圧巻のコンテナサウナ12棟!5737コンナサウナ(北海道帯広市)サウナ誕蒸#5
サウナ大好きクリエイティブディレクターの相沢あいさんによるインタビュー連載。サウナを作った方の想いやこだわりなどを深掘りしていきます。
サウナ施設を立ち上げた方へのインタビュー連載「サウナ誕蒸」。今回は北海道、帯広駅から車で10分に位置する「5737コンナサウナ」。
国内最大級のサウナ拠点として、約4400m²の敷地に薪ストーブを熱源とした12棟ものコンテナサウナ(内6棟は行き来自由)、最深部が190cmにも及ぶ水風呂を有する、フィンランドの湖畔をテーマとしたサウナ施設です。
なぜそんなにも多くのサウナを作ることになったのか?オーナーの古田義貴さんにお話を伺いました。
古田 義貴
株式会社住計画FURUTA 代表取締役・3代目社表北海道帯広市に拠点を置く工務店を経営し、37歳で社長に就任。木造建築の経験を活かし、より豊かな暮らしを提供するためのアイデアを追求。幼少期から「家にサウナのある暮らし」を経験し、現在は親目線でサウナのある暮らしを送る。
コロナ禍で世の中が変わることを予想し、サウナの立ち上げを決意
── サウナを作ろうと思ったきっかけは?
僕が工務店の社長に就任した直後、世はコロナ禍になって。世界的に木材の供給量が下がって価格が高騰したウッドショックにより、仕事ができない時期もあるなかで、「これから世の中がガラッと変わっていくな」と感じたんです。
ステイホームでリフォームの需要が増えたので、コロナが明けたら需要が減ることは予想できました。なので何か新しいことを始める必要があると思い、事業再構築補助金を使ってサウナを立ち上げることを決意したんです。
社内の目線を揃えるため、自分が考えていることをスタッフに話したり、役員と一緒に色々な施設の視察に行って、サウナ業界の盛り上がりや効能を体感してもらうことで、本気でやりたいということを伝えました。
── 施設を訪問されたなかで良かったサウナはどこですか。
非日常的な魅せ方やストーリーを持つ佐賀のらかんの湯と、逆に日常に寄り添いおじさんに心地良い老舗の新橋アスティルへの訪問は、人気の理由・すたれない理由を考えるきっかけになって良かったです。
全国のサウナを可能な限り体験していくなかで、帯広十勝の水質が素晴らしいことを再認識しつつ、フィンランドに近い気候を活かして、フィンランドのサウナ文化をベースにした施設作りを目指すことにしました。イメージは湖畔に建つサウナ小屋。サウナを出て湖に飛び込む体験を帯広でできたら…と方向性も固まりました。
サウナが親子の絆を深めてくれた
── もともとサウナがお好きだったのですか?
僕にとってサウナは、家にお風呂があるような感覚です。両親・祖父母もサウナが好きで、週末は自宅のサウナに入る日でした。月に何度かは十勝川温泉に連れて行ってもらっていましたし、サウナは特別なものじゃなかったんです。
父は無口なほうで、あまり良い親子関係ではなかったのですが、サウナに入る時だけはリラックスしているからか「最近学校はどうなんだ?」と話をしてくれました。父を怖い人だと思っていましたが、本当は優しいと知れたのはサウナのおかげ。それがすごく良い思い出になっていて、今では父とも良好な関係を築けているので、僕にはサウナ室内で話すことへの特別な思いがあります。
最近のサウナブームではサウナを非日常かつ自分と向き合う場と定義されることが多く、瞑想やメディテーションを打ち出し、黙浴を絶対とする風潮がありますよね。それも良いのですが、サウナがもっと日常の一部として会話の場になっても良いのでは…とも思っているんです。
── サウナを作るなかで一番大変だったことは何ですか。
