一ヶ月のサ禁から堰を切ったように金閣寺湯に雪崩れ込む。しかし激情に任せて入店するように見えて、実は目的があってのことである。
サ禁生活の中でこのサウナイキタイを血走った眼で回覧中、気になる文言を見た。
水曜サ活は9月30日まで。
水曜サ活はしたことないし、なんならサ活すらできていないが?
サウナイキタイの思慮不足ともいえる急かしにカチ切れては殺意を抱いて、今回のサ活の運びとなる。
金閣寺湯の自販機にはイオンウォーターがある。初めての水曜サ活であるので、これを用いて行うものとする。
水風呂の管理にも気を使うほど、地域住民に愛されているサウナは今日も元気に高温だ。昨日は私用で遅くまで起きていたので、この温度がいっとう効く。
さて......脱衣場で110円を握り、一糸纏わずイオンウォーターを購入する。この山吹、熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに頂くことをその食物、飲料に対する礼儀と心得ている。
これは馴染む!馴染むぞ!!──まるでサ活のために生まれし戦士だ。
イオンウォーターを装填し、サウナへ入室する。これは......!?水やお茶と違いこのイオンウォーター、身体へ長く留まっている。まるで染み入るようだ!これは存分にサウナを堪能できる。
サ活の最後に、露天風呂に入る。
空を見上げると、もうすっかり夜空だ。
サウナ内のテレビは、昼夜が同じ長さになる季節だという。
イオンウォーターの残りを身体に流し込み、バイクと私はまた秋を駆ける。
イオンウォーターを用いたサ活で一句。
サウナ秋
水曜夜長に
染入(しみ)る水
![](https://img.sauna-ikitai.com/sauna/2629_20200923_211621_F2huR2qLMJ_large.jpg)
![](https://img.sauna-ikitai.com/sauna/2629_20200923_211653_CLcEEntt1O_large.jpg)
隙あらばサウナへ行こうとはや一ヶ月。あまりにも忙しい日々に、京都市は北区でととのわぬ鬼神が現出す。
能面の新作とも取れる形相に、受付のお姉さんの顔はひきつっていたことだろう。それを見せぬよう、マスクをすることはもてなしの意味がある。
久々のサウナである。普通のでは最早役者不足なのだ。高温サウナである金閣寺湯。ここしかないのだ。
人ならぬ異形異類は早々に身を清め水風呂へ沈む。しっかりと冷えた、気遣いのみえる水だ。
サウナへ入室すると大相撲の熱気に包まれることになる。鬼神はこういった手合いを好むため、関脇同士のぶつかり合いも充分に楽しめる。
取組が終わると退室する。時計でいちいち見なくても、それでよいのだ。そもそもあやかしに時計は読めない。
露天スペースへ出ると、まだ外は明るい。
そうだ。私はサウナのために仕事を神速で終わらせたのだ。この瞬間のために!
人である記憶を取り戻し、サ活の最後に露天風呂へ入る。わざわざ他所より温泉水を調達している、人の心を感じずにはいられぬものだ──
男の暖簾をくぐり、受付のお姉さんに会釈する。
急に現れた人間なので、記憶にはなかったことだろう。