山賊サウナ
温浴施設 - 神奈川県 小田原市
温浴施設 - 神奈川県 小田原市
退勤。
出張の前日には、確実に自律神経を整えておく必要がある。
ひかり号の所要時間も、体調により大きく左右されるからだ。
この車は前車軸上部に燃料タンクがあるため、ほとんどガソリンが空の状態ではステアリングが著しく軽く感じる。
以前所有していたマツダ製のコンバーチブルは、電動パワーステアリングにも関わらず、路面のフィードバックを正確に伝えてくれていた。魔法がかかったみたいに楽しい車だった。
この夏、僕は車を乗り換えた。21年前にシュツットガルトで製造された紺色のクーペの窓を開け放つ。秋だ。
3連休最終日の小田原厚木道路は存外に空いていた。
覆面らしきトヨタ製セダンも見当たらず、自動車専用道路を名乗るには少し荒れすぎた路面に気を遣いながら、回転数2000回転以上で巡航する。 水平対向6気筒エンジンに十分にオイルが回るよう、アクセルを踏み込む。後輪車軸よりも遠くから届くエグゾーストノートが、後頭部にまとわりつく。もう風祭だ。
少し肌寒い外気浴が好きだ。
それ以上に、肌が焼け付くようなアウフグースが好きだ。
サラ・ブライトンのメドレーが、少し仰々しい響きを持ちつつも、目を瞑れば確実に僕は概念になっていた。
アウフグースでどんな音楽を流すか(もしくは何も流さないか)は、受ける側にほとんど選択の余地がない。
だからこそ、目を瞑り、熱波に溶けるグルーヴを感じ取りながら自らの存在が解けていくような体験ができることは稀だ。
箱根連山からの恵みを全身に受け、コールマンのチェアに横たわる。風が身体を通り過ぎていく。
秋だった。
紛れもなく、秋だった。
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら