煮ゑ湯

2021.08.19

2回目の訪問

サ室であれ浴室であれどうしてお喋りする奴に限って二人以上でいるのだろうとうるさい二人組を見ながら思った
━━考えるまでもなく、お喋りには相手が必要で、その事実を一瞬でも失念していたのが可笑しく思えたが、それよりも一人で喋り続ける人に会ったことがない幸運を喜ぶべきだろうか

━━なんて考えが頭をよぎった刹那、そういえば一回だけそんなおじさんに遭遇したことを思い出した

それがここ高砂湯での出来事

━━最初はお喋りする若者を一言注意し、ピシャリと黙らせ、自らは黙浴を徹底するカッコいい大人だった…
…だった

数分後、サ室で再会したおじさんは━━サウナが人を変えてしまったのか、それとも元々サウナで人が変わってしまう人だったのか━━と思う変貌ぶり
私の後から入ってきたので「先程はどうも」という気持ちを添え後ろからチラリと一瞥一礼
直後、おじさんは「熱いねぇ」と言いその後も何かブツブツと喋る
私の気持ちが背中越しに伝わったのかと少し驚き、何か言おうかとも思ったが、上段奥に座る私に対して下段入り口側に座るおじさんはちょうど対角に位置して離れているのでさすがに私に向かって何か言っているわけではなさそうだから、相槌でさえ打つ必要はないのだが、それでもなお喋り続けられると必要のない気まずさが生まれてきて私に聞こえよがしに声が段々と大きくなる気さえしてくる
━━そんな私の内心を分かるはずがなく、会話にならない独り言や言葉にならない唸り声は「あ〜」だの「う〜」だの更に続く
声のトーン、ボリュームとも不安定で、かつ喋るテンポも途切れ途切れ、いかにも意味があるような間があり、何を言っているのかは分からないが何かを言っているのは分かる絶妙なソフトタッチで私の脳をくすぐる
━━かと思えば急な沈黙
黙られれば黙られるで、次はいつ喋りだすのか、とか今なんか言ったような気がする、とかおじさんの頭以上に私の頭が忙しなく働き続け始末に負えない
私がある線を越えて集中の領域に踏み入れようとすると━━強引に腕を引き、連れ戻すのではなく、片足を突っ込んだ私の袖を後ろから掴むような━━生かさず殺さずの按配で邪魔される

━━私が一人勝手に悶絶している間に「やっぱあちーな、チクショウ」と吐き捨ておじさんは一人勝手に去っていった
リカバリーの試みも虚しく、踏み荒らされた心は水を掛けようが外気にさらそうがさらに熱を浴びようがもうダメなものはダメで、以後グッダグダのグッダグダに次ぐグッダグダで終了

…そんなことを思い出した今日は冒頭に見た二人組以外概ねマナーのいいお客さんに恵まれ充実した時間を過ごせた

煮ゑ湯さんの高砂湯のサ活写真
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