八幡の藪知らずといえば耳にしたことのある人も多かろう。コンクリートに囲まれた街にぽつんと竹藪が広がっている、異質で神秘的な空間だ。上を見やると、藪の合間から木漏れ日が降り注いでいる。
そんな藪知らずの街にあるレインボー。このサウナは、明かりのサウナだ。受付すぐの脱衣所では、サウナを済ませた人達がそれぞれの楽しみ方で、休憩椅子で目をつぶり熱気を冷ましていた。
浴室に入ると奥まで見通せるまっすぐのレイアウトが広がっている。まずは水通し。ブルーの照明が天井から落ちてきて、水風呂の底まで照らしている。肌で感じる水温はそこまで低くないが、ライトの色が少し冷気を加えているようだ。
まずは低温サウナへ。サウナの扉を開くと、暗闇と静寂が部屋を占めていた。サウナの中に照明はなにひとつなく、唯一の光源はテレビに映る焚き火の映像と、扉についた小さなガラス窓から漏れる光だけだ。運が良かったのか、サウナには僕一人だった。サウナストーンに時折水滴が落ちて、「ジュッ」という音が響いた。脈拍と水が弾ける音のみを感じ、目をつぶる。微かに感じるヴィヒタの香りを焚きしめて、時間は過ぎていった。
10分が経ちサウナの扉を開ける。浴室は白の光にあふれている。かけ湯で汗を流して水風呂に肩までつかる。柔らかい水が体を包み、体の中の熱は徐々に冷えていく。天井を見やると、女神像の隣に青の照明が僕を照らしている。滝から流れる水の音が響く。徐々に、徐々に魂が抜けていく。
慎重に浴槽から足を出して水風呂から出た。整い椅子は、低温サウナの前に10個程度並んでいる。腰掛けて息を一つはいた。身体はそこまで冷えていなかったのか、足の先から頭に登るような熱を感じ、また一つ息を吐いた。整いの時間は近い。
低温サウナには、毎時毎にロウリュがある。2セット目とのロウリュのタイミングがちょうど重なりサウナに入ると、1セット目とは異なり多くの先客がいた。端に腰掛けるとすぐに、急にサウナストーンがライトアップされ、ひっくり返したような量の水がサウナストーンにかけられた。瞬間、室温は急激に上がる。これは低温などではない。頭部に身悶えするような熱が届く。ロウリュは計3度。耐えきれなくなった2段目の先客たちは駆け足で出ていき、部屋にはポツンと一人になった。1分程度で僕も出た後、誰もいなくなったサウナに思いを馳せる。次は誰が来てくれるのだろうと考えているだろうか。
サウナを終えて外に出ると、すっかり日は暮れていた。そこかしこの電灯に明かりが灯り、時代は代わっても火は街を照らしている。本八幡の街は7時を越えてなお活気を増しているようだ。レインボーの明かりを背に、一歩ずつ駅へ向かう。足取りは少しだけ軽かった。

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