サウナを作るためには、いくつか行政に話を通して認可を受けなくてはなくてはなりません。建築基準法は、本業の領域なのですぐに通せましたし、保健所が管轄となる公衆浴場法は、札幌などは水着混浴NGなのですが、帯広ではすぐに了承を得られたので問題ありませんでした。
難しかったのが、消防法です。当時は全国的に薪サウナが少なく、12棟もの薪サウナ施設なんて前例がありませんでしたから、消防署サイドもどう判断して良いのかわからないのか返答をもらえなくて。認可が下りるまでできることがないので、「薪サウナ」で検索しては出てきた情報を毎日のように資料として提出しました。
1ヶ月以上掛けて認可が下りた時には、オープン目前。ギリギリだったので、本当に嬉しかったです。
建築廃材を薪として使い、薪ストーブの良さを知ってもらう
── 12棟ものコンテナサウナもすごいですが、全てが薪ストーブというのは他に聞いたことがありません。
むしろ熱源は薪ストーブ以外考えなくて(笑)。工務店という職業柄、大量に木材の切れっ端があるので、これまではチップに加工して引き取ってもらっていたのですが、何かに活用できないかとずっと考えていたんです。薪として建築廃材を使っているのでSDGsですし、ランニングコストも掛かりません。
薪ストーブは電気ストーブと違ってどれだけ水を掛けても壊れないので、沢山ロウリュしていただいてOK。個人的には70度くらいの温度帯で、湿度を高くして体感温度を上げるのが好きです。日常的に入るなら低温のほうが体への負担も掛かりづらいので、「温度が低くても良い」という価値観を広めていきたいですね。
何より僕が子どもの頃から慣れ親しんできた薪ストーブの特有の芯から温まる心地良さ、心穏やかになる焚き火、直火で炙ることで芳ばしくて美味しくなる焚き火メシなど、人間の原点に帰るような「火のある暮らし」を多くの人に知ってもらいたいです。
── 入場したら3カ国のサウナストーブを比較しながら楽しめるのは、とても魅力的だと思いました。
コンナサウナには、サウナのショールームとしての側面があります。家にサウナを設置するために、好みのメーカーやストーブを見つけてほしかったので本当は12棟全てに違うサウナストーブを入れたかったのですが、パーツの互換性を考えて3つのメーカーを選びました。
一番メジャーで手に入りやすいフィンランドのHARVIAは、車でいったらトヨタような安心感のあるバランスが良いストーブです。日本のモキ製作所のストーブは、一言でいうならやんちゃ。コントロールしづらいし薪を食うけどそのぶんゴーゴーと燃え続けてパワフルなので、一番温度帯が高いサウナに入れています。
エストニアのHUUMは見た目がスタイリッシュで、丸い石が沢山詰まっているからかマイルドでしっとり。じっくり付き合えるので、温度が低めのサウナに入れています。ゆくゆくは自分でもオリジナルのサウナストーブを作りたいです!
薪サウナは気温や薪の大きさ、炎の燃え方によってコンディションが変わるので、一定の温度にはなりません。ストーブを管理するスタッフには、「熱くなりすぎたら外気をいれて冷ましたりしても良いから、とにかく経験を積んでほしい」と伝えています。サウナ好きなスタッフが多いので、それぞれが試行錯誤しながら頑張ってくれていますよ。
氷点下でも凍らない水風呂の秘密
── 水風呂がかなり広いですよね!
最深190cm、地下水なので夏場でも冷たい天然水かけ流しの巨大な水風呂は、フィンランドで湖に飛び込む体験をイメージしています。おそらく30人は入れるのではないでしょうか。
湧き水が近隣の方の上水道として使われている話を聞いていたので、水ありきで土地を選びました。土地の大家さんも知っている方でしたし、ちょっと奥まっているので住宅地に転用するのは難しそうなのもあって、サウナにはぴったりだったんです。
── 一番寒い季節だと、水風呂が凍ってアヴァント状態になるのではないのですか?
