サウナにとって最高の音楽とは? サウンドデザイナーatkさんに聞いてみた

サウナにとって最高の音楽とは? サウンドデザイナーatkさんに聞いてみた

サウナ室で流れる音楽といえば、ポップスや歌謡曲、オルゴールやピアノの音などが一般的。一番多いのは、きっとTVの音だろう。好みによるけど、サウナという空間に最適かはちょっと疑問に思うことも多い。じゃあ、サウナ室で流れる理想の音ってなんだろう?今回は熊本「湯らっくす」のメディテーションサウナのサウンドデザインを担当したatkさんにサウナと音楽のはなしを聞きました!

メディテーションサウナの瞑想音楽は
人間に共鳴しやすい周波数を使っていた

熊本 湯らっくすのセルフロウリュできるサウナ室

2017年7月にリニューアルした熊本の湯らっくす。ここに誕生した「メディテーションサウナ」は、ちょっと他にないサウナ室だった。その名の通り瞑想がテーマのサウナで、照明、天井高、広さ、どれも絶妙に落ち着く設計になっている。そして、この空間を特別にしている最大の要因が「音楽」だろう。ボワーンとしていて捉えどころがなく、浮遊感があり、自分の内面と向き合うような音、なのに身体感覚は広がっていくような……うまく表現できないけど、とにかく心地よい空間になっていた。

── atkさんが手がけた「湯らっくす」のメディテーションサウナの音楽って、ほかのサウナ施設と全く違いますよね。浮遊感のある音で不思議と心が落ち着くというか

atk メディテーションサウナは「瞑想できるサウナ」という明確なコンセプトがありましたので、そこを着地点にサウンドを構築していきました。前提としてリラックスしやすい音ではあるんですが、いわゆるヒーリング系音楽とは違うアプローチで制作しています。一番わかりやすいポイントとして、メロディがほとんどないですね。

── たしかにボワーンとした音で、ほとんどメロディが無いですね

atk 音楽として成立していることと、サウナにおいてベストかどうかは別ですからね。サウナ室と調和して、空間が広がるような音にしたいなと思い、メロディの様な目立つ要素はなくして、より自分自身と向き合えるサウンドをイメージしました。あとは、チャクラに響く音を使っています。

── チャクラに響く音…!?

atk 人間には7つのチャクラがあって、そこに響く音(周波数)があると言われています。ソルフェジオ周波数と呼ばれる音で、具体的には369hz、417hz、528hz、639hz、741hz、852hz、963hzですね。これらの音はポーーッという単音なのですが、これをベースに音を構築していくことで、人に共鳴するような空間音楽にしています。共振と瞑想は相性が良いですから。

── 想像以上に理論的で驚きました…!他にもポイントってありますか?

atk 音量ですね。セルフロウリュした時、蒸気が立ち上る音が聞こえるように少し小さめに設定しています。ただ、それが一番の理由ではないです。ロウリュの有無に関わらず、空間における音量の設定はかなり重要なポイントで、それによって心地よさに大きな差が生まれます。リラックス目的の場合、あまり大きすぎないほうが良いですね。あとは時間帯によって、トラックの内容を変えています。Morning、Day、Night、MidNightの4テーマで、時間帯にマッチするように変化させています。

── ちなみにメディテーションサウナで流してる音楽って、ここで紹介できたり…?

atk うーむ、紹介したい気持ちはあるんですが…。“場と音の調和”ってすごく繊細で…。極論を言ってしまうと、その場所で聴くことではじめて伝わるんです。どんな環境やデバイスで再生されるかわからないと、きちんと伝わらないと思うので…できればメディテーションサウナで体験してほしいですね。

── なるほど…!ではあくまでイメージとして、ソルフェジオ周波数の紹介と、それを使った音楽の例をYouTubeから貼っておきましょう

ソルフェジオ周波数

ソルフェジオ周波数を用いた音の例

サウナにとって最適な音楽ってなんだろう?

