しぶゆ~

2023.05.13

1回目の訪問

スパアルプスにほど近い高屋敷にひっそりとその街は佇んでいる。
 夜のひんやりとした空気に包まれた住宅街で、自然と落ち着き放っているその佇まいから、はるか昔からこの場所に有り続けていることがわかる。高原鉱泉。今日はこの街で疲れを癒すとしよう。
 街には木の門構えがあり、赤い暖簾が夜に映える。入り口には水汲み処があり、地下深く80mから汲み上げた天然水の滴る音が私を歓迎する(この水は水風呂にも使われている)。
 街に踏み入ると鼻腔を刺激するのは線香の香り。扉を開けた瞬間、私は大学生に戻っていた。夏、太陽が落ちた夕暮れに少し冷えた風を浴びながら自転車で近くの銭湯へと通っていた大学生の頃に。暖色の光が照らす、木目調の店内が、懐かしさ溢れる店内がそうさせたのか。私は、この街には初めて訪れた。だが、私はこの街を知っているのだ。かつて通った銭湯の面影のかけらが不思議なことにこの街のそこら中に散らばっているのだ。よく見るとそのかけらにはたくさんの種類があることに気がつく。色々な銭湯や温泉の思い出のかけらがこの街に彩りを添えている。何故か、懐かしい。オトナ帝国の逆襲でひろしが回想し、涙したように。この街の雰囲気は、香りはどこか懐かしいのだ。
 タイル調の浴室は、長細い浴槽を携えて私を歓迎してくれる。シャンプー、ボディーソープ無し。赤と青を押すと注がれるお湯と水は熱く、そして冷たい。頑丈なケロリンの桶に愛着が湧く。
 どうして昔ながらの銭湯のお湯は心地よいのだろう?
 「薪で地下水を沸かしているからここのお湯は柔らかいんです。」脳内におくりびとのワンシーンが蘇る。ここの銭湯のお湯もきっとそうなのだろう。不思議と柔らかく、心地よい。浴槽は広くはないが、不思議と落ち着く。
 サウナ室の構造は、私は初経験であった。対面式。なんと、対面式。地元の常連のおじさんと膝と膝を突き合わせる。これもなんだか悪くない。大学生の頃は入り方も知らなかったサウナ。よくわからずに、知らないおじさんの真似をした。その記憶が自然と、蘇る。石が乗った小さなサウナストーブ。サウナ椅子からキクラゲみたいに生えている茶色い汗の結晶。その全てが、パズルのピースのように組み合わさって懐かしさの絵を浮かび上がらせている。

 12分後、水風呂へ。水風呂には入り口で歓迎してくれたものと同じ地下水が注がれている。青いタイルに唐突に貼りミスマッチな獅子。その獅子の口からクレオパトラの湯のように出る水は冷たく、柔らかい。無骨で狭い水風呂もやはりどこか懐かしい。

 いい銭湯だ、ここは。本当にいい銭湯だ。なんでか無性に懐かしくなる。昔のことを自然と思い出す。なんでか少し、優しくなれる。

しぶゆ~さんの高原鉱泉のサ活写真

  • サウナ温度 100℃
  • 水風呂温度 14℃
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