水があるところは、すべからく暖房設備を併設して冬場でも氷点下にならないようにしたり、排水も深めに掘って凍って破裂しないように施工して、掃除やメンテナンスができるようにしています。水風呂は掛け流しで動いているので凍らないはずですが、本当に凍らないのかは氷点下になってみないとわからないので正直ドキドキでした。
マイナス20℃を越える厳冬期にも営業しているので、パスポートいらずで本場フィンランド気分を味わえます。水風呂のほうが温かいので水面から湯気が出ていて、写真だけ見ると温泉みたいですよ。くったり湖やフィンランドのアヴァントに行く前に、体を慣らす練習にも良いかもしれません。
── 入場したら時間制限なく、6棟の男女共用サウナを使い放題ってすごいシステムですよね。
北海道で入浴料3000円は高い部類に入りますし、時間制限システムの導入が難しかったのもあって、男女共有の6棟を時間無制限で入り放題にしました。何より時間に追われてサウナに入ってほしくなくて。
広くて混み合うことはありませんし、お腹が空いたらがっつり丼もの・焚き火串焼き・特製ドリンクなどもご用意していますので、どうぞ心ゆくまでサウナを楽しんでください。
工務店という立場から、サウナで社会をより良くしていきたい
── コンナサウナは現状日本で一番サウナの棟数が多いと思われるのですが、なぜ12棟も作られたのでしょうか。
実は最初はあまり考えてなくて(笑)。とにかくやるなら日本一にしたい!と思って、真ん中に水風呂をレイアウトして、その周りにいくつ置けるか考えた結果が12棟。
僕は住宅建築をする工務店の立場から、より豊かでリラックスできる暮らしの一部としてサウナを楽しめる空間を提供したいと思っています。コンナサウナには体験型ショールーム的な側面もあるので、気に入ったらサウナごと買えるんです。
というのも、色々なサウナ施設に行ったけれど、結局自分で自宅に作ったサウナが一番良いと感じているから。自分のサウナなら、温度も湿度も使い勝手も、誰と入るかも含めて自分のライフスタイルに合わせることができます。
工務店の仕事は家を建てることですが、ただ建てるだけでなくて、地域の皆さんの暮らしを豊かにする会社にしたいと思っています。サウナに入ることで免疫力を高めて健康になったり、精神的に豊かになると信じているので、自宅にサウナを作っていただきたいですね。
実際に気に入ってくださったお客様からコンテナ型サウナを受注いただいたり、ホテルのサウナ室の改修工事などもご依頼いただきました。
── コンテナ型サウナの良いところはどんなところでしょうか。
吊ることができるので、トラックに載せて移動可能なところです。十勝のGANKE FESや広尾町の海風サウナフェスにも出張しましたし、10月11日からは⽇本最⼤級の屋外サウナイベント「サウナの街サっぽろ」にも出展しますので、ぜひコンナサウナを体験しにきてください。
ゆくゆくは各自治体の災害用の備蓄庫としても使われたら良いな、と思っています。北海道の冬は電力供給されなくなると死に直結しますから、薪ストーブがあれば救える人命があるはずなんです。サウナとしてだけでなく色々な使い方ができる可能性を秘めているところが、コンテナサウナの魅力のひとつなのではないでしょうか。
── 5737コンナサウナという施設名にはどんな想いが込められていますか。
5737は単純に私の生年月日、昭和57年3月7日なんですが、「どんなサウナがいいですか?コンナサウナどうですか?あなたに合わせたサウナを作りますよ」という気持ちを込めています。
数百キロもの遠方からリピートしてくれているお客様や、「コンナサウナはサ国十勝の誇り」と嬉しいお言葉を掛けてくださる地元のヘビーユーザーのお客様の期待に応えられるよう、十勝でサウナ文化を根付かせ、全国のサウナ愛好者が集まる場を作っていきたいです。
サウナを一過性のブームにしないためにも、「熱いからイヤ」「水風呂が苦手」と敬遠している人に、60〜70度の湿度が高い低温サウナに入ってもらい、水風呂に入らずとも外気浴で充分に涼んで、サウナの良さに気づいていただく…。
そうやってサウナ愛好家の裾野を広げていくことで、サウナ付き住宅の需要拡大にも取り組んでいきたいですね。
コンテナサウナ!上からの写真、圧巻!! 親子の素敵なお話し!! イキタイ!蒸されたいー🥵