── ほとんどのサウナ施設って、音楽にそこまでこだわってないと思うんです。フィンランドの雰囲気のサウナなのになぜかハワイアンかかってたり、TVの音と館内BGMが一緒に流れてたり…。パブリックな場なので、みんなが100点ということは難しいですが、もう少しデザインされた空間であってほしいというか…

atk サウナ施設はどうしてもハード面のプライオリティが高いので、音楽はどうしても後回しになってしまいますからね。ただ、音楽は居心地、すなわち満足度に関係します。集客や売り上げなど、数値では測りにくいですが、積極的に取り組む価値はあると思います。個人的には自然の音がすごく好きなので、サウナでも水や風など自然の音を聞きたいですね。

── なかには無音のサウナもありますが、他人が出す音が気になったり、妙な緊張感が生まれたりしますよね

atk 全く音がない環境のほうが不自然ですからね。僕は空間を最適化するためにサウンドをリアルタイムでクリエイトする「サウンドファシリテーション」という演出を行なっています。例えば通常音楽を使用しないトークイベントのバックで音楽を流したりするのですが、状況を見ながらトークが停滞していたら少しテンポを上げてみたり、逆に少し早口な話し手さんにはビートを少し遅くすることによって場の雰囲気が変わってきます。その様に「場」と「音」には密接な関係性があって、目的に応じて最適なものが存在すると考えています。

atkさんは電子楽器「TENORI-ON」とラップトップを使って、場の空気を見ながら即興で音をアレンジする。日本で唯一のサウンドファシリテーター

── 場と音の調和はキーワードですね、銭湯サウナとスパ系の音楽が同じだったら絶対違和感ある(笑)

atk そうですね、場の雰囲気、コンセプトや目的次第かなと思います。たとえば男女で入れるサウナや、テントサウナなんかはアップテンポな音楽が向いていると思います。わいわい入る方がきっと満足度は高い。

── すべてのサウナが画一的にリラックス重視である必要はないですもんね

atk スパなどリラックスがテーマで、もし自然音を取り入れるとしたら、スピーカーの位置なんかも重要だと思います。波の音は足元から聞こえて欲しいじゃないですか。

── 波の音が天井から流れるのと足元から流れるのでは、全く印象違いそう

atk そうすることで空間に広がりが出ますね。それと、自然音だけでなく音楽的要素をミックスすると、よりサウナ向きになると思いますね。

サウナは10分くらいでその場を離れるから、自然音だけでなく区切りを感じる音楽のほうが適しているかも。まとめると、一定の法則はあるけど、サウナの特徴やコンセプトによって最適解が変わるから「サウナ室の音楽はこれが鉄板」というのは存在しないと…。まぁそりゃそうですね。

TVの音が聞こえない席、体感温度が上がる音楽「Sauna×Sound」は、可能性だらけ!

── サウナと音の可能性って、ほかにどんなものがあると思いますか?

atk 最近は超スポット的に音を伝えるスピーカーがありますよね。隣の席の人には聞こえている音が、自分には聞こえないというレベルの。これをサウナで応用したら「TVの音が聞こえない席」というのが作れますね。

── うわー最高にアツいですねそれ…!僕はTVいらない派ですが、音さえなければ映像があっても気にならない。両者が共存できるのは素晴らしいですね…!思いつきですけど、体感温度が上がる音とかってあるんでしょうか

atk 理論上は大きい音を浴びると振動と興奮で体感温度はあがるはずなので、ロウリュ時などスポット的に大音量にするのはアリかもしれませんね。それこそクラブに近い環境のサウナ室でロウリュすると、熱く感じるという可能性はあると思います。

── 爆風ロウリュならぬ爆音ロウリュ!水風呂でも何かできそうな気が…。「水風呂に身体が溶けていくようだ…」みたいな感想を持つ人もいるので、人に共振しやすい音、つまり振動を水に加えたら一層気持ちいいとかないですかね

atk うーん…たとえば地球の中心は7.83 Hzという周波数で振動していると言われています。これと同じ周波数の波動を出せる機械というのもありまして。それをライブで使っているアーティストはいますね。地球の波動をあてると水がまろやかになるという説を唱える人もいまして…えーとなんて言えばいいんでしょう…

