やすらぎの湯 ニュー椿
銭湯 - 東京都 豊島区
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「火葬場の匂いがした」
そんな前情報をニュー椿仲間のMさんから聞いていたとはいえ。
しかし確かにそれは火葬場の匂いだった。
甘やかな香りで、特段不快感はない。というかむしろ、安らいだ気持ちになった。
ニュー椿3階の名物、ロッキーサウナが故障したのが去年の年末頃。
常連のおっちゃんによると、海外からのお客様が桶に入れた水を思いっきりストーブにかけてセルフロウリュを試みたのが故障の原因だったというが、いつも適当なことばかり言うおっちゃんなので本当かどうかは知らない。
そんなロッキーサウナが先日ついに復活した。しかもパワーアップして。
具体的にどうパワーアップしたのかは知らないが、なんかみんなが「すごい」「やばい」と、語彙力を失って虚脱した様子で言う。
何があったんだ、みんな…。
というわけで俺も早速行ってみた。
どうしてもその日の1番サウナに入りたくて、開店10分前に入り口でスタンバイ。
狙い通りサウナコーナーは貸し切り。
体を清め、ドキドキしながらロッキーサウナの扉を開ける。
熱い。熱すぎやしないか。
メーターは100をゆうに超えている。
6分×4
俺は誰もいない新生ロッキーサウナを見渡した。
これと言って見た目に大きな変化はない。サウナストーンが綺麗になっているくらいか。
オートロウリュの回数が増えたような気がする。
しかしこの熱さはどうしたことだ。
粘膜が焼け焦げそうだ。どこの、とは言わないが。
おそらく機械が新しくなったことによる何かが焼ける香り…Mさんで言うところの「火葬場の匂い」を嗅ぎながら目を閉じていると、死んだ祖母の顔がまぶたの裏に浮かんだ。
それからしばらくして、今度はどういうわけか過去の恋人達の顔が次々に去来した。
その中には俺を恋人にした人も、愛人にした人も混ざっていたが、それらもまたすぐに消えていく。
そうだ、それでいい。お前らなどロウリュの蒸気と共に消えていけ。霧散しろ。
つい酒に酔うとそいつらに連絡したりしてしまう俺の弱さもまた消えていけ。
そうか。
この匂いは、サウナという火葬場で己の過去や弱さを焼いている匂いなのかもしれない。
雑念とか執念とか、そういうものを全部断ち切って焼き払ってくれるような、力強くて激しくも、荘厳な、超自然的な、畏怖を覚えるような、そんな熱さだった。
最後に1セットだけハーブサウナで塩揉みして、仕上げ。
全身に令和最強のあまみが浮かび上がる己の裸は、燃え盛る炎の中の不動明王のようだと思った。
火葬場を文学に消化してくれてありがとう笑笑
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