熱波好子のトキメキ☆ムシアツ 恋の憂鬱
この物語はフィクションです。
私は熱波好子(ねっぱよしこ)。都内勤務のOL、27歳。好きな飲み物はオロポ(※)、好きな水温は16度、勿論バイブラ(※)あり、最近ハマってることは家でドラマ見ながらタオル回し(※)すること!これが意外と肩甲骨に効いて、ストレッチにもなるの。でも最近タオル回しにも飽きてきちゃって、なんだか素敵な運命の人との出会いとかないかなぁ…クリスマスも近いし…なーんて考えてる。そう、実は私、現在フリーの悲しい独り身女…。このままじゃいけない!と思い立って、最近ちまたで流行りのマッチングサイトなるものに登録してみた。それが「サウナイキタイ」(※)!色んなタイプの人と出逢えて、確実に幸せを見つけられるって、親友の外気浴美(がいきよくみ)がオススメしてくれたんだけど、早速今週末、サウナイキタイでマッチングした2人の男性とデートすることが決まりました!!!さぁ、私もトキメキ☆ムシアツな恋、はじめるぞ~!!!
※オロポ:オロナミンCとポカリスエットの融合ドリンク。
※バイブラ:浴槽で無限に気泡を生み出すブクブクのこと。
※タオル回し:ロウリュではタオルを回して熱風を生み出すことが多い。
※サウナイキタイ:サウナ好きのための日本最大サウナ検索サイト。本来はマッチングアプリではありません!(小説上の架空の設定です。)
1.ロスコ君
ロスコ君「こんにちは、熱波好子さんだよね?」
熱波好子「あっ、はい。ロスコさんですか…?」
ロスコ君「そうです!ごめんね、駒込(※)まで来てもらって。迷わなかった?」
熱波好子「あっ、はい。東口(※)から出たので問題なく…!きょ、今日はよろしくお願いします!」
ロスコ君「ハハハ!好子さん、そんな肩張らないで。リラックスリラックス!今日は僕がリードするから安心して。って…そんな僕もデートとか慣れてる方ではないんだけどね。笑」
な、ロスコさんめちゃめちゃいい人だーーー!!!出逢った瞬間から、癒しのオーラが半端ない!透明で瑞々しい瞳、笑うとしわになる優し気な目尻、羽毛布団のような柔らかな仕草、すべての人間を優しく包み込むような空気感。この人といると何故か世間の喧騒に緊張した心がゆるんで、心地よい眠りにつくような、そんな安心した気持ちになる…!
熱波好子「すごくタイプ…トキメキ☆ムシアツ83%…」
ロスコ君「ん?なんか言った?」
熱波好子「あっいえ…独り言です!それよりロスコさん、頭につけてるその物体はなんですか?」
ロスコ君「あっこれ?これはライオン(※)だよ。」
熱波好子「へぇ~ライオンなんですね!可愛い~」
ロスコ君「大きく口を開けてるだろ?気持ちが高まると、このライオンの口から天然水が流れるんだ。」
熱波好子「え…じゃあ今私と一緒に居て水が出ていないということは、私とのデートが楽しくないってことなのかな…」
ロスコ君「そっ!それは誤解だよ!好子ちゃんといるととても楽しいよ。ほら見て!ライオンの口から水が湧いてきたよ…!」
熱波好子「ほ、ほんとだ!ロスコさん、そんなに私のことを想ってくれているだなんて…私ロスコさんのこと…好きです!」
ロスコ君「ぼっ僕もだっ!熱波好子さん!」
(ライオンの口から大量の天然水がドヴァーっと流れる音)
私たちは流水音に酔いしれながら見つめ合っていた。私はロスコさんに恋をしてしまったのかもしれない。ロスコさんからドバドバと音を立てて流れる水は大きな恋の水たまりをつくた。そして私の心臓がその水をバイブラのごとくドクドクと湧き立てる。そんな2人だけのウォーターセッションに耳を澄まし、「好きになる瞬間の音ってこんな感じなのね」と私は密かに恋の始まりを予感していた。
※駒込:ロスコはJR駒込駅にある。
※東口:ロスコは駒込駅東口から徒歩約30秒。北口や南口に出てしまうと、かなり遠くなってしまう。
※ライオン:ロスコの水風呂は、ライオンの大きな口から水を放出している。かわいい。
2.草加健康センター君
昨日のロスコさんとのデートは最後まで楽しかった。ロスコさんは手料理を振舞ってくれて、私は美味しすぎる生姜焼き定食(※)を平らげた。乙女心も胃袋も掴まれてしまい、私はもうロスコさんのことを好きになってしまったというのに、今日はもう一人の方とデートの約束。正直あまり気が乗らないな…そんなことをうだうだと考えながらお相手の方を待っていると、私の前にラッコ(※)の絵が描かれた可愛らしいバスが止まった。
草加健康センター君「ハーイ!君が、熱波好子ちゃん?俺はMr.草加健康センターさ。」
彼は運転席の窓を開けて、クラクションをワイルドに鳴らしながら私に挨拶した。これが草加健康センター君との初めての出逢いだった。
熱波好子「は、はじめまして!え、というか、バスできたんですか!?」
草加健康センター君「そうだよ。これから灼熱のドライブデートに君を連れてってやるよ。プリーズライドオン!マイベリーホットアーンドホットカー!レッツワイルドホットラブドラーイブッッッ!」
言われるがままに助手席に乗ってしまったけど、すごい…草加健康センター君。一瞬にして人を魅了するロックスターのようなオーラ。みなぎる圧倒的自信からは本物の男気を感じてしまう…。なのにこんなに可愛いラッコのバスに乗っているというギャップ!女がギャップに一番弱いということを見越した上なの!?
