第一回エアととのい選手権レポート
2023年9月24日、全国サウナ物産展の特別企画として「第一回エアととのい選手権」が開催されました。サウナが好きな人なら、この名前を聞いただけでどんな選手権なのか想像できてしまう人も多いと思います。サウナも水風呂もない場所で、ととのう。サウナ好きは、脳・体、そして細胞レベルでととのいの感覚を覚えているので、それが可能なのです。
エアととのい選手権とは、無駄な時間をあえて作ったり休息することの大切さを認識し、限界までリラックスすることを競う大会です。
人間は、知らないこと、新しいこと、わからないことに不安を覚え、否定してしまうものです。どんな業界においても、何かを最初に始める時は「勇気を持って嘲笑される覚悟」が必要だそうです。この記念すべき第一回「エアととのい」の道を切り開くパイオニアたちの勇姿を、審査員としてサウナ大好き芸人マグ万平さんと、ニューウイング支配人吉田さんと一緒に間近で見ることができ、とても光栄に思います。
驚くべきことに、今回なんと100名以上の応募があり、抽選で選ばれた30名が参加することになりました。いざ会場に着いてみると、そこにはサウナに行く時の服や小物を準備して真剣そのもの、静かな闘志を燃やしながら開始を待つ選手のみなさんがいました。サウナ施設でも銭湯でもないのに。この異様な光景に、「なんじゃこりゃ」が半分、「みんな本気だ…!」の緊張感が半分、まさに交感神経と副交感神経が入り混じり、はじめてととのった時のような気持ちにさせられました。
競技時間は1時間。自由に使えるととのい椅子とサウナマットが用意されているので、好きな場所を陣取っていただき、自分の一番心地よいスタイルで、エアととのいに入ってもらいます。
唯一のルールは、サウナと同じで、人の迷惑にならないようにすることだけ。優勝者には金のととのい椅子が贈呈されます。
そして、この選手権に参加してくれたスペシャルゲストが、ドラマ『サ道』でもおなじみの俳優、三宅弘城さん。
絶対にお忙しいはずなのに、1時間デパートの一室でエアととのいをするためだけに駆けつけてくださいました。俳優さんなので、選手にとってはかなり手強いライバルですね。
開会式を終え、いよいよスタートです。正直始めはなにを基準に審査すればいいのかわかりませんでしたが、思い思いにととのっている選手のみなさんを見ていたら、少しずつポイントがつかめてきました。
この方なんかは、スタート前から相当な負荷がかかっていたらしく、メガネがずり落ちたスタイルで1時間沼にハマったようにこの体勢のままととのってらっしゃいました。
一応デパートの中なので裸はナシでしたが、この方はサウナにいることを再現するために、裸柄のシャツで参戦されていました。
サウナ施設にはマンガが置いてあることも多いですが、それを再現してらっしゃいます。『サ道』を1巻から読んでいます。
オロポを持参している選手もちらほら。
アウトドアサウナに来ている設定で、寝っ転がって外気浴している選手もいます。日光が眩しいので、この方たちはしっかり目隠しをしてゴロリンとしてらっしゃいますね。
ととのいの気持ちよさが冷めないようにしっかり温めている選手もいます。外気浴はすぐ冷えますからね。
この選手、見覚えがあると思ったらスカイスパYOKOHAMAの方です。スカイスパの館内着の生地のタオル、そしてヴィヒタ持参でご自分のととのいスタイルを存分に披露されています。
斜め上を行く虚無僧スタイル。ととのっているのか、外からは表情をうかがい知ることができませんが、完全に外の世界をシャットダウンしているのでととのっていることまちがいなしです。
この選手はニューウイングに来ているテイで、ととのっていたらテルマーレのドアが開いて蒸気が漏れてきて思わず目を開けるという、細かすぎて伝わらない演技をされていました。それが伝わってしまうのがここエアととのい選手権なんですが。
終始にこやかにととのうアイアンマン選手。アイアンマンレースは大変過酷で、スイム、バイク、フルマラソンで合計230キロほどを競技します。レース帰りかなと思うほど穏やかにととのいを楽しんでらっしゃいました。
そしてゲストプレイヤーの三宅さんはというと……。
会場にあるものを上手に使った足載せスタイルでスタート。しっかり顔をカバーしてととのいへ一直線。
しばらくすると、体勢を変えます。足に血流が溜まらないように足上げスタイルです。
すると、おもむろに立ち上がり椅子に水をかけ、座部に溜まった水をしっかりと流してから更衣室へ。(サウナーの鏡です)
さらには神田のサウナラボの館内着、サウナハットを脱ぎ捨て、壁と向き合う独特のスタイルでのととのい開始。審査員の我々も目を見張る。
タオルやサウナハットなしの身一つで壁だけを利用し、どれだけ外部をシャットダウンできるかの挑戦のようです。
しばらくすると、今度は神戸サウナ&スパの館内着となにわ健康ランドのハット、そしてお水持参で登場! 水を汲みに行ったりしていると、隣に座っていた方が「三宅さんだ」と気づき(という演技)、「バレちゃったな」の表情をする三宅さん(という演技)。
打ち合わせなし、言葉なしでのこの自然なやりとりに、会場からは笑いが起きていました。
身バレで居づらくなった三宅さん(演技です)、次は北欧の館内着とマグ万平氏のブランド「マグオーネ」のサウナハットで登場。審査員のマグ万平氏に強烈にアピールしています。
さすがに1時間は長くないか?という思いをよそに、早くも40分ほどが経過。ここで吉田支配人によるミストロウリュの噴射が!
