サウナ金融

2020.01.28

1回目の訪問

【縄文杉になれた一夜】

「自然と同化したい時があるんです。」

理解が追いつかない。突如彼は矢向駅前のマクドナルドでそう呟いた。

モバイルオーダーを楽々と使う。

入店した時に丁度出来上がっていた。テクノロジーを駆使する若者の姿に驚きを隠せない。

これから彼のサウナに同行する。烏龍茶を口に含んだあと、真剣な眼差しで続ける。

「連れサウナはしません。見届けて頂けますか。」

砂利道を抜け本日のサウナ、志楽の湯に舞い降りた。

アソビューアプリで入店。
ロッカー用の100円硬貨が必要と告げられると、丁寧な言葉遣いで両替を申し出る。

「キャッシュレス生活なので……」

こんな現代っ子と縄文天然温泉の時代コントラスト。筆者はその一部始終を見届けた。

密度の高い湯気が暗い浴場を完全支配。

彼は洗体後、湯気を切り裂くようにサウナに向かってゆく。

その際、伝えた一言が印象的だ。

「頃合いまでサウナで瞑想してます。目を開けたら出ます。」

彼は上段、筆者は下段で見届ける。平日の夕方、ガラ空きだからいろいろサウナで話をしたい。

後にその事を伝えると

「ガラ空きなら尚更、無言を楽しむべきです。」

彼は少し顔を上げて、気持ちよさそうに目を瞑っている。

TVもない。ただただ、筆者と彼だけの無言の時間が流れてゆく。

縄文の夜にタイムスリップしたような静かな時間がゆっくりと。

雨で冷えたカラダが徐々に温まり10分経過。彼の目はまだ開かない。

12分。そろそろ限界も感じた時、目は既に見開いていた。

己の滴る汗を確認。サ室を出る。

汗を流して、水風呂。正直あまり得意ではない。

彼の胃の奥から小さく「ゔぁぁ」と発する音が刹那に聞こえた。目は白目、正気か。

「このカラダからヘドロで出ていくような感覚です。出しまくってください。」

確かに呼吸で吐き出した時のこの感覚……

圧倒的恍惚感……圧倒的感謝っ……圧倒的至福っ!!

勇気を持って、初めて彼に言葉を告げる。

「なんなんですか、これ。」

「これからですよ。一旦外に行きます。」

露天エリアへ。丸太と切株に2人で腰を下ろす。
緑が茂り、葉がなびく。カラダには雨。

……ダメだ、言葉が出ない。話したいが、言葉が出ない。自然と同化しているのだ。

「こんな感じです」

縄文の自然から令和のライターに引き戻される。

サウナ金融マンにふとこのような感情が

「話しかけず見届けほしかった」と。[完]

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