湖畔の宿支笏湖 丸駒温泉旅館
ホテル・旅館 - 北海道 千歳市
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自転車屋の店主は言った。
「札幌のサイクリストの聖地は『手稲山』『銭函』、そして『支笏湖』だ」
私は素直だ。
言われたからには行くしかない。ただ、先に言ってほしかった。支笏湖をチャリで行くとこんなにきついだなんて……
――――――
ずっと上りだ。どこまで上るのかもわからない。いつまで上るのかもわからない。不信感の塊である。ここまでくるとちょっとの下りなんていらない。どうせあとで上るんだから、とすさんでくる。
時間もかかる。丸駒温泉に到着するまでに気力のほとんどを使い果たしている。
――――――
丸駒温泉の看板を見て、ほっと胸をなでおろす。ボロボロだけれど、着いたのだ。私はやり遂げた。しかし、そこからまだ3kmあるらしい。
その3kmを進む間、鹿があらわれる。しかも、こっちに向かって突進してくる。思わず叫ぶ。「てめぇ、鹿!この野郎、鹿!」こちらに余裕などない。話の分かる相手で本当によかった。
――――――
「当店の日帰り入浴は15時までになっております」
この言葉ほど絶望的なものが世の中にあるだろうか?いや、ない。
中年男性が全力で同情をかうための表情を浮かべ、赦しを請う。
「札幌から……自転車で……来たんです」
「1000円になります」
粋な店員さんだ。私は幸せ者だ。
――――――
くたびれた体にサウナが身にしみる。90℃を指しているがいつまでも入っていられそうだ。暗めの照明、手の届く狭さ。静かなクラシック。そして、鼻をくすぐる甘い木のにおい。五感が研ぎ澄まされる。
水風呂はない。だが、ここには秋の空気がある。支笏湖の透明な水で冷え切った大自然の空気だ。
支笏湖をのぞくウッドチェアのある露天。圧倒的なまでのロケーション。トブ。そして、浴場から15m離れた天然の岩場を利用した露天。目をつぶると波の音がどこから聞こえてくるのかわからなくなってくる。もしかしたら、私の体は溶けてしまったのかもしれない。自分が支笏湖の一部になった錯覚に陥る。
――――――
「え?今から自転車で札幌に帰るの?」店員さんは言う。
「はい!熊さんが怖いですね!」精いっぱい元気を装って答える。
本当はとても怖かった。今、このサ活が書けていてよかった。もう自転車で行こうとは思わない。たぶん。
はじめまして!私も昨日、札幌から自転車でマルコマーしてきました!🚴 分かりみがすごくて、めっちゃ笑いながら読ませて頂きました😂笑
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