目を閉じて動かなかった選手たちの表情が一気に穏やかに。手を挙げる人もいれば、身を乗り出して香りをもらいに行く人も。
いつの間にかアウトドアサウナのポンチョに着替えていた三宅さんは、立って香りを味わっています。
そうこうしているうちに、あっという間に1時間の競技時間が終了。審査員という立場でしたが、みなさんのガッツとおもしろさを終始楽しませていただきました。
そしてもっとすごいと思ったのは、観客のみなさん。だって、室内でエアととのいしている人を、1時間ひたすら横から見ていたんですから。拍手を送りたいです。
さて、我々審査員3人、心に残る選手はたくさんいましたが、金のととのい椅子を渡す1名を選ばなくてはいけません。
厳正なる審査の結果、選ばれたのはこちらの方!
あかねさんです。
この方は、わたしがサウナ室でたまに出会う「この人、ほんとにサウナ好きなんだな」って思う女性のととのい方をしてらっしゃいました。
大変な日々の中でサウナチャンスを狙い続け、やっとつかんだ数時間のサウナタイムだからこそ、貪欲にサウナに身を任せて、足を開こうが、「あの人寝てない? 死んでない?」と周りに心配されようが、おかまいなし。とにかく自分の世界に没入し思いっきりととのっている、そんな女性。女性にこそサウナが必要!とずっと言い続けてきたわたしは、そういう女性とサウナ室で出会うとうれしい気分になりますが、あかねさんは完全にそんな女性像を表現されていました。
惜しくも優勝を逃した選手たちには、タナカカツキさんのサイン入りポーチ、サウナ施設の無料チケット、そしてサウナマットが贈呈されました。
参加してくださった選手の皆さん、それぞれすばらしいととのい姿でした。勇気を持って笑われに来たのかもしれません。でもこの場所では誰もがその勇気とおもしろさを讃えていました。競技後の選手のみなさんは、すべてを出し切り、ととのい散らかしたからか、ものすごく爽快感のある笑顔です。
わたしがサウナを好きになったころ、ドイツでは個性豊かな衣装に身を包み、舞い踊りながらストーリー仕立てのアウフグースをする大会が開かれているらしいと聞き、動画を見て半分「なんじゃこりゃ笑」となりつつも、一方で感銘を受けていたことを思い出しました。その頃、日本ではそんなアウフグースをする人はいなかったからです。でも今は、日本でも衣装とストーリーとともにおこなうアウフグースが盛んになり、世界大会にまで出場するようになりました。
このエアととのい選手権も、最初は「なんじゃこりゃ(笑)」という印象が強いかもしれませんが、わたしはこの先アウフグースのように世界へ羽ばたく選手権になっていくかもと期待しています。その第一回に参加できたことは光栄ですし、選手の皆さんもパイオニアとして参加したことを誇りにしていただきたいと思います。
ちなみに優勝者のあかねさんは、この金のととのい椅子を背負って埼京線に乗って帰られました。さすが王者。
Photo:C STUDIO
岩田リョウコさま こんにちは。 今年の1月からサウナに入り始め肩こりがうーんと改善されて世界がひらけた気がしてる長野県の40代女性です。 エアととのい選手権の記事、読んでるだけで写真を眺めてるだけで和みました。 大人が真剣に、ふざけつつ楽しめること、老若男女それぞれのととのい方でみんなができること。 でもその状況に、嬉しくなっちゃってたのしくなっちゃってワクワクが止まらなくなってしまいそうだからど、さぞかしいい会場は雰囲気だったんだろうなぁと想像しています。 サウナに入ろうと思ったうんと前に、「「好き」を追求する、自分らしい旅の作り方」という本でリョウコさんがフィンランドのサウナ旅を紹介していてそこに映っている姿がとっても心地よさそうで印象に残っていました。 サウナに入るためにフィンランド旅っていうのも何も知らないあの時はすごくインパクトがありました。 サ活を始めるにあたって最初に足を踏み入れる前に、あの本に確かサウナのこと書いてあったなって引っ張り出して読み返しました。 やっぱりいい顔されていて、正直サ室に初めて足を踏み入れる時は怖かったけれどあの表情に背中を押されて踏み込めました^ - ^ 種をまいて頂きありがとうございます! その後「休日ふらりとサウナ旅」を拝見して、また世界が広がり、行ってみたいなぁとこれからの楽しみも広がり、ふむふむそうなのか!と知識も広がりたのしいです〜。 これからもご活躍、楽しみにしてます! いつか会えますように^ - ^