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欧州最大!ドイツが誇るサウナのテーマパーク『Therme Erding』
2023年にドイツで行われた国際サウナ会議にサウナイキタイが日本代表として参加してきたことをきっかけに始まったドイツのサウナ連載。
2023年にドイツで行われた国際サウナ会議にサウナイキタイが日本代表として参加してきたことをきっかけに始まったドイツのサウナ連載。
海外のビッグサイズに驚くことってありますよね。コストコで味わうあの感覚、「こんなでかいタッパー容器でアイス食べてるのか!」というあれです。ドイツ南部ミュンヘン郊外にある「Therme Erding」(テルメエルディング)では、サウナ版「でけーーー!!」を存分に楽しむことができます。いくら汗をかいても足りやしない。規格外のサウナ施設をご紹介します。
※注:撮影不可につき、施設の画像はTherme Erding公式サイトより引用させていただいております
サウナだけで35種類、総面積はディズニー級!?
(出典)Therme Erding
テルメエルディング全体の敷地総面積は430,000 m²。日本のディズニーシーが490,000 m²なので、いかにケタ違いのデカさを誇る施設かわかるでしょう。駐車場などをのぞいて実際にサウナやプールとして使っている面積は180,000m²ですが、それでも東京ドーム4つ分。デカい。果てしなくデカい。
テルメエルディングは3つのエリアに別れていて、入場口や料金が異なります。ウォータースライダーなどがある「トロピカル スパ & ウォーター パーク」、水着でプールとサウナを楽しめる「バイタリティオアシス」、そして全裸でプールとサウナを楽しめる「スパエリア&サウナ」です。
3つのエリアに点在するサウナは、合計なんと35種類!1日3セット計算だと2週間弱かかってしまいます。今回はサウナがもっとも充実している「スパエリア&サウナ」エリアにある、24種類に絞って紹介したいと思います。
個人的に、何年も前から憧れていたテルメエルディング。建物が見えてきたとき、思わず駆け出してしまいました。早く、早く行かないと!お父さん、早く!サウナが逃げちゃう!そんな感覚を久々に思い出しました。まさにサウナのテーマパークです。
規模がでかすぎて浮かれてこういうこともしちゃいたくなります。
アウフグース×多種多様なサウナ
さて、サウナだけで24種類と聞くと、いったいどうやったらそんなに違いを作れるのか、不思議に思う方もいるでしょう。まずはサウナの種類をすべてご紹介します。
めちゃくちゃ多い!!
どうやっても1日では全部回りきれないだろうことを理解していただけたでしょうか。サウナとしての体験が「そこまで違うか?」と思うかもしれませんが、そこはドイツ。アウフグースやプログラムできっちり特色を出してきます。アウフグースに合わせてサウナからサウナへ移動していると、食事や休憩もままならないほど。自分をコントロールしないと、バテてしまうので要注意です。
エンタメへの探究心がすごい
滞在時は1日スケジュールをあけていましたが、結果的には13セットでタイムオーバーとなりました。普段から考えれば入りすぎですが、あっという間すぎて「もっと入りたい」とすら思えてしまいました。
アウフグースタイムテーブルの一部。2時間で12回もあります。
ちなみに1日に行われるアウフグースは施設全体で、なんと150回以上…!サウナ&スパエリアだけで120回以上もあります。もうすごすぎて頭クラクラしますよね、音楽フェスのタイムスケジュールより細かいです。なかでも強烈だったプログラムをご紹介します。
シベリアの熱いサイクロン
(出典)Therme Erding
まずは「シベリアンバーニャ」のアウフグース。100名ほどが入れるサウナの中央には巨大な盃が鎮座していて、底にウィスクが沈んでいます。
時間になると屈強なロシア男(風?)が入ってきて、大音量で音楽を流します。これが凄まじい音量。ベンチが揺れてケツがビリビリ痺れるほどの爆音です。彼がウィスクを使って信じられない量のロウリュをすると、客席のボルテージは急上昇!ウィスクを振り回し、熱い湯と熱波を客席へぶちまけると「キャアアア」「ヴオオオオオオ!!」というゲルマンサウナーの大歓声がサウナ室を支配します。
なんだこのエネルギーは…みんなどれだけのストレスを日々抱えてるんだ…!?とパニック気味になるほどの大熱狂。そしてかなり熱い!ディズニーランドでいえばスプラッシュマウンテンくらい華のあるプログラムでした。
「サウナ王」専用席
(出典)Therme Erding
続いて「ケルティックスローン」のショーアウフグース。会場は藁葺き屋根の巨大サウナ小屋です。
