蒸スカ

四角い網カゴにぎっしり石を詰め込んだ壁状のサウナストーブの前で蒸される。メトス社のイズネスを彷彿とさせる面構えだがどうやら他社の遠赤ストーブのようだ。こいつが鎮座するサ室は30分置きに照明が赤一色になり送風機による凶悪な爆風が牙を剥く。滝の如く注がれるオートロウリュに加えすべてを蒸し尽くす爆風熱波の龍虎乱舞。うっかりしているとサウナハットが吹き飛ばされそうになる風圧だ。来るぞ。全乗組員に告ぐ、これより激しい熱波の嵐に突入する。各員衝撃に備えたまえ。私はこの熱波をサ室の竜の巣と呼んでいる。

男湯と女湯が週替わりで入れ替わるため今週は男湯がドライサウナ、女湯がミストサウナになっていた。どちらに当たっても問題はない。なぜなら両浴場とも屋外にバレルサウナがあるからだ。巨大なおみくじの筒をドテッと倒したような六角形の小屋にはサウナの名門HARVIAのストーブが鎮座している。バレルサウナといえば完全予約制のイメージがあるがこの施設では予約なしの日帰りで利用できる点が嬉しい。それにしてもなんて良い香りなんだ。ヒノキの香りにふんわり包み込まれ私の瞼は次第に重くなっていく。目が、目が…。

外注の熱波師集団を中心に「村社会」が形成されておりその輪にズバッと飛び込んでいける者ならこれほど楽しいサ活環境はないだろう。しかし一人静かにサ活をしたい方や初めて訪れる県外客はモヤモヤとした居心地の悪さを覚えるかもしれない。実際、私もその少数派の一人である。熱波師たちがキャラ売りにガツガツ必死なのはサウナイキタイのサ活投稿を見れば分かる通り。こういったシガラミに目をつむれば、ここはほんとに素晴らしい施設だ。