2019.10.07 登録
[ 長崎県 ]
1回目。
麻の袋を被る。案内役の女性に先導され、背を大きく屈んで低い入り口をくぐる。少し入ったところで、懐中電灯で照らされた場所にうつ伏せになるように指示される。ほとんど倒れ込むように地面に腹ばいになる。地面はとても熱い。懐中電灯は消される。そして火の燃え盛る音が聞こえる。麻袋を通してめらめらと激しく立ち上る炎が見えた。
ここに来るまでの、車1台分の道幅で崖が連続する山道を登るときも緊張したが、今が緊張のピークだ。
これはまるで、収容所に押し込まれたばかりの捕虜のようだ。
麻袋の中で、自分の呼吸の音を聞き少し安心し、そして汗が大量に流れはじめる。
2回目。
今度は自分で寝る場所まで行くように指示される。手前はそれほど熱くない。奥に行くほど熱いのだと教えられる。少し奥まで歩いてみる。1回めは大量の汗が流れたものの、その後の15分間の休憩で、やや寒さを感じていた。そう、それくらいの位置でいいよと、遠くで案内役の声が聞こえた。1回めと同じようにうつ伏せになる。再び自分の呼吸の音を聞き、やがて大量の汗が流れてくる。
そしてしばらくすると、新たな客が入ってきた。
軽く呻きながら地面に横になり、少し苦しそうに息をしている。中年の女性のようだ。すぐ横にいるように聞こえるが、麻袋越しにはどこにいるのかよくわからない。
女性?そういえば案内役からは、男性は入り口から左側、女性は右側だと教えられた。
この周りに女性はいないはずだ。
あるいはドームの中で音は大きく歪むのかもしれない。
ぱちん、ぱちんと焚き火の音が響く。
3回目。
今度はさらに奥の方へ進んだ。前のセッションで、もっと熱くても大丈夫だと感じていた。
麻袋の隙間から場所をしっかりと確認し、奥の壁に近いところまで進む。すると、地面のところどころに、木の枕があることに気がついた。枕があることで、今回は仰向けになって寝てみる。仰向けになったことで窮屈な感じもせず、息もしやすい。明るいドームの天井も見える。
そしてあることに気づく。
音楽が流れている。
さきほどまでは全く気がつかなかった。
イージーリスニングが流れている。
かなり古いが、ポール・モーリアとかパーシー・フェイスのような聞き覚えのあるような音楽ではなく、「やすらぎをあなたに」というようなタイトルのカセットテープに入っている、環境音楽に近い類のメロディーだ。
僕は心からリラックスし、ここがどこかに気づく。ここはもちろん収容所ではないし、宗教施設でもない。
ここでは何も恐れる必要はないのだ。
[ 沖縄県 ]
沖縄マジック。内地の巨大資本といえども沖縄では苦戦を強いられ、逆に、沖縄の有力企業が内地に進出しても成功は難しいという。個人的には、沖縄そばやオリオンビールは沖縄で食べたり飲んだりした方がよりおいしいと思うのも「沖縄マジック」かもしれない。
新都心公園で軽く運動し汗をかき(そもそも少し歩いただけで汗が吹き出してくる)、公園内の食堂でそばを食べ(塩分補給)、サウナで汗を流し、よく冷えた水風呂に入り、オリオンビールを飲む。とてつもなくうまいビールだ。そしてこの一連の流れは、那覇に滞在している間の基本セットとなった。沖縄そばやオリオンと同様に、サウナも沖縄ではさらに魅力を発揮するのではないだろうか。
[ 東京都 ]
サウナ室に二人の若者がやってきた。一人は大柄でがっしりと体格がよく、紺色のサウナパンツを履いている。もう一人は小柄で細めの男だ。大柄な男はサウナの経験が豊富らしく、もう一人の男に対して熱心にサウナの素晴らしさを語り、手順を説明していた。そしてひと通りサウナのレクチャーが落ち着くと、「俺たちはよくここまでやってきたな」という話をはじめた。どうやら自分たちが社会的な成功を収めたという話のようだ。この店に来たという意味も含まれてもいるのだろう。「なあ、またこんなふうにサウナにちょくちょく来ようぜ」。そして再びサウナの話がはじまった。「ここの砂時計は5分と言われている」と大柄な男は言った。「言われている」という部分には、この時計は実際には4分50秒かもしれないし、6分を超えるかもしれない。ひょっとしたら3分ということだってあり得る。重要なのは自分の体で感じることだということを伝えたかったのかもしれない。
誰もいない土曜日の早朝のサウナで、先日ここでの若者たちの会話を思いだし、この砂時計は実際には何分何秒を示すのだろうと気になった。このサウナ室には12分計はないが、僕はたまたま今、腕時計をつけている。そして5つあった砂時計をいっせいにひっくり返し、腕時計のストップウォッチをセットした。やがて2、3分もすると、誰かが入ってくるのではないかという激しい後悔と不安に襲われた。浴室には僕しかいないし、砂時計は全部使えない。だがこの時間に誰かが来ることはなく、まもなく結果が判明した。ひとつの砂時計が4分30秒で終わり、残りの4つはほぼ同時に5分で終わったのだ。そして次にスチームサウナに行き、2つあった砂時計の一つをひっくり返し、腕時計で時間をはかった。5分ちょうどで砂が落ちきったのを確認すると、もう一つの砂時計をはかった。この砂時計は5分30秒だった。
