駒の湯
銭湯 - 東京都 世田谷区
銭湯 - 東京都 世田谷区
幼少期の僕は父親が大好きだった。いつもくっ付いて、大好きで大好きで仕方なかった。
ある夏の休日、いつものようにくっ付きに行くと、暑いと拒否された。僕はその日を境に、父親が大好きな自分を封印した。
昭和19年
戦争の最中に生まれた父は演歌が好きで、いつもテープを聞いたり歌ったりと、父が家にいる時はいつも家のどこかで演歌が流れていた。
そんな父が僕が中学のころ、テレビの素人参加型の番組に出演したことがある。そんな番組を休日にチェックしている中学生なんていないだろうと油断していたが、翌日何人かに話しかけられて、お前の父ちゃん歌上手いなと言われたことを覚えている。僕は見なかっので見ておけば良かったと今更ながら後悔している。
そんな父に育てられたので自然と覚えている曲が沢山あり、タイトルやだれが歌っているのかも知らない曲でもメロディを覚えていて、自然と歌えたりもする。
演歌とは僕にとって父親の影のような存在なのだ。
三軒茶屋、駒の湯。
水風呂が冷たくて有名な銭湯は、サ室に流れる演歌も特徴として語られることも多い。
今はすっかり年老いた父。遠く離れて暮らすので、そう滅多に会うこともない。そんな父との思い出を拾い集めに、今日はすこし遠征してみた。
昭和の残り香が色濃くのこる銭湯のサウナは、父に暑いと言われたあの日よりもずっとずっと暑かった。
あの日気持ちを封印した小さな僕を、なんだか今日は癒せた気がする。少しだけど、目からも汗が流れていた。
男
駒の湯の演歌染みますよね。そしてサウナ室内の独特の香り。
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