東京染井温泉 SAKURA
温浴施設 - 東京都 豊島区
温浴施設 - 東京都 豊島区
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪のふりかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
(中原中也『汚れつちまつた悲しみに』より抜粋)
暖冬と言われるこの冬初めての雪は、SAKURAの露天エリアで外気浴をしている時に降ってきた。
俺は中原中也の詩がとても好きで高校時代から愛読しているが、いつのまにか自分が中也が結核で死んだ時の年齢を超えていることにこの時初めて気が付いたのだった。
俺よりも短い人生の中で、中也はどんな気持ちであの詩を書いたのだろうか。
そんなことを考えていたらふりしきる雪の中で身動きが取れなくなった。
露天風呂の蒸気と、雪と、雲の隙間からうっすらとさす日の光とが反射し合ってまぶしい。
まるで夢の中のようだ、そう思ってぼんやりしていると、ザバァっと湯船から立ち上がった男性がひとり、こちらへ向かって大股に歩いてくる。
パイパンだった。
やっぱり男のパイパンはトレンドなのだ。
俺の股間の陰毛は、粉雪のカケラでキラキラと光っていた。それはあまり美しくない絵面だった。
汚れつちまつた陰毛に
今日も小雪のふりかかる
汚れつちまつた陰毛に
今日も風さへ吹きすぎる
ついそんな罰当たりなことを考えてしまった…。
昨日の池袋かるまるでの件があったばかりでもうパイパンについては考えたくないのだ、俺は。
すっかり冷え切ってしまった俺はサウナ室の1番上へ。タイミングよくオートロウリュ発動。俺の凍りかけた心と陰毛を一気に溶かしてくれる。10分×3
水風呂ではうつ伏せで浮かんでいるおっさんがいて一瞬ギョッとしたが、別に死んでいるわけではなかった。でも積極的に生きたがっているようにも見えなかった。そういう時もあるよな。そういう時こそ中也の詩をよめばよい。
風呂上がりにはイオンウォーターを飲みながら、談話室の座敷に横になり、スマホで中也の詩を検索して読んでみた。
中原中也が生きた時代にサウナはあったのだろうか。無かったような気がする。
もしもサウナがあったなら中也はもっと幸せな詩を書いたかもしれない。破滅的な生き方をして夭折することもなかったかもしれない。
でもそれでは俺のような人間達の心を救う詩は多分書けなかっただろう。
そう思うと複雑な気持ちになった。
中也先生、おしえてください。
僕は陰毛を剃るべきでしょうか。剃らざるべきでしょうか。
…答えは返ってこない。
それとも彼の残した幾多の詩の中にあるのだろうか、その答えが。(たぶん無い)
コメントすることができます
すでに会員の方はこちら