サウナしきじ
温浴施設 - 静岡県 静岡市
温浴施設 - 静岡県 静岡市
年2回の清水出張には、楽しみが一つある。
静岡駅南口から3.7km、徒歩45分。5度の外気温でも少し汗ばむ速度で歩き、たどり着きたる聖地しきじ。
自動ドアの中に入れば、平日でも9割方埋まったロッカーキーと、暖簾の奥から漏れてくる湿度と焚きしめるような薬草の香り。しきじにきたという実感が湧いた。
フェイスタオルを取り浴場のドアを開けると、一瞬視界が半分になる。湯気が溢れていた。しかも、入り口よりも濃度の濃い薫りとともに。
まずはかけ湯をして水通しからだ。いつもはものの5秒位しかできない水通しも、しきじの水は柔らかく温かい。早歩きで火照った身体が包まれていくようだ。
1セット目はフィンランドサウナから始めよう。ガラス扉を開ければ少し湿り気を残した熱気が出迎えた。先住者たちは一様に、熱に耐えながらぼうと20インチ程度のテレビを眺めていた。入れば見る見るうちに、玉のような汗と両椀にあまみが浮かんだ。水風呂に入る準備は整った。
10分でまたガラス扉を開けて水風呂に入った。包み込まれるような柔らかな水が迎え、深く声が漏れた。ほてったからだからジュウという音が鳴り、目をつむった。
滝に頭を打たれるのも醍醐味かもしれない。まだ熱を残した脳が、滝のしぶきで冷やされていく。
水風呂から出て、整い椅子に座り目をつむる。
立ち上る湯気の湿度、半開きの窓から流れる冷気、2つの要素で中和されていく皮膚の外側を感じる。
滝の音は大きく耳に響いた。結露した天井の雫が、身体にぽつぽつと落ちてくる。
目を開ければ、湯気が壁面のライトを散らし、蠟燭のような色合いが目に映る。
全てがこの「湯気」で構成されているんだなと感じた。しきじは、湯気だ。
2セット目は薫りの元凶の場所、薬草サウナ。フェイスタオルを2枚持ち、頭と鼻に縛り付けて入った。足元は蒸気で痛いほどに熱く、1段目でようやくだった。定期的に発するスチームに身もだえしながら、壁に掛けられた布袋が目に入った。僕のすぐ右側にあった。恐る恐る鼻を出して匂いをかぐと、表現できないような香りが染み出した。そば殻の薫り?中国茶の匂い?答えは見つからない。ただ、この匂いはここでしか味わえない。
10分経過して逃げるように扉を開けた。水風呂に入るまでに、一つ鼻から大きく空気を吸い込むと、薬草の匂いはまだ残っていた。燻された体はまだ熱を持っている。水風呂に使ってからも、整い椅子でもそうだ。ずっとこの匂いは身体に染みついていた。
薬草サウナ、フィンランドサウナをもう1度ずつこなして、しきじを後にした。薬草の香りは、外に出てもまだ残っている。バスに乗っても、晩酌の店に入っても、定宿に戻ってきても、まだ。
歩いた距離 3.7km
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