大柄な男の言う通りだった。
今度来るときには、どれが5分ちょうどの砂時計かわからないし、ドライサウナとスチームサウナにある砂時計がシャッフルされている可能性だってある。そう、「5分と言われている」程度に考えておけばよいのだ。
次は何も計らずにサウナに入ろうとしたとき、僕は再び大柄な男の言葉を思い出した。「2回くらいのセットで水風呂に入ったら、いったん下の休憩室に行こう」「サウナに入ると鼻の通りがよくなって、嗅覚が高まるんだ」。食堂から聞こえてくる包丁をきざむ音や、あたたかみのある韓国語の響き、ぐつぐつと煮えるキムチチゲのかおりを思い返しながら。
[ 東京都 ]
サウナに興味を持ってから「真冬の外気浴は寒くないのか?」は謎のひとつだった。かすかに雪も降る、とても寒い冬の夜に北欧へ来たとき(もちろんこの店です)、裸で外気に触れても寒くはなく、むしろ心地よいということを実感した。
北欧の風は(もちろんこの店の風です)、大気から直接吹きつけるような風ではなく、それでいて都会の喧騒からわきあがる熱気やビルの隙間をすり抜けた埃っぽい風でもなく──たまに食堂の中華料理の匂いがしてお腹がなることもあるけれど──繊細でたおやかな風だ。
昨夜も風はやさしくそよぎ、時には意志を持つかのように妖しく纏わり付いたり感じることもあった。ひょっとすると、あれは春の気配だったかなと後でふと思った。
[ 東京都 ]
サウナ室でオロポを飲めるのは、過去、ある有名人がこのサウナで脱水症状になり救急車で運ばれたことで、役所の目が厳しくなったり、週刊誌にも掲載され、事件のイメージを払拭しなければならかったための苦肉の策だったという、「噂話」を聞いた。
サウナでのオロポは、この店の「自由」の象徴のように語られることが多いが、その成り立ちは、必ずしも自由からではなかったということを意味するのではないだろうか。
この話を聞いた時に、ふと立ち食い蕎麦「いわもとQ」の話を思い出した。いわもとQの「Q」は文字ではなく、もともと横に配置してたキャラクターだったが、客がQと読んだため、そのまま店名になったという。
客が店名を変えていくのも良し、サウナでのオロポを「自由」と呼ぶのも良し。客が店をつくっていく。それでも僕は、その当時、経営者たちが試行錯誤を重ねながら店のキャラを考えたり、事件のダメージを払拭すべく様々な工夫を重ねていったことに思いを馳せながら蕎麦をすすり、サウナで汗を流すのだ。
[ 東京都 ]
昨夜ホテルにチェックインしたところ、サウナが故障したとのことで、ただの宿泊客になってしまいました。今朝も復旧せず、修理会社手配中らしいので、行こうと思っている人は事前に確かめた方が良さそうです。
※現在はもう修理されています(3月3日)
[ 東京都 ]
キムチチゲという料理をよく知らないものの、ここのキムチチゲはとても好きだ。そして、このキムチチゲは、メニューにある「豆腐チゲ」や「豚肉入り豆腐チゲ」に比べても、豆腐や豚肉の量が同じか、それ以上入っている気がして満足感が高い。そういう意味ではチゲ系列メニューの上位互換ともいえるが、いつも豆腐や豚肉がたっぷりと入っているかというと必ずしもそうでもないし、このキムチチゲには卵が落とされていないという、明確な差別化もあるようだ。チゲに卵が評価のポイントだという人もいるだろう。僕らは日々、不確かで、多様な価値観のなかで生きているのだ。
[ 宮城県 ]
夜もやや遅い時間に入ったサウナのテレビでは、かた焼きそば特集を放映中。汗もかくが、腹もおおいになる。サウナから水風呂をでるとすぐに食堂へ。メニューの隅にひっそりとあった「五目あんかけ揚げそば」を発見し、ビールとともに注文。ふんわり、サクっとしてうまい。ふだん町中華で食べて感激するかわからないけれど、こんなタイミングで食べられて、とても美味しいのが良いサウナ。
ところでここの施設は、たいていのものは他よりも「ちょっと、プラス」してある(と思われる)のにちょっと感心する。カプセルホテルのチェックアウトは10時ではなく10時半、ロウリュサービスは熱波師さんが「タオルを10回あおぐ」とか。細かいところでは、歯ブラシには歯磨き粉のチューブがついているし(なかなかないですよね?)、剃刀は首振り式だったり。おかげで肩もスムーズに剃ることができました。
日程や人数、部屋数を指定して、空室のあるサウナを検索できます。