や甲州街道沿いで食べられるご飯は、サウナ飯に持ってこいの美味しいお店ばかりです。
そして3セットした後、きっと「完璧じゃなくたって大丈夫」と心の中で思えるはずです。
最後に
本編とは関係のない話なのですが、感謝の意味を込めて観音湯の店主さんへ。実は、観音湯はサウナマップに掲載できなかった施設の1つでした。まだ店主さんと初対面である私が、一方的に掲載をお願いをするのはご迷惑になると思ったからです。
でも、頻繁に通うようになって、観音湯が本当に大好きになって、いつまでもこの銭湯に通いたいと思うようになったので、今回取材のお願いをすることを決めました。
ここの店主さん、さすがはあのパワーあるサウナを管理するご主人。厳格なイメージ漂うご年配の方で、この観音湯を長年支えられてきたことを考えると敬意を払うに値するお方です。
喉の手術をされていることから会話をさせていただいたことはないのですが、私がいつも鍵とタオルを返却する際に御礼を言い、頷いて返答していただけるのが私と店主さんとのいつものコミュニケーションです。
先日3週間ほど入院されることになり、その期間観音湯は営業を中止することになりました。無事営業が再開され、嬉しさのあまり「復帰されて、よかったです」といつもの御礼とともにお伝えしました。なんとも返答しにくい言葉を投げてしまったことをすぐに後悔しましたが、そのときもゆっくりと頷いていただき、少しでも想いが伝わったのが嬉しかったです。
今回、観音湯の記事を書くにあたり、浴場内の写真があった方が良いと思い、いつもの御礼に加えてその旨をお伝えし、撮影を許可してもらえました。スマホの音声ツールで集合時間を決めて営業前の時間に撮影しました。
お忙しい中、ご対応いただけましたことをこの場をお借りして御礼を述べさせていただきます。誠にありがとうございました。
観音湯
住所:東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目46-7
時間:13時30分~0時00分(不定休)
素敵な言葉の共有ありがとうございます。
素敵な文章、ありがとうございます🍀
目頭が熱くなりました( o̴̶̷᷄௰o̴̶̷᷅ )ありがとうございます😌
心温まる文章でした。
フクベエさんありがトントゥ。
ここの水風呂気持ち良すぎてついつい長く入ってしまいますよね。マルシンばかりになってたけど、久しぶりに行きたくなりました!