── 「信じるか信じないかは、あなた次第」的なアレですね…(笑)

atk まぁ、可能性はあると思いますので…(笑) こればっかりは試してみないとわからないですね。

まとめ

── 空間と音楽の調和を考えたサウナ施設は、今後増えていきますかね?

atk 繰り返しになりますが、サウナ室の音を変えても、すぐに集客に結び付くわけではないかもしれません。それでも僕はやる価値があると思っています。アメリカのビアバーの実証実験で人気があるDJとそうでないDJがそれぞれ曲を掛けてどれくらいビールが出るか実験したらしいのですが、人気DJの方がビールが多く出たという結果になったそうです。実験結果の様に音が場に与える影響はとても大きく、より良い空間にするためには非常に大切な要素だと考えています。

── しきじが名店と言われている理由のひとつに「滝の音が聞こえる」を挙げる人もいますよね

atk 僕もととのいと音はめちゃくちゃ関係あると思いますね。個人的には「音」「匂い」「光」という3要素が好みに合う空間だと、居心地が良いと感じます。

── サウナは居心地の良い時間を求めて行く場所ですからね。それなのに、あまり空間デザイン、音楽に焦点が当たらないのはもったいないなと個人的にも思います。そういう意味では、タイムズ スパ・レスタのアウフグースプログラム「アーネトン」はそういう部分を意識されていますよね。照明を落としピアノをBGMにしてロウリュ、アウフグースを行うという。音や光を意識したサウナ、もっと増えてほしいなぁ

atk 湯らっくすのメディテーションサウナの音楽を担当させてもらったのは、人とのつながりがきっかけでした。この記事をきっかけに「ウチのサウナの音楽プロデュースしてほしい!」という声があれば、やってみたいですね。

── アップテンポなサウナ音楽の可能性も知りたいので、男女で入れるサウナなんかからオファーあったら最高ですね!今日はありがとうございました!全国のサウナ施設のみなさま、サウナの音楽をリニューアルする際はatkさんに依頼してみてはいかがでしょうか!?

atk
移動型即興音楽人
(Sound Fasilitator・Sound Designer・Composer・Musician)

Profile(Music)

新潟市出身
日本で音楽家として活動後スペイン・バルセロナに拠点を移す。
2018年拠点を限定せず移動型ライフスタイル&活動をスタート。
空間に最適な音楽をリアルタイムにクリエイトする独自の空間音楽演出“サウンドファシリテーション”でトークイベントからスポーツ競技まで様々なイベントの空間音楽演出を手掛ける。

サウナ内のサウンドデザインをキッカケに施設内サウンドデザインを手掛ける。演奏家として電子楽器TENORI-ONとラップトップを駆使し即興性の高いパフォーマンスを行う。一方で誰でも気軽に音を楽しめるワークショップ “OTO-ASOBI” を主宰する。また作曲家としてアイドル、映像作品、TV、CM、ミュージカルとジャンルレスに楽曲提供を手掛ける。現在は東京、福岡を中心に移動型ライフスタイルを送りながら活動を続ける移動型即興音楽人。

Profile(Sauna)

2017年サウナーの友人からマンガ「サ道」を勧められ読了後その足で福岡ウェルビーに向かいサウナに目覚める。
2017年7月、福岡市で行われているカルチャーイベント「Rethink Fukuoka Project」にてサウナ大使タナカカツキ氏、TABILABO代表久志 尚太郎氏を招きサウナトークイベントを企画開催。
2018年2月より熊本「湯らっくす」のメディテーションサウナ内サウンドデザインを担当。

オフィシャルサイト
http://www.diffusy.com/atkproject

取材協力:タイムズ スパ・レスタ
写真提供:湯らっくす

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