『波立ちぬ』
波立ちぬ いざ生きめやも
晩秋の果て、命強い真夏の海を十条にて感ずる一夜
を過ごす
ここ数日、東京の気温は下がる一方で強く吹く寒風と職務に追われ心底より冷えを強く感じた
日々の内風呂で温もるも良いが、やはり広い風呂で強い泡を受けて体の筋張りを揉み解されることに加え最近凝っている芬蘭(フィンランド)より伝わったサウナなる熱室に浸りたくなる

仕事の帰りに翌日から使う野菜を買い込み、常に持ち歩く手拭い三本と共に十條湯へと赴く
下足箱から木札を抜き、引き戸の取っ手に手を翳す事で自動に動く戸を開く
受付にて新顔の若者にサウナを申し出ると
「今は密ですよ」と教えられるが女湯の利用であると告げると「すみません、大丈夫です」そう訂正をされた
通過儀礼のようなやりとりを済ませ、脱衣場へ
丁度入れ替わりの時刻らしく、洗い場も空いている中で身を清めて強い泡を絶え間なく吹き出す風呂で温まり、いざサウナへ
中には誰の姿も無く今日も91℃を指す温度計、このところ寒くなったからなのか温度が高くなったようだ
しっかりと十分温まり、蒼い水を湛える地下水を掛け流しにした柔らかい水風呂へ
外気温と共によく冷えており、じっくりと身体を冷やして傍の白い椅子に腰を下ろす
この所作を三度繰り返した後、眼を開けて全面水色に塗られた天井を仰ぎ見ると波が立ち白砂の浜辺に打ち付ける夏の景色が見えた
ああ、天井は海だ
大きな湯船の壁は海の底だ
海から遠く離れた高台にあるここに海を私は見たのだ
波立ちぬ いざ生きめやも

そうだ、いつぞや通り掛かった程近くにある中央公園の古めかしい佇まいの文化センター前に縄文時代の貝塚があった事を思い出す
古の頃はこの近くに海が広がっていた、故にここが海の景色となっていても決して不可思議ではない

晩秋の寒気の中に海を感じて、冷めぬ温もりの中を家路に就く

また再び、私は海へ行くだろう
夜更けに真夏の海を感じる為に

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その大河を泳いでみたい、そんな素敵日本語が織りなすさざ波が私をサウナへ誘います。…なんかホントすいません、月どうさんの素敵文脈に感化されたみたいです☆
とめどなく五十六さん サウナに抱いた情熱という熱は幾度水風呂へ入ろうとも冷めやらぬもので 十條湯は行く度に発見があり、色々刺激される場所ございますよ
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