蒸気とヴェーニクの施術「ウィスキング」を体験!神秘的とすら思える10分間…プロの技術が凄まじかった
こんにちは!Sauna Camp.です!いつも裸ですいません!
ウラジオストクのバーニャ旅レポート、第3回目のテーマは「ウィスキング」。ロシアのバーニャときいて真っ先にイメージする方も多いかもしれません。結論から言うと、心の底から素晴らしい体験でした…旅のハイライトとも言えるウィスキング体験レポート、ぜひお付き合いください。
昔ながらの丸太小屋バーニャ「ダーチャ」を訪問
ロシアのバーニャにきたら、絶対にプロのウィスキングサービスを体験したいと思っていました。ウィスキングとは、ヴェーニク(白樺などの枝葉の束)を使って身体を叩く行為のことで、マッサージや血流促進、殺菌などの効果が期待できると言われています。もちろん自分自身で行うこともできますが、ロシアのバーニャには専門家がおり、オプション料金でプロのウィスキングサービスを楽しむことができます。
今回訪れたのは、ウラジオストク中心街から車で45分ほどに位置する宿泊施設「ダーチャ」のバーニャ。伝統的な丸太造りの建物はロシアでは「イズバ」と呼ばれ、古くから親しまれています。
「ダーチャ」自体は宿泊用コテージが並ぶリゾート施設で、大浴場として時間貸しのバーニャ棟を備えています。ちなみにダーチャとはロシア語で「別荘」という意味。別荘と言っても、ダーチャは庶民が郊外に持つ「質素な小屋と畑」というイメージが強いみたいです。戦後の食糧不足時に、国有地を庶民に格安で売って週末農業を推奨した…という歴史があるのだとか。
スーパーで食事やらお酒やらをたんまり買い込んでチェックイン!
バーニャを楽しみながら飲み食いするスタイル、安上りだし楽しいからおすすめです!
リビングの奥がバーニャ。汗流し用のボーチカ(樽)、水風呂用のボーチカ(樽)、温水シャワーがありました。壁や木材のしつらえは昔ながらの雰囲気ですが、手入れが行き届いていて清潔です。
中はこんな雰囲気。薪は別室からスタッフさんがくべてくれます。どのバーニャにも共通して言えることですが、天井が低い!熱や蒸気を効率よく浴びるなら、やっぱり天井が低い方が合理的ですよね。
ウィスキングマスター(パリーシュク)あらわる
準備をしているうちに、ウィスキングマスターが登場!ロシア語では「パリーシュク」と呼ぶそうです。筋肉ムキムキ!特に背筋がすごい!以下では敬意をもって、マスターと呼ばせていただきます。マスターは話し方や仕草も豪快で、いかにもロシアの漢といった雰囲気。ひょろぽちゃジャパニーズボーイズはちょっとビビり気味。
約10分間の神秘的体験
施術はマスターと一対一で行われます。うつぶせになって待っていると、マスターが入ってきてロウリュを一閃。その蒸気で2束のヴェーニクを温めます。そして、再度ロウリュし、ヴェーニクを宙で八の字に振るうと、全身がふわっと蒸気に包まれます。ヴェーニクの香りと柔らかな熱にうっとりしていると、いよいよ施術開始。
初めはソフトに、撫でるように。しっとり汗をかいたあたりで、脚、腹、胸をザッと擦り付けるように。そして関節や脇にヴェーニクを挟んでぎゅっと押し付けられ、じんわりと暖かく心地よい気持ちに…。全身をくまなくウィスキングしてくれます。足全体をヴェーニクで包み込んでストレッチのように回すのも気持ちよく、気が付くと.深いリラックス状態に…。
オレンジの光が微かに灯るだけの、仄暗い空間。バーニャの扉から差し込む光が、マスターのシルエットだけを映し出し、ヴェーニクを操る様を映し出す。ただただ心地よく、神秘的とさえ思える時間が過ぎていきます。
「かなり熱くなってきた…限界が近いかな…」ぼんやりした頭でそう思った時、おもむろにマスターが部屋から退出。そして、水に浸したヴェーニクを振って冷たいシャワーを…!!ふぉぉおお…き、きもち良い…なんだこれ…。マスター、なんでわかるの…いまこれが欲しかったよマスター…!
およそ10分、フラフラになるほど熱を浴び、限界に近づいたところで施術が終了。マスターにいざなわれ、ボーチカの水をかぶる。水風呂に入り「外気浴が良い」とアドバイスを受け、外へ。
この夜、外はマイナス20℃。ドアノブも凍っていた。夜の森には一切の音がなく、静まり返っている。全身から蒸気をもうもうとあげる自分だけが、やけに饒舌な存在に思えてくる。空気が、呼吸が、信じられないくらいに旨い。ただ息を吸って吐くことが、こんなにも気持ちの良いものだとは……。「バーニャは冬に限る」という言葉を、身体が理解する。
ふと気づくと、マスターが横に立っていた。僕の感動は表情から伝わったのだろう、マスターは満足げな笑顔だった。しばらくの間、一緒に外気浴を楽しんだ。最高な時間なんて言葉では足りない。震えるほどの満足感に浸っていた。
プロのパリーシュクは偉大、敬意しか湧かない
パリーシュクの仕事は過酷だ。この日ぼくらは10分と5分の計2セットを、3人分お願いした。中で横たわっているだけでも熱さで朦朧とするのに、施術者の消耗と浴びる熱量は計り知れない。2束のヴェーニクも、自在に振るうにはかなりの腕力が必要だ。
「多いときは10人以上のときもあったな、あれはまぁまぁキツかったぞ!」と豪快に笑うマスターに敬意しかない。凄すぎる、どんだけ屈強なんだ…。思わず固い握手を交わす。
マスターはイーガルさんという方で、後に有名なプロのパリーシュクだったと判明。ロシアが誇る名門「ボリショイバレエ団」の元プリマバレリーナ、アナスタシア・ボロチコワ氏もイーガルさんの大ファン。彼女がウラジオストクを訪れる際、必ず指名されるんだとか。
過度な表現や極端な物言いはあまり好きではないけど、今回のウィスキングは自分にとって経験したことのない神秘的な体験だった。ウィスキング体験自体が初めてだから、もちろん補正があると思う。でも、厳密な意味での「原体験」に伴う感動は、たった一度しか得るチャンスがない。「ロックギタリストの人生最高地点は、初めてアンプに繋いでガーーッと鳴らした瞬間だろ」って、誰かが言っていた。マーシーだったかな…それがひとつの真理なら、ぼくらは極めて幸運だった。イーガルさんに出会えて本当によかった。マスター、ありがとうございました!!
マスター、お元気ですか。日本にはウィスキングがなくて寂しいです。施設の問題もあって、簡単には実現しないと思いますが、いつか日本のサウナ施設で取り入れられるときは、マスターの力を貸してくださいね…。
次回、バーニャ記事はいったんお休み!
ウラジオストクの珍スポット、ガヴァニホテルの古城サウナを紹介します!
ウィスキング集団しらかばスポーツ
ウラジオストクで体験したウィスキングを日本でも広めるために2019年よりウィスキング集団「しらかばスポーツ」を結成。イベントでのウィスキング体験、温浴施設へのウィスキング導入支援、サウナウィスク販売など、日本でウィスキング文化を広めるための活動を行っています。
ウィスキング集団 しらかばスポーツ
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記事を書いた人
「キャンパーをサウナに、サウナーをフィールドに」がテーマ。テントサウナが楽しすぎるので勝手に布教しています。みんなアウトドアでサウナしよう!