サごじょー

2020.11.08

1回目の訪問

夜明け前の上野の空気はヒンヤリとしていて重い。入谷改札側は人っ子一人おらず、カラスも鳴かずにこちらを見ていた。

昭和通りを渡り、ホテルが連なる裏通りに入れば、赤いタイル壁が看板に照らされてぼんやりと浮かんで見えた。
ジョギングで弾んだ息を落ち着かせ、ストレッチをしながら北欧くんにこんにちわ。

エレベーターに乗れば、ほんのりと香るフレグランスに期待が高まる。
エントランスで著名人のサイン色紙を仰ぐと、都内屈指の人気施設である事を実感しつつ、慣れた手つきを装い下駄箱を探した。
見慣れたガウンに初めて袖を通せば、気分はサごちゃんさんである。

外壁とは対照的に浴場は白を基調としたエレガントな雰囲気。
浴室と露天風呂の境は豪快に解放してある為、洗い場の温度は低め。早々に熱めのシャワーを浴びて汗を流す。

四角く切り出された岩風呂の感触が体に優しい。内湯に寄りかかり露天を眺めると、風呂を囲んで寛ぐ男達と、両脇に見える空、長方形のドゴール湯船が一枚の絵画の様に美しい。
受付エントランスに入った時にも感じたが、この施設は奥行きを存分に感じさせる設計になっていて、視覚から贅沢な気分を味わう事をかなり意識している。

サ室はお馴染みのあのサウナだ。温度計は110℃、湿度も適度にあるがハードに感じない。早朝とはいえ利用者もそこそこいる為か、敷きタオルはウェット。
10分も持たず脱出すれば、すぐ隣の水風呂で体を冷やす。外気浴へ向かうの事は必然なので、さっとの水通しから外へ向かう。

タイミング良くデッキチェアに横たわれば、半月が空に浮かぶ。薄雲に見え隠れする月を眺めていると、月が上下に揺れている。パチパチと弾けるような皮膚を、風が撫でてくれると心地良い。

なんという事か、1セットでトトのいが襲ってきた。朝の風は涼しく、あっという間に冷え切ってしまう。すぐさまトゴール浴槽に横たわれば、さっきのトトのいの続きに、本気でよだれを垂らしそうになる。

この時間がずっと続けばと思うが、3時間の制限付きとあらば、ルーティンを繰り返すだけ。

サンデーモーニングを観ながら、ビールとカレーでジョギングの貯金を使い果たす罪悪感から日曜日を始めるのだった。

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