この日はロックスター2人組という設定で、ソウルフルな音楽と演者の動きが連動するものでした。アウフグース自体は部屋がとにかく広く天井も高いため、巨大なフラッグのようなものを使うことがほとんどで、ショーがメインという印象。仰ぎそのものをしっかり楽しむという意味ではSATAMAに軍配が上がります。(参考:SATAMAレポート記事)
ここで注目したいのは、座席です。お分りいただけますでしょうか、左右の座席をつなぐ橋のど真ん中、ここに1つだけベンチがあるんです。完全なる「我、サウナ王なり」シート、屈強な熱耐性がないとここへ座ることはためらわれるでしょう。
訪れた際は、屈強で髭面の男性や、おそらく70歳代であろうご夫婦(!)が座られてました。もちろん周囲からは羨望と敬意の眼差しが注がれます。いつかあそこに座ってショーを受けられるサウナーになりたいですね。
ノンアルビールとボードゲーム
(出典)Therme Erding
テルメエルディングには「それは一体…?」とイメージがあまりつかないプログラムもたくさんあります。ちょっとしたモヤモヤ感も個人的には楽しいところ。
例えば家のリビング風サウナの中のプログラムで、ノンアルコールビールが配られるというものがありました。テーブルにはトランプなどボードゲームが置いてあるので、飲みながらひと勝負していると蒸しあがるという塩梅です。
試しにトランプでポーカーをやってみましたが、熱くてイライラして全然楽しめませんでした。なんなんだ。
サウナ室でパンを焼く「ベーカリー」
(出典)Therme Erding
こうした「ちょいモヤ」プログラムで一番衝撃だったのが「ベーカリー」です。
サウナの中はパン工房の雰囲気で、ドイツ名物プレッツェルやらのレリーフが飾ってあります。アウフグースや特別プログラムは満席になるので15分前に行くと、すでに8割の席が埋まっていたため慌てて滑り込みます。
低温とはいえじわじわ汗をかいてきたころ、パン屋風の男が入ってきます。「みんなお待たせ!大好きなパンの時間だぜ!!」と言いながら、サウナ室内にあるオーブン(本当にオーブンだったのか…)にパンを次々と放り込んで行きます。「焼けたら戻ってくるぜ!」と言い残して立ち去るパン屋。うそだろ、ここからさらに待つのか…。
さらに10分ほどしてもう蒸されも限界だぞ…という時「お待たせ!!パンが焼けたぜ!!」と男が帰ってきました。湧き上がる歓声。配られるパン。ハグハグと美味しそうにサウナで食べ出すドイツの人々。まじですか、サウナ室で今一番欲しいものが「水」で、最下位が「パン」じゃないですかね…?
(出典)Therme Erding
とりあえず食べてみる。うん、普通にうまい。でも水が欲しい。一刻も早く水が飲みたい。ベーカリーのプログラム後に飲んだ水は、小学生の夏休みの頃に飲んだキンキンの水以来のうまさでした。すごいなこれ。想像していた以上に意味がわからない。
ようこそ、サウナのテーマパークへ
テルメエルディングのことを知ると、どこか親近感を覚える人もいるのではないでしょうか。そうです、日本にちょっと似ているんです。日本の大型温浴施設はドイツのサウナを参考にしていることが多いんです。代表的なのは、水道橋の「スパ ラクーア」でしょう。ラクーアのサウナにはそれぞれドイツ語の名前がついていますよね。日本の場合はサウナではなく、たくさんの種類のお風呂がありますが、元々は多種多様なサウナだったのかもしれませんね。
24種類のサウナがあるテルメエルディングを訪れてみて、サウナはまだまだ可能性だらけなんだなと感じました。日本の施設だと、サウナは多くても3つか4つくらい。そうなると、やはり手堅いコンセプトになりますよね。でも24種類もあると「良いかわからないけど好きな人はいそう」くらいのノリで、遊びのあるサウナが作れる。アウフグースやプログラムで世界観を豊かにしていける。この発想があると、もっともっと面白いサウナが日本にもできていくんじゃないかなと思いました。
もし未来のサウナを創りたいと考えている若者がいたら、ドイツへ行ってみてほしい。まだ見ぬサウナの奥深さがここにはある。世界は広い!将来どこかのサウナで米が炊かれ、おにぎりが配られるその日まで、わたしもサウナに入り続けよう!
Therme Erdinng
https://www.therme-erding.de/
●料金:2時間37 €〜、1日61€〜ほか
●アクセス:ミュンヘン中心街から車で45分ほど
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「キャンパーをサウナに、サウナーをフィールドに」がテーマ。テントサウナが楽しすぎるので勝手に布教しています。みんなアウトドアでサウナしよう!