サウナ&カプセル サンフラワー
カプセルホテル - 東京都 豊島区
カプセルホテル - 東京都 豊島区
私はリアリストな気質で、フィクションにあまり関心がない。小説はほとんど読まないし、ドラマもほぼ観ない。実話が元になっているとか、実在する場所が舞台とか、リアリティのある世界観がないと冷めてしまう。
ファンタジーなんかもってのほかだ。空飛ぶほうき?炎が出る杖?そんな魔法みたいなもの、実在するはずがない。私は自分の眼で見た現実を信じる。でも、だからこそ断言できる。推しの良さは本物だ。
推し。須羽眞白さんの熱波を受けに行く。ワープやテレポーテーションが使えれば便利だけど、実用化されない技術など妄想にすぎない。大阪を飛び出した私を東京へと運ぶのは、サイエンスが生んだテクノロジーだ。
関西で彼女の熱波を受けられるチャンスはそう多くない。そして昨年2024年は、彼女のデビュー以来はじめて、関西での熱波が一度もない年となった。
熱波師を取り巻くシーンは変化が激しい。今日、ブームの定着とともに、全国に多くの熱波師が誕生している。月刊サウナの熱波師名鑑は今年、ついに東西2号に分けての発行となった。地元の常連が熱波師となり、自店のお客を喜ばせることも珍しくない。いまや施設にとって、わざわざ遠方の熱波師を招聘することは、より特別なことであるはずだ。もちろん、招かれる側にとっても遠征はひと苦労だし、スケジュールなど様々な制約や事情もあろう。
それだけに、昨年私は東京出張がたびたび彼女の熱波スケジュールと重なりながら、ことごとく行程が合わず、ついに一度も受けられなかったことは痛恨の極みだ。ならば今年こそ。合わないのなら合わせればいい。私のいいところは単純なところである。
巣鴨の地で、およそ2年ぶりに推しの熱波に相対した。少しずつ丁寧に点てられるロウリュ。実直な個人扇ぎ。穏やかな語り、声。言葉。私が信じる現実がここにある。
前口上のうまい熱波師はときどき見かけるが、扇ぎ始めてからもずっと客を飽きさせず話し続けていられる熱波師は珍しい。あの小柄な体のいったいどこに、そんな体力が隠されているのだろう。
彼女が大切にしている「安心・安全」。それは見逃してしまいそうなほど極めて自然な目配り、気配りによって確保される。大きな結界のようなその優しい護りに、参加者はただ身を任せればいい。
サンフラワーは漢のシェルターだ。日常に擦り切れた戦士たちが、束の間の休息を求めて逃げ込む。その一人ひとりに向き合いながら、彼女は丁寧な風を放っていく。それはまるで回復魔法のように、乾いた戦士たちを瞬く間に潤し、温め、癒し、向日葵のような笑顔を咲かせていった。
白魔術をこの眼で見たんだ。魔法のことは、信じられるかもしれない。
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