草加健康センター君「車の中、ちょっと寒くない?」
熱波好子「いえ、ちょっと熱いくらいです…!だってここもう80度くらいありますよ…!」
草加健康センター君「80度?ヌルイね~俺はもっとギンギンに熱を感じたいんだ!100度越えいくぜ!この灼熱地獄についてこれるか!?イェェェェェイ!!!!」
そう言って草加健康センター君は車内の温度を100度に設定し、Bluetoothからレニーグラヴィッツの『Are you Gonna Go My Way』を大音量で流し始めた。
草加健康センター君「ベリーホット!!!ロックンロォォォル!!!!!フウウウウウウウ!!!!」
熱波好子「熱い!熱すぎる!!!けど何だか最高の気持ちよ、草加健康センター君!!!」
草加健康センター君「この熱さは恋だーー!!!俺はお前が好きだーーーーーーー!!!!」
熱波好子「草加健康センター君っ…私の恋心に火をつけたわね…!!!消火不可能の燃えたぎる恋の炎の中に私を連れていくっていうの!?でも私は、ロスコさんが好きなのに…駄目よ!!!」
草加健康センター君「お前が誰を好きだろうと関係ない、俺はお前が好きだ!ただそれだけだ!!!それ以上でも以下でもないーーーーー!!!!」
か、かっこいい…この吹き上がる大量の汗は、草加健康センター君の熱すぎる愛の告白に私のトキメキ☆ムシアツ測定値が異常をきたしてしまった証…。測定不能レベルで炎のように燃え上がる恋。ロスコさんとは全く違うタイプだけど、どんどん惹かれていってしまう。
その後、ワイルドホットラブドライブデートを終え、草加健康センター君は私をラッコバスで自宅まで送ってくれた。
草加健康センター君「今日はありがとな。後、コレ。お前のために買ったプレゼント。やるよ。じゃあな、身体冷やすなよ。」
熱波好子「え、プレゼント…?ありがとう…!送ってくれてありがとう。またね。」
そう言って草加健康センター君はラッコバスと共に去っていった。丁寧にリボンで包装されたプレゼントを開けると、そこには電動ブロワー(※)が入っていた。ー爆風の熱い愛をあなたに込めてーという手書きのメモを添えて…。「隣にいてやれない時も、俺の愛を熱風で感じられるように」ってこと…?もう、あんなにワイルドに見えてやっぱり根は優しい人なんだから。草加健康センター君のまっすぐで熱い愛が私の胸に突き刺さった。
※生姜焼き定食:ロスコのお食事処で食す生姜焼き定食はかなりレベルが高い。うまい。
※ラッコ:草加健康センターのトレードマーク。かわいい。
※電動ブロワー:草加健康センターの爆風ロウリュはブロワーで強力な風をおこす。かなり熱い。
3.ととのいの神様
私は一体、ロスコさんと草加健康センター君、どっちが好きなの?私を優しく包み込んでくれて、一緒に居て落ち着いて、いつ何時も心安らかなる人生を共に歩んでいけそうなロスコさん。そして、熱くて刺激的で、男らしく私を守ってくれて、噓偽りなき真っ直ぐな愛をぶつけてくれる草加健康センター君。考えれば考える程分からない…。二人からLINEが来てるのに、気持ちがまとまらなくて返事もできていない。私、しっかりしなくちゃ!気分を変えるために、銭湯にでも行ってみようかな。
そう思った私は近所の銭湯に行き、普段は入らないサウナに入ってみた。
銭湯の小さなサ室の中には、主と呼ばれる常連のお婆ちゃんが一人瞑想するように目を閉じながら蒸されていた。そして、私がサ室に入るとその主は私に話しかけてきた。
主「お前さん、見ない顔だね。サウナははじめてかい?」
