月見湯
銭湯 - 北海道 札幌市
銭湯 - 北海道 札幌市
勝った。勝ったぞ……夜の冬山道に……。
雪降りしきるニセコ町に、たった今の今帰還する。
ナビ君がシタ道で選択したのは中山峠越えではなく、小樽回りのルート。
急がば回れとは言ったもので、札幌を抜けるまでが長く、と思えば倶知安までも非常に長く、いやいやいや、区間的には短いようでいて、倶知安からが一番の地獄だった。
ぜ~んぶマッちろけで、ペーパードライバーが運転する道ではない。
もはや精も根も尽き果てているが、それでも、記録は残さなければならない。
……お前は、時の権力者に逆らった歴史家かなんかかと。
ともかく、ニコーリフレに一泊、朝に再び須藤熱波師のお熱いのを頂き、ぼへーっとハンターハンターなど読み、二泊三日のサ旅もラスト、いざ月見湯へ。
まず一言、レトロ。
祖父ちゃんと通った銭湯を思い出す、木の板がカギになってる下駄箱に、金属の板がカギになってる脱衣ロッカー。
受付に通じていて、タオルとかシャンプーとか、番台さんとやりとりの出来る小窓、高い天井は女湯側の話し声も筒抜けにする。
備品に年季は入っている。けれどもそれでいて、どこもかしこも汚れなんて一切ない。
タイルの目にカビが生えるとか、赤い水垢がついてるとか、本当にびっくりするほど何もないのだ。驚異的な綺麗さだと思う。
開いて間もない14時台にして、ご高齢の常連さんがかなりいらっしゃる。
所詮旅行での一見に過ぎない俺は、何か彼らに粗相をしでかさないか、キリキリしつつ湯に浸かる。
またお湯が、熱すぎずぬるすぎずでちょうどいい塩梅なんだな。
ラドンスチームサウナにお試しで入ってみて、その後、本番のサ室へ。
これは……古式ゆかしいドライ式の、それも結構強めのヤツだ。
尻に敷くマットは番台で売っている。ないならないで、タオルを敷けばよい、らしい。俺は上段に飛び込みタオルを敷いた。
室内のテレビでは、社会学者が重傷を負った事件を報じている。
その手前では、常連さんたちがぽつりぽつりと言葉を交わしたり、少しうなだれ、黙って熱さを受け流したりしている。
汗を流して、青いタイルの美しい水風呂へ。
なんだろう、絶妙な温度だ。こちらも、冷たすぎずぬるすぎず。
そして露天風呂の休憩スペースへ。
インフィニティチェアが4つ、ここにまでテレビが据わっているとは恐れ入る。
それにしても、シベリアから、冬将軍がやってきたんだなあと肌身に感じる。
外気浴は、水風呂を調整しても3分が限界だった。
ちらつく雪に、急がなくちゃとそわそわ帰る。
使わなければ錆びつくのは、運転も浴場設備も一緒。
入る人がいて、磨く人がいれば、きっと月見湯が錆びつくことはない。
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