湯煙漱石の「蒸されて候」

2025.02.04

1回目の訪問

吹雪舞う奥州の地、水沢に宿を取る。旅路の疲れを癒すべく、吾輩はサウナへ向かった。

この宿、アメニティの充実を見れば、客の安寧を心得たり。化粧水、乳液、シャンプー、リンス、ボディソープ、すべて揃う。されど、吾輩の目的はただ一つ、サウナにて整うことなり。

三陸よりの長き移動、到着の刻すでに夜遅し。制限時間五十分という制約のもと、洗い場にて身を清め、いざサウナ室へ。平日夜の静けさも手伝い、実質貸切の境遇。これぞ旅人の特権たるもの。

さて、勝負は二セット。まず一度目、熱の入りは程よしといえど、芯まで温まる感覚には至らず。よって、さらに十分の蒸しを加う。蒸気に包まれ二十分の後、水風呂に沈み、露天にて外気浴。降りしきる雪、これほど冷え込むなか、外に身を晒す者は吾輩のみなるべし。しかしながら、長き蒸しの恩恵か、不思議と寒さを覚えぬ。足元にタオルを巻き、十分間、ただ静かに雪の降るさまを眺める。

氷のごとき冷気に全身を浄められ、身体より立ちのぼる湯気、ゆらめきながら夜空へと消えゆく。されば魂もまた、ふわふわと浮遊する心地。これをして、至福と呼ばずして何とせん。

次なる一セットは、短期決戦。サウナ十分、水風呂一分、外気浴五分。締めくくりに露天風呂にて息をつき、この夜の整いを全うす。かくして、吾輩の冬のサウナ旅は幕を閉じた。

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