熱波好子「はっ、はい。実は恋愛のことで悩んでまして…少し気分を変えようと思って。」
主「そうかい、ならととのいの神様に相談してみればよい。」
熱波好子「ととのいの神様?なんですか、それは。」
主「お前さん、水風呂には入るかね?」
熱波好子「いえ、水風呂は冷たくて少し苦手でして…」
主「ととのいの神様は、水風呂におわしますのじゃ。運が良ければ、会えるかもしれんぞ。」
そう私に告げてお婆ちゃんはサ室から出ていった。水風呂におわしますととのいの神様…。よし、水風呂に入って、神様に恋の行方を聞いてみよう。何かヒントが得られるかもしれない。サ室を出て、シャワーで汗を流し、私は水風呂に向かった。
水風呂の浴槽の半径1メートル以内には冷んやりとした空気が漂っており、どこか凛としていて、厳格で、静寂な世界が広がっていた。私は別世界への扉を開くかのように、水の中に片足をゆっくり踏み入れた。
「キーン」
耳の奥で鳴る音とともに、視界は一瞬にしてぐるぐると廻りはじめた。異次元に吸い込まれていくかのように、四方八方から働く引力に引っ張られ、いつの間にか私は星屑が散りばめられた宇宙空間のような世界へとワープしていた。
熱波好子「こ、ここはどこ?」
ととのいの神様「ここは…ととのいの世界じゃ。」
熱波好子「あっあなたが、ととのいの神様なの!?」
ととのいの神様「そうじゃ。お前は今、囚われの身じゃな?」
熱波好子「囚われの身…?私は、いつだって自由に正直に生きてるつもりです…!」
ととのいの神様「ホッホッ…この世界はあらゆる情報や感情で溢れ返っておる。時に人は、そんな渦に埋もれ、常識や他人の目に囚われ、形あるものに頼り、すがり、救いを求めてしまうことがあるのじゃ。事実をひん曲げ、自分の都合のいいように解釈し、正当化してしまう。」
熱波好子「神様…私は、この先どうすればいいのですか?教えてください…!」
ととのいの神様「手足を広げ、感覚を開放してやり、聞こえないものを聞き、見えないものを見るのじゃ。そうすれば、おのずと分かる…。ホッホッホッ…」
目を開けると、私は水風呂の中で、肩まで冷水に浸かっていた。
「と、ととのった…」
頭の中にまださっきあった宇宙が存在しているような、感覚。
ととのいの神様の言葉が、やまびこのように頭の中で反芻する。
そうか。「どっち」にするかなんて「答え」を求めるなんて、馬鹿らしいのかもしれない。
4.冬空の外気浴
熱波好子「お婆ちゃーん、ありがとう。ととのいの神様に出会えたよ。」
主「そうかい、よかったね。湯冷めしないようにね。」
熱波好子「はーい、おやすみなさい!」
銭湯からの帰り道、私はサ室で出会ったお婆ちゃんに挨拶をして、クリスマスが近づく冬の寒空の下を歩いていた。今日の夜空は星が綺麗にでてるから、明日はきっと晴れるだろうな。そんなことを思って少し明日にワクワクしながら、私は2人のことを考えた。2人ともそれぞれに、良いところや魅力的なところがある。私はどっちも大好き、1人になんて選べない。でも、それでいいと思うんだ。「今」がそういう「時」ってだけで、いつかまた、違う誰かや何かに出逢うかもしれない。未来を焦って決めつけるのはもうやめて、今を楽しく生きよう。ととのいの神様、教えてくれてありがとう。
熱波好子「よぉーし、明日もサウナいこーっと!」
「ロマンスの神様」が頭の中に流れる素敵な創作ですね✨
アツアツの恋愛小説ありがトントゥです🙌
腹抱えて笑いましたwww
面白かった!
まだ見ぬロスコさん わたしも早く会って恋に落ちたい♡
最高でした!アニメ化希望!😂
めっちゃいい😆