肩剃り男

2020.03.14

3回目の訪問

サウナ室に二人の若者がやってきた。一人は大柄でがっしりと体格がよく、紺色のサウナパンツを履いている。もう一人は小柄で細めの男だ。大柄な男はサウナの経験が豊富らしく、もう一人の男に対して熱心にサウナの素晴らしさを語り、手順を説明していた。そしてひと通りサウナのレクチャーが落ち着くと、「俺たちはよくここまでやってきたな」という話をはじめた。どうやら自分たちが社会的な成功を収めたという話のようだ。この店に来たという意味も含まれてもいるのだろう。「なあ、またこんなふうにサウナにちょくちょく来ようぜ」。そして再びサウナの話がはじまった。「ここの砂時計は5分と言われている」と大柄な男は言った。「言われている」という部分には、この時計は実際には4分50秒かもしれないし、6分を超えるかもしれない。ひょっとしたら3分ということだってあり得る。重要なのは自分の体で感じることだということを伝えたかったのかもしれない。

誰もいない土曜日の早朝のサウナで、先日ここでの若者たちの会話を思いだし、この砂時計は実際には何分何秒を示すのだろうと気になった。このサウナ室には12分計はないが、僕はたまたま今、腕時計をつけている。そして5つあった砂時計をいっせいにひっくり返し、腕時計のストップウォッチをセットした。やがて2、3分もすると、誰かが入ってくるのではないかという激しい後悔と不安に襲われた。浴室には僕しかいないし、砂時計は全部使えない。だがこの時間に誰かが来ることはなく、まもなく結果が判明した。ひとつの砂時計が4分30秒で終わり、残りの4つはほぼ同時に5分で終わったのだ。そして次にスチームサウナに行き、2つあった砂時計の一つをひっくり返し、腕時計で時間をはかった。5分ちょうどで砂が落ちきったのを確認すると、もう一つの砂時計をはかった。この砂時計は5分30秒だった。
大柄な男の言う通りだった。
今度来るときには、どれが5分ちょうどの砂時計かわからないし、ドライサウナとスチームサウナにある砂時計がシャッフルされている可能性だってある。そう、「5分と言われている」程度に考えておけばよいのだ。
次は何も計らずにサウナに入ろうとしたとき、僕は再び大柄な男の言葉を思い出した。「2回くらいのセットで水風呂に入ったら、いったん下の休憩室に行こう」「サウナに入ると鼻の通りがよくなって、嗅覚が高まるんだ」。食堂から聞こえてくる包丁をきざむ音や、あたたかみのある韓国語の響き、ぐつぐつと煮えるキムチチゲのかおりを思い返しながら。

0
57

このサ活が気に入ったらトントゥをおくってみよう

トントゥをおくる

トントゥとは?

ログインするといいねや
コメントすることができます

すでに会員の方はこちら

サウナグッズ

アプリでサウナ探しが
もっと便利に!

サウナマップ、営業中サウナの検索など、
アプリ限定の機能が盛りだくさん!