おまき温泉スパガーデン和園
温浴施設 - 富山県 砺波市
温浴施設 - 富山県 砺波市
【黄昏和園は人間を解き放つ】
夕方、思い立って車に乗り込みエンジンをかける。目的地は小牧。和園である。
快晴の北陸道を走り小牧へ続く一本道に下れば、車窓に吹き抜ける風の冷たさに外気浴の期待が膨らんでくる。あえてオーディオを外し、信号待ちでは静かな砺波平野の暮れかかる散居村を愛でる。
電気の消された休憩室と煌々と存在感を放つ自販機が対象的で、館内の静寂を強調していた。食堂は準備中のようだった。
誰もいない渡り廊下をぽつぽつ歩いて階段を降る。静寂の中に微かな足音のみ響く。冷静と情熱が入り混じる瞬間。
浴室は数名の利用でサウナはよく空いていた。事前に体を清めてきたので軽くお湯で流して温泉へ。ここは温泉も適温で沼のように身体が盗まれる。
温泉へ浸かりながらサウナの出入りを確認し、良い頃合いで室内へ。年季の入った木の壁、乾燥したヴィヒタ、ぶ厚い反射板、大振りの砂時計、細長いストーブと落ちないように上手く配置された石たちから溢れ出る熱気が全てのパーツを通じて熱を反射させている。多様な輻射熱は絶妙なパーツの配置も影響しているのだ、と勝手に想像する。熱気とヴィヒタの芳香を感じゆっくりと呼吸したその息でさえ、熱波に変貌し誰かを襲うのだろうか。
98度の熱天国から解放された身体は、真っ先に小牧の山水を求める。汗を清め深い水風呂に身体を任せると声が自然と溢れる。砺波の山々の地層を巡ってたどり着いた山水が止めどなく注がれ、口、毛穴から全て吸収される。触れて重厚、含んで豊潤。時が経つのを忘れるのは仕方がない。
外はまさに黄昏時。堅牢に聳えるダムを囲う小牧の山々、木々の揺れる音、微風に漂う金木犀の香り、少しづつ朱色が交わっていく空に包まれ、多幸感に溺れる。
何度繰り返したかわからないが、気がつけば暗闇にダムの姿は隠れ、白い電灯が等間隔に照らし出した。ふと見上げると星が並んでいる。大きな深呼吸をすると何も考えられなかった。私は解放されたようだった。
男
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