せどらない男爵

2021.03.13

1回目の訪問

来たぜ、ウェルビー。
ウィル・ビー・ウェルビー。愛知に行く事が出来ると決まってからと言うもの、ずっとウェルビーである、ウェルビーには行くだろうと、そう思っていたのだ。

ウェルビー。もちろんそれは語呂がいいだけではない。風呂もいい。特に水風呂がいい。ここはちょっとやそっとした水風呂ではないと言う事を俺はまだ知らなかった。

知らない、と言えばだけど、ニュービーサウナーの俺はヴィヒタ有りのサウナをまだ体験したことがなく、そんなにいいのか? なぞと訝しんでおったのだが、そんな疑問など、あのロウリュによる湯気蒸気に包み込まれ、かき消されていくかのように納得をする事が出来た。即ち、森のサウナである。
ヴィヒタの香りは優しく俺を包み込んでくれ、今まで体験したことのないサウナを知る事が出来た。

森のサウナ、いい。
まずこれだけは言わせてもらおう。朦朧とした意識において、認識可能な世界が一段上へとメタり、ガンギマった頭脳では確かな言語など存在せず、こう言いきってしまうしかないのだ。あの密やかなる暗がり、彼らの沈黙、大袈裟すぎぬロウリュの小音、その全てが愛おしい。

浴場からおしゃべりが聞こえ、そいつを隣して己が裡に落ちてゆく森の精霊(フェアリーもといサウナー)たち。まるでビルから見下ろした人々を、蟻の如く感じるように、都市にいながら空という別世界へ逃げ込んでいるあの感じ……都市の喧騒を感じながらも、森にいるのは、俺。
H・D・ソローは森の中で鉄道列車の音を聞きながら、おそらくこれと同じ事を思っていたのだろう(『森の生活 ウォールデン』「音」)。

熱熱と熱されたならば、アイスサウナが待っている。ここはもはや、まさしく別世界と呼んでも過言ではない程の凍えぶり。快感に震え、思わず隙間風にも似た声が溢れる。それは悲鳴にも近いような高揚の呼吸であり、この人口楽園にて我が肉体は脱ぎ捨てられる。そして俺は亡霊のようになりながらも凍え、退室を余儀なくされるのだ。

水風呂、なのだろうか。深く、広々とした水風呂にはチェアが沈んでおり、所謂「冷冷交代浴」を楽しむ事も出来る。亡霊は体温の活力を取り戻そうと必死になり、かの肉体を思い出しつつあった。

亡霊は木霊に抱かれながら昇天とし、また最新の自己へと還ってゆく。木製のチェアに身をもたげた時、凡ゆる煩わしさが消え、恍惚の境地より、緩やかなる我が身体への帰還を体験することができる。するともう、そいつは昨日の俺ではなかった。再生、その瞬間である。

これらのそれは暗がりでの出来事。私は今、それを知ったのであった。

せどらない男爵さんのウェルビー栄のサ活写真
0
32

このサ活が気に入ったらトントゥをおくってみよう

トントゥをおくる

トントゥとは?

ログインするといいねや
コメントすることができます

すでに会員の方はこちら

サウナグッズ

アプリでサウナ探しが
もっと便利に!

サウナマップ、営業中サウナの検索など、
アプリ限定の機能が盛りだくさん!