しぶゆ~

2023.07.30

1回目の訪問

長細い木の板を合わせた壁で仕切られたその施設はまるで一つの街のようだった。私はその街の入り口で門衛に対価を支払い,中へ入ることを許された。中に入ると漂うのは新鮮な薪の香り。この街はいくつかのエリアに分かれていて裕福な人々は個別に用意された極上のサウナで癒されることができる。そのエリアへの立ち入りを許可されていない私は,薪の香りを楽しみながら大浴場へと歩を進めていった。すでにほんのりと香る薪が燃える香り。 その「いぶり臭さ」がなおさら私の故郷での夏の思い出を呼び覚まさせる。

洞窟の中ではまるで 蒸気機関を思わせるような特殊なサウナストーブがごうごうと音を立てて燃えていた。温度は75度と比較的ぬるめの設定であるが,とにかく湿度が高い。石で覆われて密閉された洞窟の中では水が滴り落ちるように水蒸気が充満している。暗い室内では,燃えているサウナストーブだけが不思議な魔力を持ったように唯一の光源となる。燃える炎に目を奪われてると,ストーブの下に水が張ってあることに気付く。すると,この洞窟が水上列車の燃焼室だと錯覚する。この列車によって異世界への移動中だという不思議な錯覚に陥る。時間も忘れて,ただこの水蒸気の空間に身を委ねる。燃える炎の他に,無駄な雑音はない。
もう一つのサウナは訪れる従者によって供給される薪によって,温度は心地よく調整されている。選ばれた住民は,その神聖な器に水をかけることが許されている。私はこれまでたくさんの街で薪を用いたサウナに出会ってきたがここまでの広さの薪のサウナはなかった。薪の炎はじんわり,じんわりと体を温め,発汗を促す。同じ炎という熱源を用いているのに汗のかき方が違うと感じるのはなぜだろうか。私は薪サウナが好きだ。おそらくこれは太古より炎を囲んで食事していた私たち人類のDNAに刻まれているのだと思う。炎で体を温める。この行為によって私の体から出る汗は普通の体験では得られない独特の濃さをもって私の体から染み出てくる。
この街には大小の土管が2つ存在する。そしてその土管には黒部の水が絶えず注がれている。土管がこの街の中央に配置されていることから,街のシンボル的な存在であることは間違いない。ペンキで記された黒部の文字。見せられた私の脳内には火照った体で土管に入ったときのイメージがあふれる。私はかけ湯で汗を流し,梯子を登る。土管に体を沈めるとその深さに驚く。180cmある私が,立って入ることができるのだ。かろうじて呼吸器官だけを水の上に出すことができる。全身を黒部に包まれる。漂う薪の燃える香り。黒部の水。爽やかな黒部の風。私は今,黒部と一体となっている。何も考えなくていい。ただただこの黒部の自然が心地よいのだ。

しぶゆ~さんの湯屋 FUROBAKKA(フロバッカ)のサ活写真
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