月見湯
銭湯 - 北海道 札幌市
銭湯 - 北海道 札幌市
雨が上がった。
22時前に仕事が終わり、見上げた夜空にしばらくぶりの晴れ間が広がっている。
思えば、雨を避け、ここ2日間ばかり銭湯に行っていなかった。
とはいえ、この時間だ。今から満足いくまで味わえる銭湯は限られている。22時閉店では間に合わない。22時半閉店でも短すぎる。
仕事の疲れは体中に張り付いている。今、どこかに行こうというのも億劫だ。
『正論と常識は楽しい?』
誰かの声が聞こえる。
『賢明を気取れば、心は安らぎそう?』
わかった。
これは手稲から「喜楽湯」「月見湯」「望月湯」を自転車ではしごした狂人からのメッセージだ。しかも、たった1日で、だというのだから、まともな神経ではない。耳を貸す必要はない。そんなのふつうじゃない。
『そうね。まともやふつうを盾にして、その場でずっと足踏みしているあなたの姿ってすごく素敵よ?とっても楽しそうだもの!』
……うるせえッ!!
24時閉店の月見湯、俺も行っちゃるわい!!月寒の坂、22時からチャリで駆け上がっちゃるわい!!
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ちくしょおおおおおおおおお
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うおおおおおおおおおおおおお
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ぴえええええええん
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ちかれたああああああああ
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おれとてもちかれたああああああ
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疲れた体に月見湯のサウナが染みる。水風呂は冷たすぎることなく、サウナは熱すぎることなく。
夜風がほほを撫で、ラドン風呂では近頃私たちがどれだけいい感じなのかがさわやかに歌い上げられている。それを聞いている私もいい感じだ。悪いわね。ありがとね。これからもよろしくね。
来てよかった。
ありがとう、狂気の女神。一歩踏み出す勇気さえあれば、俺でも空だって飛べる。
そんな気持ちに月曜日からなれた。
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「ありがとうございました!おやすみなさい!」
気持ちのいい店員さんの挨拶を背に、帰りの自転車にまたがる。すると体から疲れが抜けていることに気がつく。
ほんと、来てよかった。改めてそう思った。
また空を見上げる。
すると月見湯の向こうにジンライムのようなお月様が輝いている。
「『YEAH』って言えー!」
また誰かの声が聞こえた。いい月曜日だった。
狂気の女神に。
いやああああああ、恥ずかちいぃぃぃぃぃ!こんな変態の人たちのところで名を呼ばれることになるとは…でも、風呂上がりの夜空に思うの、これがワタシの生きる道。やっぱりなんか悔しいいいいい!
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